迫る介護の危機 独居高齢者が増加、支え手は減少 超高齢化の島・渡名喜(上)<人口減社会を生きる>1

 伝統的な赤瓦家屋が密集し、風光明媚(めいび)でのどかな雰囲気が漂う渡名喜島。この一島一村の小規模離島に暮らすのは346人(2020年国勢調査確定値)。県内41市町村で最も人口が少ない自治体だ。
 沖縄が日本復帰する2年前の1970年には1004人の住民がいた。半世紀を経て65.5%(658人)が島から消えた形だ。
 「今後、介護需要が逼迫(ひっぱく)するのは目に見えている」。村社会福祉協議会の比嘉敏久事務局長は危機感を募らせている。
 渡名喜村は県内で最も高齢化が進む「超高齢化の島」でもある。人口346人のうち41.3%の143人が65歳以上だ。75歳以上のお年寄りが占める割合は25.6%(19年10月時点の住民基本台帳)となり、村民の4人に1人が後期高齢者となる。
 著しい高齢化に伴い、近年、村では独居高齢者が増え始めている。20年の世帯数224戸のうち、65歳以上の高齢者が1人で暮らすのが63世帯(28.1%)に上る。
 島に病院や介護施設はないため、社協は介護職員初任者研修の資格を持つ5人で、週3回のデイケアと訪問介護を担当している。だが、あと数年で人手不足に陥り、独居高齢者を中心とした訪問介護に対応できなくなる見通しだ。
 入院や介護の必要性があれば、高齢者は島外に住む家族に引き取られたり、島外の施設に入居したりすることになる。生まれ育った島で最期を迎えるのは難しい。
 社協によると、元々は10人の介護職員がいたが、そうした現役世代は、子どもが本島の高校に進学すると同時に一緒に去っていくなどした。
 介護職員の比嘉幸枝さんは「働く場が少ないのが渡名喜の課題だ。子どもが本島へ進学すると『二重世帯』となり家計が厳しくなる。そうすると親も本島へ出て働きながら、一緒に生活することになる」と話した。
(梅田正覚)
「空き家は6軒に1軒…レジャーや産業乏しく 超高齢化の島・渡名喜(下)」に続く
 今年は沖縄の日本復帰から50年を迎え、新たな沖縄振興計画も始まる。全国有数の人口増加県と称されるが、地域を詳細に見ると、離島や本島北部で刻々と人口減が進んでいる。将来的な人口減社会の到来が不可避の中、持続可能な地域づくりを考える。
 

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