<社説>MICE施設縮小 新型コロナ後の戦略示せ

 県は、企業の報奨旅行や国際会議などを開催する大型MICE(マイス)施設について、主要施設となる展示場面積を、従来計画の3分の1となる1万平方メートルに縮小する方針を固めた。 採算性の問題をはじめ、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、大人数が集まるMICE施設の需要が世界的に変化していることも影響しているという。

 果たして施設の規模を縮小することによって、国際観光都市として経済振興の核にするという目的を達成できるのか。施設整備ありきという姿勢であるなら県民の理解は得られまい。県はコロナウイルス収束後の明確なMICE戦略を示さなければならない。

 大型MICE施設は、沖縄経済の重要な基盤となる。アジアと日本をつなぐ沖縄の優位性を生かし、国際的な経済・学術交流、展示会・見本市の一大拠点となる可能性がある。参加者の滞在期間が比較的長く、経済・消費活動の裾野が広い。それだけではない。海外企業が沖縄を訪れることで新たな商機が生まれ、沖縄のブランド力の向上にもつながることが期待される。

 県が施設縮小の理由に挙げている採算性の問題は、国にも責任がある。県は沖縄振興特別推進交付金(一括交付金)を財源とした整備を予定していたが、事業の採算性などを理由に国が交付を認めず、活用を断念せざるを得なかったからだ。

 振興計画である「沖縄21世紀ビジョン基本計画」に大型MICE施設を核とした産業振興が盛り込まれている。一括交付金の要件に合致しているはずだ。予算がつかないために、事業に着手できず機会損失を招いている。国の姿勢は、かつて都市モノレールの予算計上をしぶった沖縄開発庁と重なる。

 そこで県は、行政と民間が連携して公共サービスを提供する「PPP」の手法で事業化する方針を決めた。

 一方、新型コロナウイルスの感染拡大によって、当初計画の変更を迫られていることは確かだ。世界的に大規模イベントの中止やMICEの延期が相次いだ。2020年の県内MICE開催件数は前年比70%減の490件と大幅に落ち込んだ。オンラインイベントが主流となり、県関係者はこの傾向が続くとの見方を示している。

 しかし、オンラインMICEには限界が指摘されている。そこでリアルとオンラインを組み合わせたハイブリッド式会議が増えている。少なくとも、オンラインやハイブリッドに対応できる最先端技術を導入し、付加価値の高い施設が求められる。

 大規模化を目指さないのなら、どういう施設を目指すのか具体的に示してもらいたい。人流減少による地域経済への波及効果はどうなるのか、沖縄の魅力をどう発信していくのか。県には丁寧な説明が求められる。

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