韓国トップ俳優が語る俳優という職業―“多くの人に愛される反面、孤独もつきもので、僕の心にはそんな寂しい部分がある”

主演最新作の韓国ドラマ「悪の花」の演技で俳優人生の集大成とも評価されたイ・ジュンギ。彼は、自分の言葉を、自分の考えを持つ俳優だ。どんな作品でも、どんな状況でも、どんな質問でも、明確な自分の考えをもとに言葉を発してくる。インタビューでも、ファンミーティングのようなファンとの交流の場でも、ハッとさせられるような言葉を残し、さらに彼を知りたくなるような魔法をかけていく。これまでのジュンギが発した言葉で、印象的だったもの、イ・ジュンギそのものを表したような言葉を振り返ってみた。


純粋さを失いたくない――。役作りの分析と共鳴、そして同化

■役作りについて

「俳優なら誰もがそうだと思いますが、そのキャラクターの生い立ち、育った環境などを想像し、なぜ今そうなっているのか、心の奥底まで深く分析しながら作り上げていきます。演じながら、可哀想になるときもあります。

たとえば、『クリミナル・マインド:KOREA』のヒョンジュン。過去の傷を克服しようとするあまり、自分の身を顧みず、追い込んでいく彼が不憫で、思わず抱きしめたくなってしまうような……そんな人物でした」

(2018年「クリミナル・マインド:KOREA」でのインタビューより)

――つらい境遇に育ったキャラクターを演じることが多いイ・ジュンギ。「クリミナル・マインド:KOREA」は、ジュンギ自身も語るように、母と兄が生きてこそいるが、なかなかハードな背景があった。思えば、両親がそろって存在するキャラクターは、ドラマであれば「麗<レイ>〜」くらいではないだろうか。(あれも寂しい境遇だが……)

「クリミナル・マインド:KOREA」© 2017 Buena Vista International, Inc. • Produced by STUDIO DRAGON in association with ABC Studios • Original U.S. series “CRIMINAL MINDS” created by JEFF DAVIS • • Original U.S. series “CRIMINAL MINDS” produced by ABC STUDIOS and CBS TELEVISION STUDIOS

■純粋さ

_「僕が演じるキャラクターの根底には、常に人としての“純粋さ”が流れていると思います。僕自身、いくつになっても、若々しくいられたり、想像力豊かでいられるのは、まっさらな心を失わずにいるからじゃないかと。

大人になり、経験を積んでいくと、下手に知恵がついて、現場で適当に手を抜く方法を覚えたりします。でも、そんなふうに現場をただの現場として考えてしまったら、与えられた役を普通にこなせるだけの役者になり、つまらないですよね。

誰も想像できなかったような表情が浮かび、それを演技で魅せられたとき、観た人が驚く。そういうことが、俳優としての信頼につながると、僕は思うんです。常にそうありたいから、いま持っている“純粋さ”は失いたくないですね」_

(2015年「夜を歩く士<ソンビ>」でのインタビューより)

――どの現場でも、子供のようにイタズラっこの面があると共演者からも暴露されているイ・ジュンギ。ファンミーティングなどで見せる姿も同様に、小学生か!とツッコミたくなるようなこと度々(笑)。そういった無邪気さが、役づくりでの想像力につながり、不可能を可能にするエネルギーになっているのかもしれない。

■孤独と寂しさ

「俳優という職業は、多くの人に愛される反面、孤独もつきもので、僕の心にはそんな寂しい部分が存在しています。ワン・ソの、皇子でありながら心が満たされず、宮中に1人で放り出されたような絶望感、それを僕自身も感じていたことで、役に入り込めたのだと思います」

(2017年、「麗<レイ>〜花萌ゆる8人の皇子たち〜」でのインタビューより)

――スターの孤独、については、我々の想像に及ばない。ただ、ワン・ソというキャラクターが多くの人の心を揺さぶったのは、イ・ジュンギ自身がワン・ソに共鳴し、同化していたからに相違ない。そう思うと、ファンの前で見せる笑顔が愛おしくなる。


TEXT:高橋尚子(編集・ライター)

Edited:野田智代(編集者、「韓流自分史」代表)

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