トヨタ、WRCチャレンジプログラムに参加する3名を発表。講師のヒルボネン「これからが本当のチャレンジ」

 TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は2月7日、“TGR WRCチャレンジプログラム”に新たに参加する3名の日本人ドライバーを発表した。多数の候補者から選抜された小暮ひかる、大竹直生、山本雄紀の3名は将来、WRC世界ラリー選手権で活躍することを目指し、ミッコ・ヒルボネンらTOYOTA GAZOO Racing WRTの講師陣から、ラリーの本格的なトレーニングを受けることになる。

 TGR WRCチャレンジプログラム(旧TGRラリーチャレンジプログラム)は、日本からWRCのトップレベルで活躍できる可能性を秘めた才能ある若手ドライバーを発掘し、育成するために2015年にスタートした育成プログラムだ。現在、TGR WRTネクストジェネレーションからWRCにフル参戦している勝田貴元は、同プログラムを通じて世界選手権へ駆け上っていった最初の人材だ。

 そんな勝田に続く次世代のドライバーを発掘するため、TGRは2021年8月にプログラムへの新規参加募集を開始した。60名もの応募者の中から今回、選抜メンバーとして発表された小暮、大竹、山本を含む8名が、TGR WRTの本拠地があるフィランド、ユバスキュラで行われた2週間のトレーニングキャンプに参加し、市販のGRヤリスやクロスカート、ラリー4マシンによるドライビング技術をはじめ、フィジカル面やメンタル面などのテストを受けている。

 プログラムに新たに参加するドライバーの選考は、WRC通算15勝を挙げたヒルボネンを中心に、勝田と新井大輝のコーチも務めたヨウニ・アンプヤ、ユホ・ハンニネンが担当した。彼らは現時点の個々のスキルレベルよりも、プロのラリードライバーになるためのポテンシャルを考慮し学習能力と適性を重視して前出の3名を選出したという。

「2週間にわたるトレーニング期間における候補者8名の姿勢には本当に感心させられた。彼らは本当に一生懸命で、自分の限界に挑戦しようと努力していた」と語るのは、TGR WRCチャレンジプログラムのチーフ講師を務めるヒルボネン。

「彼らはそれぞれさまざまな経歴を持っていたが、雪上や氷上の走行経験はほとんどなかった。そのため今回のトレーニングでは初めて経験することばかりだったが、それらをうまく習得し、非常に大きな一歩を踏み出したと思う」

「私たち講師陣は、将来もっとも有望なドライバーを選ぼうとしたが、それは決して簡単な決断ではなかった。今回選んだ3名のドライバーは、自身のキャリアをよく学び、つねに進歩させようという強い意志が感じられた。また、トレーニング期間中の成長度合い、講師からのアドバイスの習熟度、プレッシャーの掛かるさまざまな状況への対応といった点も非常に印象的だった」

■3名の新ドライバーたちは夏以降、フィンランド国内ラリーなので参戦予定

「ラリー界において、今後の彼らには本当に明るい未来が待っていると信じている」と続けたヒルボネン。

「彼らにとってはこれからが本当のチャレンジとなるが、その準備は充分にできていると期待している」

 トヨタ育成プログラムへの参加が決まった小暮、大竹、山本の3名は、さっそく7日からTGR WRCチャレンジプログラム・ドライバーとして、ラリーに欠かせないペースノートの作成とラリー4カーでの走行を中心としたトレーニングを開始する。

 その後、4月上旬にはフィンランドに住まいを移して集中的なトレーニングを行い、夏以降はラリー4車両でのフィンランド国内戦やヨーロッパ内で行われるいくつかのラリーに参加する予定だ。なお、同プログラムへの参加継続については毎年、各ドライバーのパフォーマンスと成長を評価した上で判断が行われるという。

 勝田に続く日本人WRCドライバーを目指し、最初の一歩を踏み出したTGR WRCチャレンジプログラム・新ドライバーたちのコメントは以下のとおりだ。

●大竹直生/Nao Otake

「TGR WRCチャレンジプログラムの育成ドライバーの1名に選ばれたことは信じられないことです。自分の名前が呼ばれたときは大変驚きました」

「これまで後輪駆動車を中心に走ってきたので、トレーニングキャンプでは前輪駆動車や四輪駆動車の運転に慣れる必要がありました。これは、私にとって一番大変なチャレンジだったと思います」

「しかしながら、そのチャレンジはとてもすばらしい、とても興奮できるものでした。今後、TGR WRCチャレンジプログラムの一員として、良い結果を出していきたいと思っています」

大竹直生 21歳(2000年6月21日生)大阪府出身

●小暮ひかる/Hikaru Kogure

「TGR WRCチャレンジプログラム に参加することが決まったときの気持ちは、言葉で言い表せないほどでした。これから何が起こるのか本当に楽しみです」

「トレーニングキャンプを振り返ると非常に大変でした。英語にあまり慣れていないため、講師の方々のアドバイスを理解し、自分の気持ちを伝えられるかどうかは大きな課題でした」

「しかしながら、今後このプログラムを通じて、必ずや成長していけると確信しています。このようなチャンスがなければ、日本を越えて海外のラリーへ挑戦できなかったため、非常に楽しみです」

小暮ひかる 20歳(2001年4月19日生)群馬県出身。

●山本雄紀/Yuki Yamamoto

「TGR WRCチャレンジプログラムの一員に選ばれて、非常にうれしいです。未だに信じられないほどです」

「この2週間のトレーニングは、新しいクルマによる過去に経験したことのない路面での走行など、新しいことをたくさん学ぶことができた大変貴重な機会でした。初めての取り組みばかりで、素晴らしい体験でした」

「これからこのプログラムに参加できることに大変興奮しています。夢を実現するための素晴らしいチャンスであると非常に期待しています」

山本雄紀 24歳(1997年2月23日生)京都府出身。

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