<社説>ミャンマー政変1年 弾圧止める国際協調必要

 2021年2月1日にミャンマー国軍がクーデターで政権を転覆し、実権を握ってから1年が過ぎた。この間、ミャンマー国内での軍の弾圧はやまず、市民は多大な犠牲を強いられている。 民主主義が機能していない状況に対し、国際社会は1年余り実質的に傍観しているような状況だ。ミャンマーの民主化に向けては、いま一度国連を中心とした国際的な枠組みによる仲介が必要だ。暴力の即時停止など東南アジア諸国連合(ASEAN)の合意を国軍が履行するよう、日本を含む国際社会が協調して取り組まねばならない。

 ミャンマーの人権団体・政治犯支援協会によると、この1年で市民1503人が死亡した。報道機関も弾圧を受け、隣国タイから情報を発信するジャーナリストもいる。

 国家顧問兼外相だった民主派指導者アウンサンスーチー氏は軟禁されたままだ。スーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)関係者も500人近くが拘束されたか、軟禁状態にあるという。

 国軍は2020年11月の総選挙でNLDによる不正があったとし、1年間の非常事態宣言を経て、23年8月までに再選挙を実施すると主張している。次回総選挙で勝利した政党に政権を移譲するとも公表しているが、国軍系の連邦団結発展党(USDP)に有利な比例代表制を導入することも既定路線だ。

 1962年の軍事クーデター以降、ミャンマーでは長く軍事独裁体制が続いた。2011年の民政移管後はNLDの圧勝が続き、人々が軍政に強く不満を持っていることがうかがえる。

 民主主義を否定する国軍の行為に対し、ASEANは21年4月に暴力停止など5項目で合意したが、国軍は履行していない。今年1月には国軍の報道官が、合意は「提案」だとの認識を示し、スーチー氏らとの対話も拒否する考えを明らかにした。

 国連安全保障理事会はクーデターから1年になるのに合わせ「最近の新たな暴力に深い懸念を表明する」と声明を発表した。この1年、安保理では何度もミャンマー情勢が議題になったが、実効性ある対策を打ち出せていない。

 国軍に親和的なロシアや中国の反対があるというが、ミャンマー人の人権を守るという普遍的な価値観に反する姿勢だと言わざるを得ない。

 政府開発援助(ODA)や経済開発などで深い関係がある日本も同様だ。米英などが代表部開設を認めたミャンマー民主派による挙国一致政府を承認せず、国軍とのパイプを重視して双方に距離を置いている。

 岸田文雄首相は初めて人権担当の首相補佐官を任命するなど人権問題に積極的に取り組む姿勢を示している。ミャンマーの民主主義を守るためにも、大国の権益にとらわれず日本政府も独自に行動する必要がある。

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