韓国俳優イ・ジュンギが出演作を選ぶ際の基準は、“僕が持つ長所を本当に必要とする作品なのか”

主演最新作の韓国ドラマ「悪の花」の演技で俳優人生の集大成とも評価されたイ・ジュンギ。彼は、自分の言葉を、自分の考えを持つ俳優だ。どんな作品でも、どんな状況でも、どんな質問でも、明確な自分の考えをもとに言葉を発してくる。インタビューでも、ファンミーティングのようなファンとの交流の場でも、ハッとさせられるような言葉を残し、さらに彼を知りたくなるような魔法をかけていく。これまでのジュンギが発した言葉で、印象的だったもの、イ・ジュンギそのものを表したような言葉を振り返ってみた。


作品をより輝かせるために、深く考え、話し合う

■作品選びの基準

「(作品を選ぶ際の基準は)僕がその作品のなかで、どのくらい使いみちがあるか、です。僕が持つ長所を本当に必要とする作品なのかが重要です。

単に時代劇だから、この時代を描くからといって、面白さを感じるわけではありません。僕がその作品のなかで、本当に役立つ俳優なのか。自分のキャラクターによって、その作品がさらに面白くなって、質的にも高まるか。そういう部分をじっくり考えます。

僕が苦手な分野もあるじゃないですか。ゴツゴツしたイメージのものとか。苦手なものにまで、時代劇なんだからやってみなくちゃと手を出したら、空回りしてしまうと思います」

(2014年「朝鮮ガンマン」でのインタビュー)

――イ・ジュンギという俳優が、長くトップの座に君臨してきた理由がこの言葉にある。自身のエゴでやりたいことを主張するのではなく、求められることに真摯に応えることにこそ価値を見出しているのだから。

「朝鮮ガンマン」メイキング写真 Licensed by KBS Media Ltd. ©2014 KBS. All rights reserved

■時代劇について

「時代劇で大切なことは、守ることと、冒険することです。基本的な時代考証を無視しては、その時代を、その時代に生きた人物のリアルを伝えることができません。そのため、当時の事件や世相などを監督といっしょに資料を読んで討論したり、確認し合う作業は必須です。一方で、完全に史実のとおりに描くことになれば、ものすこく退屈でもどかしいものになってしまう。

だから、史実を土台に、想像力を加味し、劇的な面白さ、緊張感、感動を組み込んでいくにはどうしたらいいか、綿密に話し合っていきます。やりすぎると視聴者に違和感を抱かせるので、いつも悩みながら作っていますね」

(2014年「朝鮮ガンマン」でのインタビュー)

――時代劇をただ得意だから、見せ場が多いから、演じているわけでなく、時代劇の見せるべき真意を理解しているからこそ、その魅力を熟知しているからこそ、守ることも、冒険することも大切にしている。そういう考え方にシビれる!

■時代劇と現代劇との違い

「時代劇の現場から現代劇の現場に戻ったとき、もっとも違いを感じるのは、声量の差、話し方ですね。時代劇では、大きくはっきりした声量、ゆったりした口調で話すのが基本なので。長く時代劇を演じていると、そういった口調が癖になってしまいます。でも、僕も現代人なので、演じているうちにすぐに戻りますが(笑)。

アクションも時代劇の韓服だと、身体のラインがきれいに映り、動きも大きく見えるカッコよさがあります。一方で、現代物のアクションは、様々な制約があるなかで、短いテンポで相手を制圧するダイナミックさがあって、時代劇とはまた違った魅力がありますね。よりスピード感で見せていくイメージでしょうか」

(2017年「クリミナル・マインド:KOREA」でのインタビューより)

――イ・ジュンギの武器でもある「アクション」を、時代劇、現代劇それぞれの特色を表現した言葉。声もまた、彼の魅力のひとつだが、時代劇での大きな声量、ゆったりと堂々とした話し方をおさえているからこそ、現代ものでも緩急きかせた様々な声色が出せるのだろう。


TEXT:高橋尚子(編集・ライター)

Edited:野田智代(編集者、「韓流自分史」代表)

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