自転車周遊ツアーで交流拡大 雲仙市国見町多比良地区 島原の名所も網羅、商品化へ

多比良商店街を自転車で走る山田さん(先頭)らツアー参加者=雲仙市国見町

 自転車周遊と観光を組み合わせた「サイクルツーリズム」の動きが長崎県の島原半島で広がりを見せている。雲仙市では国見町多比良地区が海にも山にも近い立地を生かして「サイクリストにやさしいまち」をうたい、町内の自転車周遊を提案。さらに隣の島原市まで範囲を広げたツアーの商品化を目指している。

  勉強会を続けて

 多比良地区には“サッカーのまち国見”を象徴する県立国見高に最寄りの島原鉄道多比良駅、熊本方面から人や車の往来が多い有明フェリーの多比良港ターミナルがある。昔ながらのたたずまいを残す商店街には蒲鉾(かまぼこ)店が多いのが特徴。「たいらガネ」と呼ばれるワタリガニ、周辺の農地で取れるイチゴや八斗木ネギなども有名だ。
 商店街の人出が年々減っていることから、地元の観光まちづくり団体「多比良文殊会」(園田泰子会長、15人)が、6年前からアドバイザーを招いて勉強会を開催。交流人口拡大の手段の一つとして、サイクリングを通して商店街と周囲の自然の魅力を体感してもらう取り組みをスタートした。
 昨年10月、商店街に「サイクリストにやさしいまち 多比良」の立て看板を掲げ、商店の軒先など8カ所に自転車を駐輪する「ラック」を設置。電動アシスト自転車5台を貸し出し用に購入。周遊マップやグルメ情報を載せたパンフレットも作成した。

  地元食材も堪能

 島原半島のサイクルツーリズムを巡っては、昨年3月に県島原振興局と熊本県の天草地域観光推進協議会が連携して、両地域にまたがる潜伏キリシタン関連遺産などを巡るモニターツアーを実施。南島原市は島原鉄道の廃線路を自転車道として再整備を進めている。
 多比良文殊会もこの機運に呼応。「島原と多比良を結ぶサイクリングコースがあれば、熊本方面から多くのサイクリストを呼び込めるはず」と、園田会長が島原観光ビューロー(島原市)に話を持ち掛け、島原から多比良にかけてを周遊する四つのモデルコースを考案した。
 今年1月24日に電動アシスト自転車を使った日帰りのモニターツアーを開き、サイクルツーリズムのアドバイザー、山田大五朗さん(43)=福岡県=や島原観光ビューロー、行政関係者ら十数人が参加。島原市内で島原城や武家屋敷を巡り、多比良地区では農場に立ち寄ってミカン狩りを楽しんだ。
 昼食は園田会長が営む割烹(かっぽう)旅館観月荘で、名物の観月いなり(いなりずし)と地元食材のおかずの弁当「うま風」を味わった。

  片道は島鉄列車

 モニターツアーには島原鉄道も協力。自転車を積み込める2両編成の「サイクルトレイン」を特別運行し、多比良駅から島原駅まで参加者と自転車を運んだ。同トレインは3月中旬から週末など限定で運行する予定だ。

サイクルトレイン車両内で自転車を固定する園田さん=雲仙市国見町

 ツアー終了後、山田さんは「島原と多比良の魅力を網羅したポテンシャルの高いコース。道中の勾配も電動アシスト自転車を使えば苦にならない」と評価し、「列車を気軽に利用できるようになれば幅広い年齢層をターゲットにできる。歴史や食、自然などテーマを絞ったコースを提案できれば、さらに楽しめるようになる」とアドバイスした。
 園田会長はツアーの商品化を思い描いており、「遠くからわざわざ来てくれるサイクリストの人たちに満足してもらえるよう、商店街の魅力を高めないといけない」と、もてなしの充実にも余念がない。


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