会社員や公務員、アルバイトでも“確定申告をしたほうが得な人”は?税金が戻ってくることも

確定申告というと、会社員・公務員・アルバイトの方は特に「自分には関係のない話」と思われるかもしれません。

前回記事「そもそも確定申告って何? 会社員・公務員・アルバイトでも確定申告が必要な人」を解説しました。

今回は、“確定申告したほうが得な人”について解説します。確定申告をすることで税金が安くなったり、取り戻せたりするので、ぜひ取り組むべきです。


確定申告した方がお得な人もいる!

確定申告しなければならない人は、文字どおり確定申告が必須なのですが、それに該当しなければ、確定申告をする必要はありません。ですが、確定申告をした方がお得な人もいます。年末調整を受けていても、改めて確定申告をすることでお得になりますので、該当するものは漏れなく申請しましょう。

■住宅ローンを借りて住宅を新築・取得・増改築した人(住宅借入金等特別控除)

住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)によって、所得税・住民税が安くできます。初年度は確定申告が必要。2年目以降は年末調整で手続きができます。

基本的に、当初10年間の住宅ローンの年末残高の1%、最大40万円がその年の所得税から引かれます。所得税だけで引き切れない場合は、翌年の住民税が減額されます(最大で前年度課税所得×7%・年13万6,500円が上限)。

なお、消費税10%の住宅を取得し、2022年12月までに居住開始した場合は、住宅ローン控除の期間が特例で13年に。11〜13年目の3年間で最大で80万円控除できます。

住宅ローン控除は所得税や住民税が直接安くなる「税額控除」なので、税額を大きく減らすことができます。たとえば、年収600万円の人(所得税20万円・住民税30万円とします)の年末時点の住宅ローン残高が3,000万円だとしたら、30万円が控除できます。この場合、まず所得税が20万円減らせ、残りの10万円は翌年の住民税から減らせる、というわけです。

■1年間にかかった医療費が10万円を超える人(医療費控除)

病気やケガで病院にかかったり、入院・手術をしたりして、医療費が年間10万円を超えた場合は、医療費控除が利用できます。医療費控除は、年末調整で手続きできないので、会社員・公務員でも確定申告が必要です。

医療費控除の控除額は、「1年間に支払った医療費−保険金などの補てん金−10万円」(最高200万円まで)。保険金の補てんがない場合、医療費が10万円を超えた場合に医療費控除が受けられるというわけです(なお、その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等×5%まで)。

医療費控除は、課税所得を減らす「所得控除」のひとつです。

たとえば、課税所得300万円の人の1年間の医療費が20万円だった場合、医療費控除額は20万円−10万円=10万円となります。課税所得300万円の人の所得税率は10%ですので、実際に安くできる所得税額は10万円×10%=1万円となります。

医療費として認められるものは、医療機関で支払った自己負担分の医療費、薬局で支払った薬代、通院に要した交通費、治療目的で購入した市販薬などがあります。それぞれ、領収書を保管しておきましょう。医療費控除は「生計を一にしている親族」、平たくいえば家族の医療費も合算して申告可能。家族の中でいちばん所得が多い人が全員分まとめて申告すればいいでしょう。

なお、医療費が10万円に満たない場合でも、条件を満たせば医療費控除の特例として「セルフメディケーション税制」が受けられます。これは、健康診断や予防接種を受けている人が1年間に1万2,000円を超える所定の市販薬(スイッチOTC医薬品)を購入した場合に所得控除が受けられるというものです(最高8万8,000円まで)。

■一定の団体等に年間2,000円を超える寄付を行った人(ふるさと納税(寄附金控除))

ふるさと納税は、自分が選んだ自治体に寄付ができる制度。寄付をすると、寄付額に応じたお礼の品(返礼品)がもらえるだけでなく、2,000円を超える金額を所得税・住民税から控除できます。この控除に用いられるのが、寄附金控除です。

寄附金控除も、年末調整で手続きできないので、会社員・公務員でも確定申告が必要です。もっとも、ふるさと納税に限れば「ワンストップ特例制度」を利用することで、確定申告なしで手続きできます。

ワンストップ特例制度を利用するには、

・確定申告をする必要がないこと(給与所得者など)
・1年間の寄付先が5自治体以内であること

の2つの条件を満たす必要があります。

もしも、先に紹介した住宅ローン控除や医療費控除を申請するのであれば、ふるさと納税についても一緒に確定申告する必要がある、というわけです。

■学生などのアルバイトで年収が103万円を超える人(勤労学生控除)

高校生や大学生で、アルバイトをする方も多いでしょう。アルバイトの年収も、103万円を超えると所得税がかかります。しかし、高校・大学・専修学校・各種学校などに通う学生の場合、「合計所得金額が75万円以下」「給与所得以外の所得が10万円以下」といった条件を満たせば、27万円の勤労学生控除を受けることができます。

勤労学生控除を受けると、アルバイトの年収が130万円未満であれば所得税が非課税になります(基礎控除48万円+給与所得控除55万円+勤労学生控除27万円)。

勤労学生控除を受けるために確定申告を行う場合は、在学中の学校の発行する在学証明書を確定申告書に添付します。

ただし、親の扶養に入っている方が勤労学生控除を利用する場合は要注意。勤労学生控除によって、確かに本人の所得税は年収130万円まで非課税になります。しかし、扶養する親が受ける扶養控除は、年収103万円を超えるとなくなってしまうため、親の税金が増えてしまう可能性があります。年収が103万円を超えそうな学生アルバイトの方は、事前に親に相談しましょう。

■年末調整のし忘れがあった人

勤め先で行う年末調整の際に「保険料控除証明書を出し忘れた」など、申告のし忘れがあった場合、確定申告を行えば控除が受けられます。

また、確定申告の期間を過ぎてから申告し忘れに気づいた場合も、5年以内であれば「還付申告」を行えば、納めすぎた税金が還付されます。還付申告は、確定申告と同じ「確定申告書」を使って行います。

さらに、「確定申告(還付申告)が間違っていた」という場合には、「所得税の更正の請求書」という書類を税務署に提出すれば、税金が取り戻せます。

会社員・公務員・アルバイトであっても、確定申告をしなくてはならない人・確定申告した方がお得な人がいることを紹介してきました。特に注目していただきたいのはやはり「確定申告した方がお得な人」。手続きが面倒に思われるかもしれませんが、税金が安くなったり、還付されたりする可能性があるのですから、ぜひ取り組んでみてください。

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