ハマる! 北欧ミステリー沼!!『特捜部Q 知りすぎたマルコ』は新キャストも違和感なしの人気サスペンス最新作

『特捜部Q 知りすぎたマルコ』©2021 Nordisk Film Production A/S. All Rights Reserved.

『特捜部Q』シリーズ最新作

北欧発の大人気ミステリー小説「特捜部Q」シリーズは映画化も大成功。ニコライ・リー・コス主演の『特捜部Q 檻の中の女』(2013年)から、順調に映画シリーズが製作されてきた。

そんな『特捜部Q』映画シリーズの最新作にして第5作目『特捜部Q 知りすぎたマルコ』では、お馴染みのキャストとスタッフを一新。休職明けの主人公カールが、ある少年との出会いをきっかけに巨大な陰謀の影を追いかける。

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北欧ミステリー好きなら必見の『Q』シリーズ

第1作目『特捜部Q 檻の中の女』(2013年)はニコライ・リー・コス演じる元殺人課の刑事カールと、新設された<特捜部Q>での相棒となるアサド(ファレス・ファレス)との出会いから描かれる、ぜひ押さえておきたいシリーズ入門作品。コールドケース専門のQ課が、数年前に起こった女性議員失踪事件を追う中で様々な妨害を受けながら、複雑に入り組んだ謎に挑む姿を描く。

続く『特捜部Q キジ殺し』(2014年)は同部署に秘書ローセが加わり、数十年前にある双子の身に起こった性的暴行/殺人事件と、裕福な家庭の子どもが集まる寄宿学校出身者たちが絡む、ドス黒い“時計じかけのオレンジ”的悪意に満ちた物語。3作目は砂浜に流れ着いたメッセージボトルをきっかけに、親からの虐待と歪んだ信仰の末路を描く『特捜部Q Pからのメッセージ』(2016年)。黒澤明『天国と地獄』(1963年)のあるシーンのアイデアを拝借していたり、古巣の殺人課が総出でカールたちをサポートする展開に燃える。

そして第4作『特捜部Q カルテ番号64』(2018年)はシリーズ中もっともスリラー要素が強く、『セブン』(1995年)などを彷彿させる衝撃展開で幕を開ける。人種分断や優生思想の愚かさ、罪のない少女たちが搾取される描写は胸糞だが、実話に基づいているというからますます衝撃的だ。なお同作には『メン&チキン』(2015年)や『ライダーズ・オブ・ジャスティス』(2022年1月21日より公開中)などでマッツ・ミケルセンと共に度々ニコライと共演してきたニコラス・ブロも登場する。

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キャスト一新&スケールアップ!『知りすぎたマルコ』

最新作『特捜部Q 知りすぎたマルコ』は、過去作と同じくデンマーク・コペンハーゲン警察の「Q課」で働くカール(ウルリク・トムセン)とアサド(ザキ・ユーセフ)、ローセ(ソフィ・トルプ)が主要人物である点は変わりない。キャスト変更によって手触りは大きく変わっているものの、新たにカールを演じるトムセンは『アダムズ・アップル』(2005年)や『遊星からの物体X ファーストコンタクト』(2011年)などグローバルに活躍するベテランで、傷だらけの枯れまくった中年刑事としての説得力は抜群だ。

『特捜部Q 知りすぎたマルコ』©2021 Nordisk Film Production A/S. All Rights Reserved.

同じ小説シリーズ原作なので、カールの手の震えや現在は禁煙中らしいこと、そして相変わらず不味そうなコーヒーなどお馴染みの設定によって、新キャストの違和感は早々に払拭される。映像は全体的にスタイリッシュになったが、刑事モノとしてリアルになった部分も多々あり、過去4作から引き継いだ部分とのバランスはかなり良いと言えるだろう。ちなみにQ課は新メンバーのゴードンが加わり、オフィスが地下じゃなくなったあたりも新鮮。『檻の中の女』の冒頭で撃たれ半身不随となった元同僚、ハーディの登場もファンには嬉しいところだ。

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今回、目の前で追跡中の容疑者に自殺されたカールは休職を命じられるも、早々に現場復帰。新たな捜査は、どこからか逃げてきたらしいロマの少年マルコが補導されるところから始まるが、小説版ではカールたちと邂逅するまでかなり引っ張っていたので、映画版の展開はサクサクした印象だ。かつて小児性愛者のレッテルを貼られたまま失踪した公務員スタークの捜査は早々に打ち切られていたが、何かを隠しているのか一切喋ろうとしないマルコが彼のパスポートを持っていたことから、捜査は予期せぬ方向へ向かい始める。

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人気キャラの活躍や人物描写の深堀り、サスペンス映画らしいスリリングかつスピーディーな展開や繊細な表情演技などなど、読んでから観ても観てから読んでも楽しめる『特捜部Q 知りすぎたマルコ』。まず本作を観てから過去シリーズを遡るのも全然アリなので、北欧ミステリーの傑作を存分に楽しんでいただきたい。

『特捜部Q 知りすぎたマルコ』は2022年1月7日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、2月24日(木)よりシネ・リーブル梅田で開催「未体験ゾーンの映画たち 2022」にて上映

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