課題解決へ活動共有 高校生マイプロジェクトアワード沖縄県サミット

 中高校生が自らの課題解決に向けて取り組んだことについて発表し、周囲のサポーターも互いに学び合おうと1月30日、全国高校生マイプロジェクトアワード2021沖縄県サミット(沖縄マイプロジェクト事務局主催、OKINAWA SDGsプロジェクト=OSP共催、琉球新報社メディアパートナー)がオンライン開催された。生徒らは取り組んだプロジェクトを発表し、さらに発展させるためのコメントを大人のサポーターからもらった。発表の一部を紹介する。
 発表は高校生36、中学生1の計37チーム。2年前に高校生として発表し、今回はサポーターを務めた大学生の山田果凜さんは「難しいと言われても貧困問題を解決したいと活動を続けて起業した。声を上げれば聞いてくれる人はいて、道は開ける」とエールを送った。
 高校生たちは「可能性を信じてくれていると感じて、うれしい」などと喜んだ。
 出場チームのうち2チームは全国高校生マイプロジェクトアワードに選出されるほか、希望チームは今後OSPパートナー企業とも連携する。
 3月には社会課題解決に取り組む学生や起業家の交流イベント「リープデイ」での発表もあり、活動の場をさらに広げる。
(黒田華、狩俣悠喜)
北谷 軽石活用、鉄資源に
 北谷高校の上間友愛さんらは、県内各地の海岸に漂着する軽石に鉄分が含まれていることに着目して有効活用を考えた。
 軽石は「ネオジム磁石」にくっつけることができた。軽石をすりつぶして磁石に付いた鉄分を計ると、軽石1グラムに約40ミリグラムあった。また塩分が問題視されるが、軽石と水でコマツナの発芽実験をすると発芽率に差は見られなかった。
 「磁石で回収を効率化でき、鉄資源として有効利用できる」と提案した。「仲間と話し合うのも楽しかった。今後は地域企業と連携したい」と述べた。
 サポーターは「聞きやすく分かりやすかった。発表スキルが高い。取り組み中の時間の豊かさが伝わる」と広がりを期待した。
普天間 基地や戦争 意識差調査
 普天間高校1年の山内遥花さんらは、県民には身近な米軍基地や戦争について県外の人は関心が薄いと考え、学級内と大分県の2高校で意識や知識の差を調べた。
 学級内には沖縄戦の体験者から話を聞いたことがある生徒が8割いた。大分県の生徒は大分県内での米軍の訓練を「あまり意識したことがない」など答えた。
 山内さんたちは「本土は戦争や基地に触れる機会が少なく認識に違いがある」「違いをなくすために発信を続ける」などと発表した。
 サポーターは「言葉にできない思いもあるだろう。言語化して、どう伝えるかも考えてみて」などと助言した。
美里・読谷 古着の壁でコザ活性化
 美里高校2年の友利いおんさんと読谷高校2年の屋良ゆりえさんは、古着を使ったおしゃれな壁を作る計画を進めている。写真がより良く写る「インスタ映え」スポットにすることでコザの街を活性化する目的。
 壁作りに際し問題が生じた。服の生産は水質汚濁を引き起こすなど環境に負荷を掛ける。また服の購入は費用がかかる。これらの問題の解決のために古着を寄付してもらうことにした。
 islandworksの野原真麻社長は「関心がある人を集めることができたら、この企画は若者のサブカルチャーになるかもしれない」とし、企画が秘める可能性に期待を示した。
N・読谷・豊見城 気持ち整理ノート開発
 N高、読谷高、豊見城高でつくる「My feelings」は自分の気持ちを他人に伝える前に、気持ちを整理するノートを開発している。N高1年の津波夢乃さんが、過去にうまく自分の気持ちを説明できなかった体験がきっかけ。
 ノートには感情を数直線で表すコーナーや、今の気持ちを書き出すための質問が記されている。自分の気持ちを文字化できる仕組みになっている。
 okicom(オキコム、宜野湾市)の小渡晋治常務は「このノートを活用することで、気持ちがうまく伝えられない人たちが暮らしやすい社会づくりにつながる」と話した。
那覇国際 子どもの貧困 カフェで教育
 那覇国際高校2年の山城優芽さんらは、子どもの貧困問題の解決のために、子ども食堂「チャイルドカフェテリア」の企画を発表した。
 子どもの貧困を生んでいる要因に「十分な教育を受けられていない」ことを挙げた。子どもたちに学校に通うことの大切さなどは高校生でも伝えられると考え、子どもたちに学習支援と居場所、飲食を提供する子ども食堂を考えた。
 阪急交通社国際プログラム開発担当リーダーの工藤弘樹さんは「制服が購入できず高校進学を諦める人もいる。支援をする対象が小さい子だけでいいのかを考えると、もっといいものができる」と話した。
八重山 自分の偏見に向き合う
 八重山高校2年の宮城知里さんらは、同性カップルを見て感じたことを基に「知ることから、自分の中の偏見に向き合おう」と考え始めた。学校内で男女の固定概念をなくすことを目指し、制服の自由選択制へ動き出した。
 全校アンケートを取ると9割以上がLGBTに偏見はないとし、制服自由選択に賛同した。実際には申請に戸惑う人がおり、実現に向けて署名活動を始めると反対も出た。この差異を「ジェンダー平等が人ごとで重要視されていない。署名活動を続けて生徒総会に提出したい」とした。
 サポーターらは「小さな失敗を修正し挑戦を繰り返す循環が素晴らしい」「制服の決定権者は誰かを考えては」などと助言した。
 

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