稲垣吾郎主演 ミュージカル・コメディ 『恋のすべて』 作・演出 鈴木聡 インタビュー

主催者より、初日の変更の連絡が2月4日午後にありました。公演情報については公式WEBにてご確認ください。 公式WEB:https://koinosubete.com/

大好評の「恋と音楽」シリーズでお馴染みの稲垣吾郎×鈴木聡が贈るミュージカル・コメディ『恋のすべて』が2月11日に開幕する。クオリティの高い音楽、お洒落で小粋なストーリーが好評、もちろん、ダンス、歌、芝居とエンターテイメント要素たっぷりの大人の舞台だ。共演は花乃まりあ、石田ニコル、松田凌、北村岳子、羽場裕一と実力派が集まった。

この舞台の作・演出を手掛ける

鈴木聡さん

のインタビューが実現した。稲垣吾郎との出会いや舞台について、今回の作品について大いに語っていただいた。

――このシリーズの企画の発端などをお願いいたします。

鈴木:佐山雅弘(注1)さんと出会ったのがそもそもの始まりですが、稲垣吾郎くんとの舞台はそれ以前からで…まずPARCOで『謎の下宿人』(2003年)を上演して、それから『魔法の万年筆』(2005年)その次が『ぼっちゃま』(2011年)です。実は吾郎くんとご一緒したのはそれ以前のテレビドラマが最初、NHKのドラマで『さよなら5つのカプチーノ』(1998年)、このドラマで、初めて吾郎くんにセリフを書きました。そういう縁もあって舞台も一緒にやりましょうということに。佐山さんと知り合ったのは2008年、僕がラッパ屋で上演した『裸でスキップ』を北九州芸術劇場でリーデイング公演として地元の俳優さんとやったんです。その時のプロデューサーの紹介で佐山さんと知り合いました。これの最初の打ち合わせ、最初から気が合いまして。ピアニストの腕も素晴らしいですが、何より人柄。本当に楽しいことが好きで、最初からアイディアがどんどん出てきて僕が「こういうの、どうですか?」っていうとすぐにピアノを弾いてくれるっていう打ち合わせを(笑)なんて気が合うんだろう」と思いました。北九州の仕事も楽しくできて、「ぜひ、また一緒にやりたいな」とずっと思っていました。早速、次の吾郎くんの舞台、「ぼっちゃま」をやるときに佐山さんに手伝って欲しいなと思い、隣のアパートの2階に住む貧乏なジャズピアニストという役柄で生ピアノを弾いてもらう役をやってもらい、これで吾郎くんと佐山さんが繋がったんです。また、吾郎くんの舞台をやろうっていうときに、何かコンパクトなミュージカルをやりましょうという話になりました。僕は元々、ミュージカルが好き。自分が音楽を少しやったこともあるので、ラッパ屋の公演でも音楽にはめちゃくちゃこだわって(笑)、選曲は一番自信があるんです、これだけは負けない(笑)それくらい音楽が好きなんです。特にジャズ、映画音楽も好きですね。佐山さんは僕の何十倍も音楽の知識があって人柄も楽しい、それで佐山さんに音楽をお願いしたのが経緯ですね。

――音楽がキーワードですね。

鈴木:そうですね。まさに音楽が繋いだ縁、人間関係、出会いなんです。だから佐山さんに出会っていなければ、このシリーズは生まれていないし、その前に吾郎くんと出会っていなければ、本当にこの企画はなかった。で、何かコンパクトなミュージカルを作りたいと思っていまして…ミュージカルは外国のすばらしいものがたくさんあるけど、割と大掛かりで、描く世界観も大きな物語が多いですが、日本発のオリジナルミュージカルをやりたいという思いはずっとあった。僕が最初に書いたのが木の実ナナさん主演のミュージカル『阿国OKUNI 』ですが、佐山さんとなら一緒にできるなって…この企画になりました。

――今年は『恋のすべて』というタイトル。1930年代のアメリカが舞台ですが、そこに設定した理由をお願いいたします。

鈴木:アメリカのこの時代を舞台にしたのが『魔法の万年筆』、『グレート・ギャツビー』を書いたスコット・フィッツジェラルド(注2)に憧れる小説家役だったんですよ。この小説家は執筆に苦しんでいる、ところが魔法の万年筆を手に入れたら小説がすらすら書けるようになったっていうお話(笑)。その時から吾郎くんとこの時代が合うなと思っていたんです。吾郎くんの繊細な感じは、フィッツジェラルドが書いた「華麗なるギャツビー」の小説が持つ繊細さがなんか合う。1920年代を背景にした小説ですが、あの20年代のアメリカはローリング・トウェンティーズ(注3)っていう時代。日本ではモガという言葉もあるけど、女性がああいうファッションに身を包んだ頃で元気だった…20年代ってアメリカのバブル。みんながスイング・ジャズを踊ったり、そういう時代のファッショナブルで華やかな感じも吾郎くんに似合うと。華やかさと繊細さを併せ持つ時代。30年代は狂乱の20年代が終わってちょっと一息つく、穏やかな感触がある。W・アレンの『ラジオデイズ』(注4)にも描かれた時代。それも含めて”Good Old Days”みたいな、アメリカの、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間に挟まれている束の間の”Good Old Days”そういう感じもまた、(吾郎くんに)合うなと。

