友田市政 2期目の課題<下> 元寇遺跡の活用 ゆかりの地域と連携必至

海底遺跡から出土した大型木製品の保存処理作業。保存技術の確立で、将来の元軍船の引き揚げを見据える=松浦市埋蔵文化財センター(市教委提供)

 2012年、元の軍船や遺物が発見された長崎県松浦市鷹島町神崎免の沖合海域が、日本で初めての海底遺跡「鷹島神崎遺跡」として国史跡に指定されてから今年で10年になる。
 1980年から開始された鷹島沖の発掘調査では、元軍船の一部や陶磁器類、漆製品、矢束、刀剣、かぶとなどの武器や武具類などが大量に出土している。
 同市は今秋、同遺跡に隣接する海底から元軍船のいかりを引き揚げる。引き揚げに当たっては一昨年11月からガバメントクラウドファンディングで費用を募り、目標額(1千万円)を超える金額が集まった。
 元々、昨年秋ごろに引き揚げる予定だったが、周辺に養殖いけすや種苗生産施設などがあり、漁業関係者との協議の結果、いけすの移設や種苗生産に影響がないよう、引き揚げを1年先送りした経緯がある。
 海中から出土した遺物の保存処理は「トレハロース」(糖)を使うことで、従来の方法より処理期間の短縮や保存状態も向上。画期的な保存技術の確立で、友田吉泰市長は「今回のいかり引き揚げと保存処理作業は将来の元軍船の引き揚げに向けた試金石」と話す。
 今後は保存処理した遺物を展示する施設や展示方法などが課題となる。施設整備は市単独では難しい。県や国の協力が不可欠。開設後の運営も市には負担が大きい。併せて、鷹島を水中考古学の研究や演習の拠点とするためにも国などの研究機関の誘致が望まれる。難問山積の状況だ。
 一昨年11月、同市で開かれた「元寇サミット」では元寇にゆかりの深い松浦、対馬、壱岐の県内3市が連携し、元寇の歴史を観光など地域の活性化やまちづくりに生かしていくことが決議された。今後は福岡市や山口県など、他の元寇ゆかりの地域との広域的な連携強化も必要になろう。
 今年1月15日から福岡市で開かれた「ベトナム・福岡歴史文化交流展」で、弘安の役後の1288年に、攻め込んできた元軍をベトナムが打ち破った「白藤江(バクダン)の戦い」が紹介された。その古戦場跡はベトナムの国史跡に指定され、今年で10年という。
 また、旧鷹島町時代から交流を結んでいたモンゴルのホジルト市からも交流再開を打診されているという。友田市長は「元寇で縁があるベトナム、モンゴルと国際交流を深めるとともに、元寇の歴史に新たなストーリーを盛り込み、松浦をPRしていきたい」と話す。


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