NASA新型ロケット「SLS」&新型宇宙船「オリオン」初飛行は2022年4月以降に

【▲ ケネディ宇宙センターのロケット組立棟(VAB)で打ち上げ前のテストと準備が進められているSLS(スペースローンチシステム)。紡錘形のフェアリング内部にはオリオン宇宙船が格納されている(Credit: NASA/Corey Houston)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間2月2日、新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」および新型有人宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」の初飛行に関する最新のスケジュールを公開しました。発表によると、SLSとオリオンの初飛行は早くても2022年4月となる見込みです。

SLSはNASAが推進する有人月面探査計画「アルテミス」などで用いるべく開発された大型ロケットで、高さは98m(上段にICPSを用いる「ブロック1」構成)に達します。中核となるのは高さ65m・直径8.4mのコアステージで、高さはNASAのロケットステージとしては過去最大。コアステージには2011年に退役したスペースシャトルに搭載されていた「SSME」の改良版である「RS-25」エンジンが4基搭載されています。

【▲ 飛行するSLS(ブロック1)の想像図(Credit: NASA/MSFC)】

いっぽう、オリオンはNASAにとってスペースシャトル以来の有人宇宙船として開発された宇宙船です。4名の宇宙飛行士が搭乗するオリオン宇宙船のクルーモジュールは、有翼型で広いペイロードベイ(貨物室)も備えていたスペースシャトルとは異なり、アポロ宇宙船やスペースXの「クルードラゴン」のようなカプセル型が採用されています。

SLSの初号機はフロリダ州のケネディ宇宙センターにあるロケット組立棟(VAB:Vehicle Assembly Building)にて2021年10月に組み立てが完了し、その後は地上テストが進められていました。SLS初号機はアルテミス計画最初のミッションでありオリオン宇宙船の無人テスト飛行でもある「アルテミス1」ミッションの打ち上げに用いられます。直近のスケジュールでは、アルテミス1は2022年2月に実施予定とされていました。

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【▲ オリオン宇宙船の想像図(Credit: NASA)】

NASAによると、VABでの作業に充てる追加の時間を確保するために、SLS初号機のロールアウト(VABから発射台への移動)は2022年3月以降に先送りされました。海外メディアのSpaceNewsは、NASA本部で探査システム開発の副管理者を務めるTom Whitmeyerさんの言葉として、ロールアウトが3月中旬に行われる可能性を伝えています。

ケネディ宇宙センター39B発射台へと移動したSLS初号機は、ウェットドレスリハーサル(推進剤の充填など打ち上げの状況を模した本番前のリハーサル)を経て打ち上げの時を迎えることになります。NASAはアルテミス1の打ち上げ時期について、2022年4月から5月の機会を検討中としています。

【▲ ケネディ宇宙センターのロケット組立棟(VAB)で打ち上げ前のテストと準備が進められているSLS(スペースローンチシステム)。4基のRS-25エンジンを搭載したコアステージと固体燃料ロケットブースターの下部が写っている(Credit: NASA/Corey Houston)】

なお、アルテミス1のSLSにはオリオン宇宙船のほかに合計13機の超小型衛星(CubeSat)が相乗りしており、そのうちの2機「OMOTENASHI(オモテナシ)」「EQUULEUS(エクレウス)」は日本で開発されたものとなります。

「OMOTENASHI」(Outstanding MOon exploration Technologies demonstrated by NAno Semi-Hard Impactor)は宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した超小型探査機(6Uサイズ)で、質量12.6kgと小型ながらも衝撃吸収材を使った月面着陸を目指します。

【▲ 着陸に向けて固体燃料ロケットモーターを点火した超小型探査機「OMOTENASHI」を描いた想像図(Credit: JAXA)】

「EQUULEUS」(EQUilibriUm Lunar-Earth point 6U Spacecraft)はJAXAと東京大学が開発した深宇宙探査機(6Uサイズ)で、気化させた水を噴射することで推力を得つつ地球から見て月の裏側にあるラグランジュ点「L2」に向けて飛行し、地球のプラズマ圏の観測、月面に衝突する小隕石の閃光検出、探査機周辺の塵の検出を行う予定です。

【▲ 深宇宙探査機「EQUULEUS」(Credit: JAXA/ISAS)】

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文/松村武宏

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