――1929年の世界恐慌から大きく変わった、アメリカ自体も大きく変わりましたし、世界も大きく変わって。

鈴木:世界では大変なことが起こっているんですよ。ヨーロッパではナチスが出てきて、アメリカはね、まだちょっと人ごとな感じなんですよね。

――離れていますしね。

鈴木:ええ。この頃はアメリカ映画は名作が生まれていまして『或る夜の出来事』(1934年)、『オズの魔法使い』(1939年)楽しいエンターテイメントな作品が生まれているんですよね。

――共演の方々も皆さん実力がおありで。特に北村岳子さん、羽場裕一さんはベテラン中のベテランですが。

鈴木:北村さんはね、『恋と音楽』シリーズでお馴染み。吾郎くんファンの方々の心を惹きつけてやまない(笑)そういう存在になっていると思うんです。北村さんの登場を楽しみにしているファンもいっぱいいるんじゃないかと。

――楽しみにしています。

鈴木:期待に応えますよ(笑)。歌って踊ってボケもかましてもらって。北村さんは、まさに日本を代表するエンターテイナーだなと思っています。

――北村さんが出てくると空気が変わりますね。

鈴木:頼りにしています(笑)。羽場さんは何度もご一緒させていただいていますので、信頼しています。羽場さんのことは夢の遊民社の頃から見ていますから。舞台俳優としての実力はもちろんですが、同じ小劇場育ちみたいな親近感もあるんですよ。実際に稽古していてもそうですが、やっぱり遊び心いっぱいのトライをしてくれる。僕もちょっと面白がっちゃってね。なんとなく楽しいです。

――あとは若手とは言っても若手ではない、こちらもベテランな3人(笑)

鈴木:花乃さんは初めてですが、本当に可憐なんですよ(笑)。19歳の役でね、ご本人は「ちょっと19歳なんて」って言っていたんですけど、全然、19歳ですね(笑)。宝塚の人はしっかりしているんですよね。技量や芝居の作り方、ものすごい安定感がある。隙がない!隙がないからちょっと崩したくなるんだけど、なかなか崩れない!やってくうちにすごくお茶目なところも見せてくれるようになってきていて、役にピッタリだと思うんです。
石田ニコルさんは、花乃さんとは全然違う色気があってダイナミックなんですよ。スタイルや雰囲気もありますが、生命力みたいなものを感じるんです。今回は羽場さんが演じているクラークは花乃さん演じるコニーの父親ですが、ニコルさんは羽場さんの愛人役、羽場さんをメロメロにする役どころなんです(大笑)、羽場さんは完璧にメロメロ(笑)。彼女が出てくると、華やかで生き生きとした当時のアメリカ女性の逞しい生命力みたいなもの、それがセクシーさに結びついてね。すごく華やかな舞台にしてくれると思います。
松田くんは初めてですが、とてもいい俳優だと思います。演技がストレートで、取り組む姿勢が真っ直ぐなんです。「ミュージカル、ちょっと得意じゃない」みたいなことを…そんなことは全然なくって声もいいし、訴える力があるんです。ソロで歌うところもグッと引き込むようなところがあって、むしろとてもミュージカルに合うと思うんです。これからどんどんミュージカルやればいいと思います。

――松田さんを初めて拝見したのはミュージカル『薄桜鬼』〜斎藤一篇〜で、松田さんはまさに斎藤一役でした。

鈴木:苦手とか言って(笑)全然得意だと思いますね。向いているよ!ご本人は「いやあ、そんなことないっすよ」って(笑)

――時間も押し迫ってきましたので、まだご覧になっていない方へのメッセージを。締めを。

鈴木:吾郎さんのミュージカルでも、一際ロマンチックに。やっぱりこのご時世のこともあるのですが、この2年、皆さん大変な思いを色々していますので、劇場にいるときはそれを忘れてワクワクするような世界に浸って欲しいなという思いがあります。世界観も1930年代のアメリカという現実から離れた世界でお話もすごくロマンチックになります。音楽もとてもいいと思いますよ。亡き佐山さんのあと、音楽監督として青柳さんをお迎えします。一段とミュージカルらしい音楽になっていると思います。バンドのメンバーも素晴らしいです。日本を代表するプレイヤーが集まっている。「恋と音楽」シリーズからのお付き合いなので息もピッタリ。そういう意味では間違いなく楽しんでいただける作品になっていると思います。ミュージカルが苦手な人も、まずはコメディですし、欧米作品とは違う日本人が自然に演じられて自然に見られるミュージカルっていうのを心がけていますので、ミュージカルちょっと苦手っていう方も楽しんでいただけると思う。楽しいものを見たい方、しばし、浮世を忘れて劇場で過ごしたい方は、みんな見てほしいです、平凡な締めですが(笑)、あとは無事に上演できることを祈るばかりです、こればっかりは!

