令和4年1月6日、関東南部を中心に大雪が降り、東京23区をはじめ首都圏の道路交通網はマヒ状態となった。その大きな原因となったのはノーマルタイヤでの走行による立ち往生や事故だったことは言うまでもない。しかし、ほぼ降雪の無い首都圏生活者はスタッドレスタイヤへ換装することに腰を重く感じることは確かでもある。そこで、スタッドレスタイヤのメリットとどれだけ使えるのか、そしてチェックするポイントを探ってみたいと思う。
雪道をノーマルタイヤで走るのは自殺行為だ
クルマを使い全国各地へ取材に向かうという仕事柄、私の場合はスタッドレスタイヤを組んだホイールのセットを用意し、シーズンごとに履き替えることを基本としている。所有する車の中にはスタッドレスタイヤセットを用意していないものもあるが、タイヤサイズに対応するサイルチェーンは準備してあり、雪が降りそうな際にはクルマに積載するようにしている。
それと言うのもノーマルタイヤでの雪道及びアイスバーン走行の危険度の高さを知っていることと、これまでに大手タイヤメーカーのスタッドレスタイヤ発表試乗会などに参加したことがあり、スタッドレスタイヤの実力というものを、身をもって経験しているからである。
先日の降雪時に一緒にいたスタッフが、雪が降り積もる前にノーマルタイヤのまま帰宅しようとしたのでそれを阻止した。少しでも降り始めていたのであれば、どこでどれだけ積もっているのか分からないことと、ミュー(摩擦係数)の低くなった路面は目視では判断することが難しく、スリップすれば人身事故や他車との追突することもある。
もし縁石にタイヤをヒットするだけの軽い事故で済んだとしても、足まわりの損傷により立ち往生ということも容易に想定することができる。それほどのリスクがありながら、雪道をノーマルタイヤで走ろうとするのは自殺行為と言える。
可能なら季節に応じて履き替えることがベター
私はおおよそ12月から4月までの間をスタッドレスタイヤに換装してカーライフを送っている。ウインタースポーツなどを楽しむわけではなく、シーズンを通して一度も雪が降らないこともある。あくまでも“保険”的なものだと考え、スタッドレスタイヤにしているのだ。
スタッドレスタイヤというのは雪やアイスバーンに強いだけでなく、気温が低い路面においてもその効果を発揮するので、ドライ路面だったとしても氷点下になる夜間走行や早朝の山間部での安心感があるというのも大きなメリットだと考えているのだ。
先日の首都圏降雪時も何ら問題なく仕事に行けた上に、家族の送迎なども行った。大晦日から元旦に掛けて雪深い八ヶ岳の山間部にある宿で過ごしたのだが、チェーンを使用せずとも上り下りすることができた。過剰な信頼をしてはいけないとは分かっていながらも、スタッドレスタイヤなら雪道、アイスバーンをパスすることができるのだ。
自身でホイール交換を行えるのであれば、私のようにホイールにタイヤが装着されたセットを用意しておけば、シーズンごとに交換することができる。
別のパターンとしては、タイヤショップやガソリンスタンドでタイヤだけを交換してもらう方法がある。ホイールを購入する費用を考えればタイヤ交換工賃は高いとは感じないだろう(参考までに私がタイヤ交換をお願いしているショップでは、20インチ4本組み換え交換工賃が1万1000円だ)。何にせよ安い買い物ではないのでできるだけ長く使いたいという気持ちもある。
交換時期の目安は「プラットフォームマーク」に注目せよ!
果たしてスタッドレスタイヤは何シーズン使えるだろうか。メーカーが推奨するシーズン(期間)も一つの目安にしか過ぎない。クルマの性能や運転の仕方、保管方法によって大きく異なる。それだけに常日頃からの点検が必要。
スタッドレスタイヤをよく見たことがあるだろうか。ノーマルタイヤ(夏タイヤ)の同じく、スリップサインマークが備わっているほかに「プラットフォームマーク」があるのだ。トレッド面に深い溝を持ち、その溝で雪を掻きわけるというスタッドレスタイヤの構造上、溝の深さに関してもノーマルタイヤ以上にシビアだということ。
なのでプラットフォームマークのサインまで摩耗してしまうとスタッドレスタイヤとしての性能はおしまいなのだ。使用されるコンパウンドも違うため、溝の深さだけでなく、時間や使用条件なども注意しなければならないが、このプラットフォームマークは、目視できる大きなポイントなので、スタッドレスタイヤを使用している方は確認して欲しい。
当たり前のことではあるが、夏場にスタッドレスタイヤを使うことはお薦めできない。以前所有していたクルマで1年間通してスタッドレスタイヤで過ごしたことがあったが、路面温度が60度を超える夏場などは確実に腰砕けの感触となる。フルタイム4WDモデルだったので何とか乗っていたが、それでも“我慢”の範疇だったことを覚えているし、タイヤの摩耗にしても早い。適材適所、これはタイヤ選びでも大切なことなのだ。
[筆者:小松 男/撮影:小松 男・ヨコハマタイヤ]