『ステップワゴンではじめる車中泊奮闘記! 』アウトドア初心者でも問題なし! 第1話/購入編

しばしばキャンプに誘われることがあるのだがテントを持っておらず、準備やキャンプ場というステージも苦手だったりする。しかし家族を連れてアウトドア遊びも楽しみたいという気持ちは以前からあった。そんな私が興味を持ったのがキャンピングカーだった。調べてみると、バンコンやキャブコン、軽キャンパーなどさまざまな種類があり、その中でライターの小松 男(コマツ ダンさんが求めたのはポップアップルーフカーだったのだ。ここでは実際にホンダ ステップワゴン フィールドデッキを購入し、日本中を巡る路上生活体験をレポートしてゆく。記念すべき第1回目は「購入編」から

ステップワゴンフィールドデッキを引き上げてきた日。息子はポップアップルーフに上ったり下がったりとはしゃぎ、未体験の車中泊ライフをイメージしていた。なおルーフ部は大人と子供でちょうどよい広さ。

第1話/購入編 やや長めのプロローグ

納車後初めての車中泊。旅に出る前にテストをし、問題点を見つけられたことは本当に良かった。

カメラマン、ライター、編集者、モータージャーナリストなどなど色々な肩書を背負って生きている私だが、その中でも雑誌Garage Lifeと言う雑誌の制作には深く携わっており、常日頃から全国各地、さらには海の向こうまでガレージを取材して巡ってきた。

コロナウイルスが蔓延する前は、飛行機、新幹線、高速バスなど、公共交通機関を多用して各地へ出向いていたものだが、コロナ禍となりマイカーでの移動が中心の生活に変化。しかしそれでもホテルなどの宿泊施設を使っていたため、セルフディフェンス力を高めて一層感染リスクを軽減するためには、連泊するような取材ツアーでは車中泊をして、極力人との接触をしないようにしたいと考えるようになっていった。そこで思い立ったのがキャンピングカーの導入だったのだ。

キャンピングカーには以前から興味を持っており、何度か展示会などにも足を運んでいたのだが、費用の問題、置き場の問題、購入したところで本当に使うのだろうかという根本的な疑問を抱いてもいた。維持費を抑えるだけならば軽キャンパーという選択もあるが、長距離移動や快適性に関しては我慢を強いられるに違いない。

そのような中で思い出したのが、マツダ ボンゴフレンディの存在だ。あの車が登場した90年中ごろは、まだ成人前でファミリーカーなど意識もしなかったものだが、屋根が持ち上がり居室が生まれるそのポップアップルーフ機構に大変興味を抱いたことを覚えている。「普段はミニバンとして使えて、いざとなればファッションホテルに変身するなんて便利な車なのだ!」などと考えていたものである。

中古車情報サイトなどでキャンピングカーを物色してみると、ボンゴフレンディの他にも初代ステップワゴンにフィールデッキというポップアップルーフモデルがあったことも思い出した。初代ステップワゴンは以前出版社勤めだった時に社用車として利用しており、長距離走行性能や使い勝手の良さを知っているだけでなく、スタイリングも好きな車だ。「もう、これしかない!」と一度思ってしまったら止まれない。中古車販売店だけでなく個人売買やスクラップセンターなど全国に散らばるステップワゴン フィールドデッキを洗い出し、ついに手に入れたのだ。しかもヤフオクで。

ステップワゴンを引き上げてきた日。息子はポップアップルーフに上ったり下がったりとはしゃぎ、未体験の車中泊ライフをイメージしていた。なおルーフ部は大人と子供が寝るのにちょうどよい広さだ。
マツダ ボンゴフレンディに存在したポップアップルーフ仕様。電動で開け閉めできることと、よりルーフが高く持ちあがることがメリット。しかしキャブオーバーというパッケージの使い勝手を心配に想った。
ボンゴフレンディはキャブオーバーなので、前席と後席の間に盛り上がりがある他、運転にも慣れが少々必要だ。ワイフも運転するかもしれないことを踏まえて、我が家はステップワゴンがベターだった。
参考までにもう1台を紹介。メルセデス ベンツ Vクラス マルコポーロは、現行モデルとして販売されているポップアップルーフカーのキングだと思う。少々大きいので使い勝手は気になるが憧れの一台だ。

「わくわくゲート」ならぬ「わくわくルーフ」

ステップワゴン フィールドデッキの購入に関して家族も喜んでくれたことは嬉しかった。小学生の息子は持ち上げたルーフの中に上がったり下がったり興奮が収まらない。これは非日常をイメージさせてくれる遊び道具なのである。ちょうど購入したタイミングが昨年の夏休み前で、「これに乗って、皆で旅に出よう!」と意気込んでいたことを覚えている。

