波佐見焼“サブスク”開始へ 今春目指し準備進む 「サスティナブルな産地」PR

無料モニターで借りる器を選ぶ参加者=波佐見町折敷瀬郷、マルミツ

 焼き物のまち、長崎県東彼波佐見町で、波佐見焼の器を自由にレンタルできるサブスクリプション(定額利用)サービス事業の準備が進んでいる。産地に眠る在庫を活用し「サスティナブル(持続可能)な産地」を発信することで、環境意識の高い若年層や欧米圏にもアピールする狙いだ。今春のサービス開始を目指す。
 サービス名は「Kigae」。「服を着替えるように器を替えよう」という発想から名付けた。月額料金を払うと、一定限度まで自由に食器を借りられる。器の交換所は波佐見町内に設け、実際に町に足を運んで選んでもらう。
 「DJマーク」として活動する同町出身のフリーアナウンサー、松尾匡悟さん(42)が発起人となり、波佐見焼の窯元、商社6社が参加。長崎大の学生も企画に関わり、昨年11月にあった「長崎学生ビジネスプランコンテスト2021」でグランプリに選ばれた。
 松尾さんの実家は波佐見焼の卸商社。会社の倉庫に眠る大量のデッドストック(死在庫)を見て、定額利用で貸し出すアイデアを思い付いた。他にも、新作の企画段階で発生した試作品、色むらなどの欠陥があり、検品で外された「B品」、新型コロナ禍で陶磁器イベントが中止となり発生した余剰在庫なども活用。「捨てない産地」をPRすることで、すでに全国にファンを持つ波佐見焼ブランドの付加価値を高める。同時に焼き物になじみの薄い若い世代を取り込み、すそ野を広げる考えだ。
 1月30日にインスタグラムで募集した希望者を対象に無料モニターを実施。12組約30人が訪れ、借りたい器を持ち帰った。平戸市から夫婦で参加した山野恵利華さん(35)は「いろいろな器を気軽に試せるのがうれしい。モノを持たない今の時代に合った取り組みだと思う」と話した。
 モニターアンケートを参考に価格設定や上限点数などを検討し、サービス開始を目指す。松尾さんは「今後、企業と消費者の双方に求められるサスティナブルの視点を取り入れることで、古里の産業を活性化したい」と話している。


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