第29回「国家権力には気をつけろ」

異次元の常識 text by ISHIYA(FORWARD / DEATH SIDE)

国家が腐敗した場合の警察機関など、ただの暴力装置に過ぎない

2022年1月27日未明に沖縄県宮里の路上で、バイクに乗った17歳の男子高校生が巡回中の男性警察官と接触し、この高校生が眼球破裂で失明するという重傷を負う事件があった。 当時市内では、暴走行為の警戒でパトカーなどが巡回していたが、この警察官はパトカーを降りて徒歩で巡回していたという。 当初は事故として処理されていたが、高校生が救急隊員や母親に対し「右側から警棒で殴られた」と証言したため、報道と関係者証言の違いが浮き彫りになる。 警察から暴行を受けたとして拡散された動画では、少年の目から夥しい流血があり、事態は警察官の暴行事件ではないか? との憶測がSNSなどを通じて急激に広がった。 これにより28日には、沖縄署前に約500人ほどが集まり、一部が暴徒化して警察署の窓が割られたり、警察車両が破壊されるなどの事件となった。 警察署は「警察官がバイクを停車させ、職務質問しようとして右手が当たった」と説明していたが、警棒を持っていたかどうかは明らかにしていない。 事件後、高校生自らが119番通報し、病院に運ばれる際に「警察に殴られたと言ったのでは信用してもらえない」と思い、自分で事故を起こしたと説明した。その際に右目からの出血は激しかったが、他に怪我や衣服の破れなどもなかったという。 現在警察で調査中なので事実はまだわかってはいないが、警察署に集まった約500人の気持ちは理解できる。 だからといって暴徒化して良いわけではないが、集まった若者たちには、それだけ警察に対する日頃からの鬱憤も蓄積されていたのだと思う。 事実、警察という国家権力の隠匿体質はひどいもので、こうした軽微な犯罪に対しても非道な対処をする事実は山のようにある。 筆者の経験上から言わせてもらうならば、一人に向かって複数人で武器を持ち鎮圧するのはわかるとしても、通行人や街のカメラに映らなくするようにまわりを警官で取り囲み、複数人で押さえつけて暴行したり、パトカー内に連れ込んだ後、後部座席で関節などを押し付けられ、髪の毛を引っ張り顔を上げさせられ、暴行を受けるといった経験もある。 多勢に無勢で、こちらはどうにもできないのをいいことに、カメラや通行人にわからないように隠匿して暴行するなどは、警察のお家芸であることを理解していただきたい。 たかが街の武器も使用していない喧嘩ごときに、そこまでするのだから、沖縄で被害に遭った少年はどのような目に遭ったかが想像できる。 高校生は証言により個人で路地裏を走っていた可能性が高く、集団で暴走行為をしていた可能性は非常に低い。もし仮に、暴走行為の集団からはぐれて走行していたとしても、たかが暴走行為に失明させるほどの怪我を負わせる必要があるのだろうか? 他に怪我もなく、衣服の破れなどもないところから見ると、事故として片付けるにはあまりにも無理があると考えてしまうのは、警察署前に集まった若者だけではないはずだ。 警察なら何をやっても許されるのか? 国家が腐敗している場合の警察機関など、ただの暴力装置に過ぎない。そして警察官になる人間の中には、ただの職業として警察官を選ぶ人間もいる。 筆者が以前、警察官と長い時間を過ごさなくてはならないことがあり、若い警察官に「なぜ警察官になったのか?」と聞いたことがある。 その若い警察官の返答は、「高校を卒業するときに別にやりたい仕事もなく、公務員なら安定しているし食いっぱぐれることもない。警察官なら公務員で、警察学校に行けばいいだけだから警察官になった」というものだった。 筆者は一般企業に勤務したことがほぼ無いのでわからないが、どこの一般企業も同じで、その会社に就職すれば上司の言うことを聞かなければ出世できないのだろうと思う。 その上司もそのまた上司の……というように、会社内での命令系統や意思の統一は決まっていると思われ、企業のトップが腐りきっていた場合、その企業の社員は腐った意識の人間でないと出世できないのがほとんどではないのだろうか? 警察という国家権力では、命令系統のトップは政府であり、現在の日本国家の最高権力を握っているのは、腐りきっている自民党政権である。 さて、沖縄でバイクに乗っていたところ、いきなり警官に警棒で殴られ右目を失明してしまったという少年と、職務質問をしようとして右手が当たったと説明する警察のどちらが信用できるだろう? TBSの元記者・山口敬之にレイプを受けた伊藤詩織さんの事件でもわかるように、警察組織はいくら腐りきった命令であろうが従うしかない組織体制である。 沖縄の事件が少年の言うような事実であった場合、警察の不祥事であるため、国家権力機関が隠匿に走るのは明白だ。 警察への命令組織が隠匿体制ならば、下も隠匿体制であるのは明らかであり、世界中にある国家権力などどこを見渡しても目くそ鼻くそだろう。 上から下まで腐りきっている国家が持つ権力には気をつけろ。冗談でも何でもなく、明日はあなたの身に降りかかるかもしれない。

THE FOOLS「CHINA BLEEDS」

二日酔いでヨタヨタ家にたどり着いた朝

テレビをつけて こいつぁ ブッタまげた

罪のない人達が戦車にけちらされ

理由もなく銃で撃ち殺されてる

いったい何が起きてるんだ?

俺には信じられねェ

いったいないをしたってんだい!

俺にはとうてい信じられない

腐った権力のイスにいすわるために

奴らは何でもやる

自分の都合で虫ケラのように人を殺すのさ

だけど世界中の誰もがその日の事を見てたぜ

モミ消せやしねェ 何百年たったって

あの日の事は忘れやしねェ

忘れられやしねェ!

みんなが思ってる事を口に出して言えない

そんな世の中誰も望んじゃいねェ

みんなが集まって愉快に騒ぐこともできない

そんな世の中 冗談じゃねェ

誰も望んじゃいねェ

広場に集まった人々よ

正義のために死んでいった学生たちが

流した血はけしてムダにはしねェ

その日古い世界の終わりが始まったのさ

中国だけの話じゃねェ

けして夢なんかじゃねェ

この平和そうな日本だって一皮むけば同じ事さ

権力って奴は!

気をつけろ!気をつけろ!気をつけろ!

みんなが思ってる事 話す事すらできない

そんな世の中 誰も望んじゃいねェ

みんなが集まって愉快に騒ぐ事すらできない

そんな世の中 冗談じゃねェ

誰も望んじゃいねェ

CHINA BLEEDS

CHINA BLEEDS

CHINA BLEEDS

THE FOOLSは1980年に結成された伊藤耕(ボーカル:1980年〜2017年)、川田良(ギター:1982年〜2014年)を中心とするバンド。天安門事件をテーマにした「CHINA BLEEDS」は1990年にSima Recordsより発表した3rdアルバム『RHYTHM AND TRUTH』に収録。現在は2009年にデジタルリマスターされた『RHYTHM AND TRUTH+LIVE FREEDOM』で聴くことができる。

【ISHIYA プロフィール】

ジャパニーズ・ハードコアパンク・バンド、DEATH SIDE / FORWARDのボーカリスト。35年以上のバンド活動歴と、10代から社会をドロップアウトした視点での執筆を行なうフリーライター。

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