出品者の手元から引き上げてきたステップワゴン フィールドデッキ(以下:ステップワゴンF)は、1998年式と今から四半世紀近く前の個体である。走行距離は15万キロ程度でこの手の車にしては若い方だと考えている。擦り傷や塗装浮きがあるものの大きな傷は無く、外装的には悪くない状態。機関に関しては、冬場はエンジンが温まるまでアイドリングが落ち着かないことや、なぜかすこぶる遅いと前所有車から言付けがあったが、手を入れて上げれば修正が効くと判断していた。落札価格は諭吉様40人程度で同年代のステップワゴンの流通価格からすれば高価だったが、夢のポップアップルーフモデルとして考えれば安価で購入できたと思っている。

名義変更もしていないうちに、自家オールペンを敢行。これまでにも多数の車、バイクを自家塗装してきた経験があり、近所からは「あそこんち、またヤッてる」という視線を浴びさせられる。面白いのは私が車の色を塗っているのを真似して、近所に住む住民も車を自家塗装しはじめたり、私に塗装の依頼をする人なども現れるようになったことだ。売却時の査定などを気にするならば、自家塗装などしない方が良いに決まっている。しかし私の場合は自分が乗る車は、自分の好きなようにしたいという気持ちが先行してしまうのだ。

この時は忙しいさなかでの作業だったこともあり、下地作りから完成まで約半日ととてもスピーディ。以前別の車両を塗っているところの写真を見たスーパーカー協会会長から、「地面に養生しているのは斬新だ」と言われたことがある。
ステップワゴン フィールドデッキ購入時、ホームセンターなどで売られているウレタン素材のコーナーガードを利用したアンダースポイラーが装着されていたが、趣味ではないので撤去した。
缶スプレー、刷毛、ローラーなど、様々な手法で自家塗装をした経験がある中で、今回は刷毛とローラーで塗装。初期型ステップワゴンという車種のイメージ的にも大雑把に塗る方が、味が出て良いと考えた。

旅に出る前の事前テスト

オイル、エアクリーナー、スパークプラグ、ワイパーなどを交換、以前乗っていた初代ステップワゴンと比べて、もっさり感やシフトショックがあったが、呉工業の燃料添加剤、スーパーパーフェクトクリーンを入れて高速道路を長距離走破すればエンジン内部だけでなく吸排気まで付着しているカーボンを排除でき、一気に調子が改善することを知っている。名義変更も済ませ車はほぼ仕上がった。

先述したように、基本的にアウトドアレジャーが苦手でありキャンプ経験もほぼ皆無。いきなり何泊もするような旅に出る前に、一度車中泊経験をしておいた方が良いと考えた私は、家族を連れて自宅から5キロ程離れた川原にある駐車場で、プレ車中泊を試みることにした。前オーナーがカーテンなどを取り付けていてくれたおかげもあり、フロントガラスだけサンシェードを使って目隠しすれば、外から中を見られることが無い。これも大きなポイントだった。

後部座席をフルフラット状態にして、買い込んできた食材で晩御飯、その後はタブレットにダウンロードしてきた映画の鑑賞会。その後はワイフと息子はルーフフロアに上がり就寝。すべて順調にことは進んだ、かと思った。しかし夜中になると車中は暑くてなかなか寝付けない。窓を開けると無数の蚊が入ってきて格闘状態。挙句の果てには車外に出てベンチで寝る始末(ルーフフロアは網戸があり風が抜けるので快適だったようだ)。結局寝ることができなかった私は夜が明ける前に、電池式の虫よけ機器とクルマ用網戸をネットでオーダーしたのだった。

このような感じで始まったステップワゴン フィールドデッキでの車中泊ライフ。次回からは四国、九州と周遊してきた西日本ツアー編。泊る場所やあると便利な道具など、車中泊を快適に楽しむためのノウハウも紹介してゆく。

車両を引き上げて来てヤードに収めたステップワゴン フィールドデッキ。カイエンターボも長距離移動は最高に快適だが、車中泊は無理だ。
半日だ。たった半日で車は自家塗装できるのだ。ラッピングや部分塗装なども試した結果、ペンキでの全塗装がベターだと判断している。
自由を謳歌し旅をして回ったヒッピーを彷彿とさせる今回のステップワゴン フィールドデッキ。「食って、寝て、走って。自由であれ!」という一文をカッティングシートで作ったところ、どこに行っても外国人が口に出して読んでくれた。

【筆者:小松 男 撮影:小松 男】

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