朝鮮のお正月, 一般市民の家庭を訪ねてみた 30人の大家族と新婚夫婦

祖父母にクンジョル(朝鮮式のお辞儀)であいさつし、食卓いっぱいに並んだ朝鮮料理を囲みながら、新しい年を祝う――。そんな在日同胞家庭と変わらない正月の風景が、朝鮮にもある。親子3代30人の大家族チェ・ミョンナムさん(81)の家庭と、昨年結婚したリ・チョルミン(31)、キム・ソルヒさん(29)夫妻の正月を密着取材した。

民族料理に民俗遊び/大家族で囲む食卓

平壌市楽浪区域に暮らすチェ・ミョンナムさんは7人の娘とその伴侶たち、孫とその伴侶まで含めて総勢30人の大家族を母、祖母として見守る。

 長女のハン・オクファさん(57、平壌外国語大学教員)は、「毎年お正月は家族みんなで万寿台の丘の金日成主席と金正日総書記の銅像にあいさつした後、オモニの家に集まるのが恒例です。私たち姉妹は、オモニの元気な姿を見る時が一番うれしいんです」と話す。

 毎年大晦日になるとオクファさんが、妹たちに正月料理の分担を伝える。今年のオクファさんの担当はミョンナムさんの好物のペクソルギとチャルトク。すべて手作りだ。

 元日の朝、娘たちは手に手に正月料理、そしてオモニへの贈り物を持って実家に集まる。

 家族みんながそろえば、長女から順に子どもたち、次に孫たちがミョンナムさんにクンジョルをする。「ハルモニ、今年も元気でいてください」――。

両親にあいさつするリ・チョルミン、キム・ソルヒさん夫婦(C)朝鮮新報

 正月のあいさつが終われば、お待ちかねの食事の時間。

 娘たちが真心を込めてつくった正月料理をみんなで囲み、「料理コンテスト」のはじまりだ。審査員はミョンナムさん。娘たちの説明を聞きながら一皿ひと皿、吟味する。「今年こそは優勝を」と闘志を燃やす姉妹間の真剣勝負が家族全員を笑いの渦に巻き込む、ミョンナムさん家族の毎年恒例の正月風景だ。

 料理コンテストの後は、全員が昨年1年間を振り返り、今年の抱負を語る。教員、医者、美術家、芸術家、建築家などさまざまな職業に就く娘、婿、孫たちの話は十人十色で、盛りだくさんだ。3番目の孫ペク・チョルさん(29)は昨年の美術展示会で自身が描いた油絵が高い評価を受けたほか、末孫のキム・ウンボクさん(10)は今年の迎春公演の声楽部門に出演した。公演でウンボクさんが歌うようすがテレビに映されると拍手喝采が湧いた。

 アンコールを受けたウンボクさんを皮切りに、孫たち、娘、婿たちののど自慢大会がはじまり、歌が終われば朝鮮の民俗遊びユンノリで賑わう。30人大家族の正月は、どこまでも楽しく、いつまでも笑いが絶えない。

 ミョンナムさんは、「7人の子どもを育てる時は大変なことばかりだった。でも今は、すべてが楽しい思い出になっている。こうやって正月に家族みんなが元気に集まり、笑い合う姿を見ると、もう一度青春を過ごしているようです」と朗らかに笑った。

 夫婦で郷土料理を手作り/新婚で迎える初めての新年

一方、昨年6月に結婚したリ・チョルミン、キム・ソルヒさん夫妻にとっては、初めての正月。新婚夫婦はどんな正月を過ごしたのだろう。

 チョルミン、ソルヒさん夫妻もやはり正月料理と贈り物を持って、チョルミンさんの実家に向かった。

 チョルミンさんは「結婚して初めての新年を迎えて、うれしくて浮かれる気持ちと同時に、家庭を持った責任も感じる。思い出に残る正月になればいい」と話し、「義父母が黄海道の出身なので郷土料理を夫と二人で一生懸命作りました。義両親に真心を伝えたくて」とソルヒさん。

 両親は息子夫婦の手料理や贈り物に一様に喜び、あいさつや食事を一通り済ませると、「二人きりで散歩でもしておいで」と新婚の二人を気遣ってくれた。

思い出の写真館で記念撮影(C)朝鮮新報

 二人がまず向かったのは、思い出の写真館。結婚写真を撮影した場所で、新年最初の1枚を残した。「子どもが生まれたら、また私に撮らせてください」と、カメラマンも笑顔だ。 

記念写真の後は、平壌最新のデパート・大聖百貨店で新しい家具を物色。ここで扱っている国産家具が最近巷で人気だという。その後は、大同江のほとりに停泊する食堂船ムジゲ号へ。ムジゲ号もやはり二人の思い出の場所だそうだ。ここで昼食をとった後、午後は友人たちと落ち合って劇場で公演を観るのだという。

 

チョルミンさんは、「二人で歩きながら、これからどんな家庭を築こうか話し合った。想像しただけで心躍る」と笑う。建築設計が職業のチョルミンさん。「私たちが思い描く夢と理想を、家庭内だけでなく、設計を通じて社会で実現させたい」と抱負を語った。

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