「特撮美術の巨匠」井口さんが初画集 怪獣やメカ「想像力の限りに描いた」300点

未公開デザインを収めた画集「幻夢妖獣」を手にする井口昭彦さん=川崎市麻生区

 「ゴジラ」シリーズの初代メカゴジラや「ウルトラ」シリーズのメカデザインを手掛けた特撮美術デザイナー、井口昭彦さん(78)=川崎市麻生区=が、未公開デザインを収録した初の画集「幻夢妖獣(げんむようじゅう)」を出版した。物語設定などの制約に縛られず、数年前から「想像力の限りに描いた」怪獣やメカ約300点を収め「作品を作る際のきっかけになれば」と話している。

 井口さんは「ウルトラマン」(1966~67年)で特撮美術スタッフとなり、現場でミニチュアを制作。「マイティジャック」(68年)でデザイナーに昇格し、「帰ってきたウルトラマン」(71~72年)でマットアロー1、2号や怪獣をデザインした。

 「日本沈没」(73年)、テレビシリーズの「西遊記」(78~79年)にも参加し、「特撮美術の巨匠」と呼ばれる。中でも「ゴジラ対メカゴジラ」(74年)に登場した地球侵略兵器「メカゴジラ」は、斬新なフォームから国内外で多くのファンを得た。

 完成した作品をテレビで見る余裕がないほどの忙しさだったが、近年は「気が向いたら」筆を取り、イメージを描き続ける。過去にデザインした怪獣は脚本や設定に基づいて描いた。今回は「縛りがない中で描く面白さ、苦しさを味わった」と目を輝かせる。

 画集には四つの顔と1本足を持つ怪獣、緑の衣装をまとう美女など、異形特有の怖さがありつつ、ユーモラスなデザインが集まった。「幻夢妖獣」の題通り、不思議な夢を見たような読後感がある一冊となった。

 出版の中心を担った玩具メーカー「マーミット」(東京都)社長の赤松和光さん(59)は「目が回るようなインパクトがある。宇宙人もモンスターも愛嬌(あいきょう)があり、不思議さが魅力だと思う。自由度が高く、映画のデザインのアイデアの元になるのではないか」と期待を込める。

 井口さんは「映像関係の仕事をする人たちに、造形や映画を作る上で、何かのきっかけになってくれれば本望です」と笑顔を見せた。

 A4判85ページで、2200円。問い合わせは、芳賀書店電話03(3263)1956。

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