――ありがとうございました、公演を楽しみにしています。

注1: ジャズピアニスト・作曲家。1953年生まれ。国立音楽大学在学中より音楽活動を開始する。『ぼっちゃま』出演をきっかけに2012年・2014年・2016年、オリジナルミュージカル『恋と音楽』シリーズ、2018年・2019年『君の輝く夜に』で作曲と音楽監督をつとめる。ブロードウェイスタイルを踏襲しつつ、日本語による独自性が加わった新しい舞台が評判に。また、ジャズの枠を超えたアーティストとしても活躍、ジャンルを問わず幅広く活動。2018年惜しまれつつ逝去。

注2:アメリカの小説家。1896年〜1940年。1920年代の「失われた世代」の作家の一人。ジャズ・エイジを描いた作品は後々の多くの作家に影響を与えた。生前に発表した長編小説は4作品。20世紀のアメリカ文学を代表する小説家の一人。

注3:アメリカで第一次世界大戦後の経済的繁栄の上に大量消費的な都市文化が開花した1920年代を呼ぶ言葉。大量生産・大量消費の生活様式もこの頃に確立。また、この時代をジャズ・エイジ(Jazz Age)とも言い、狂騒の20年代と呼ばれるアメリカ合衆国の1920年代の文化・世相を指す言葉。F・スコット・フィッツジェラルドの『ジャズ・エイジの物語』(1922年)に由来する。また、マス・メディア時代の幕開けでもある。新興音楽であった当時のジャズは高度な技術を重視する40年代以降のモダン・ジャズとは大きく異なり、ダンス・ホールで男女を踊らせるために楽団が演奏する大衆音楽であった。

注4:1987年公開のアメリカ映画。W・アレン脚本・監督・ナレーション。W・アレン自身を思い起こさせる一人の少年の目線で描かれる。第二次世界大戦後直後のニューヨーク・クイーンズ区のユダヤ系移民の大家族の一人である少年がラジオから流れる名曲の数々、トミー・ドーシー、アーティ・ショー、グレン・ミラーなどの楽曲、当時の文化や市民生活を通じて、想像力豊かで夢見がちな生き方、楽しかったアメリカを描く。

【あらすじ】
ニック・テイラー(稲垣吾郎)は探偵。過去に大切な探偵仲間シドを事件で亡くしている。シドの未亡人に送金しているためいつもお金がない。
クラーク・キャンピオン(羽場裕一)は、手広く事業を行う経営者。コニー(花乃まりあ)という箱入り娘がいるが、最近、テディ・モーリー(松田凌)という若者が娘の周りをうろついていることを苦々しく思っている。ただ、富豪の未亡人でテディの母、カミラ・モーリー(北村岳子)に工場への投資を頼んでいる手前、テディを追い払うことはできない。テディはどうやらコニーにプロポーズをしようとしているらしい。クラークは、カミラからの投資の契約が終了するまで、コニーをテディから遠ざけるという任務をニックに依頼する。「娘を君との恋に落としてくれ」。破格の依頼料に、仕事を引き受けるニック。さらにクラークは、自分の愛人ザラ・エイミス(石田ニコル)を使ってテディを誘惑しようとする。一緒に時を過ごすうち、ニックとコニーの間には「恋のような感じ」が漂いはじめるのだが・・・。

概要
モボ・モガ プロデュース ミュージカル・コメディ 『恋のすべて』
出演:稲垣吾郎 花乃まりあ 石田ニコル 松田凌 北村岳子 羽場裕一
演奏:pf.青柳誠 vln.高橋香織 b.バカボン鈴木 g.三好“3吉”功郎 perc.仙波清彦
作・演出:鈴木聡
作曲・音楽監督:青柳誠
日程・会場:2022年2月11日(金・祝)~2月27日(日) 東京建物Brillia HALL
※公演日程が一部変更。2月11日、12日中止。13日以降の公演については後日公式HPにて発表。
企画・製作 ㈱モボ・モガ

公式ホームページ:https://koinosubete.com/

取材・文:高浩美

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