チョー(声優) -『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 -STASHA-』一生懸命考えて生きるために行動しているキャラクター

薮の活躍が増えているのでビックリしています

――宜しくお願い致します。

チョー:

薮(助治)は主役でも何でもないですけど大丈夫ですか。

――いえ、『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 -STASHA-(以下、2205)』ではキーパーソン、『宇宙戦艦ヤマト(以下、ヤマト)』シリーズにとっても欠かせない存在です。

チョー:

ありがとうございます。

――改めて演じられた薮の印象を伺えますか。

チョー:

今までのシリーズではやはりアナライザーの出番が多かったので、薮のこと、みんな憶えてくれているかと思うほどでした。むしろガミラスのガンツのセリフの方が多いくらいだったので、ここに来て薮の活躍が増えてビックリしています。今でもいいのかなと思っています。

――薮はガミラスでザルツ人と家族になっていますし、地球とガミラスの関係性を描く点でも重要な役どころです。

チョー:

そう言ってもらえるのは嬉しいです。

――ある面で見ると薮はパイオニアだと思っています。分断を乗り越えて家族として手を取り合って生きていく先駆けでもある訳です。

チョー:

となると、第2第3の薮が出てきて、ガミラスと地球両方のスター的な人も出てくるかもしれないということですか。その見方は面白いですね。まず、畑を耕すのが薮だったという事なんですね。

――『ヤマト』の歴史で後々に振り返って見た時に、未来ではパイオニア・偉人になっているかもしれないなと思っています。

チョー:

そうなるかもしれないですね。でも、薮は行きたくて行ったわけではないですけどね(笑)。

――そうですね(笑)。気付いたらそこに居た的な人ですから。

チョー:

そうなんです。生きるために仕方なくで、薮からするといつの間にか居た感じだと思います。

――その逞しさが人間臭さもあっていいキャラクターだと思います。

チョー:

本当に庶民的ですキャラクターですね。

――『2205』ではそんな薮が活躍している姿を観ることができて楽しかったです。

チョー:

ありがとうございます。

――薮が活躍するというのは台本を読まれて知ったのですか。

チョー:

台本を読んで初めて知りました。それも一度に全部知るわけではなく、アフレコでやる範囲ごとに徐々に物語を知っていきました。そこは視聴者のみなさんが作品を観て知っていくのに近い感覚だと思います。

――福井(晴敏)さんから「今回、大活躍ですよ。」といったお話もなく。

チョー:

全くなかったです。それよりも「アナライザーが3体いてカラーを分けてやります。これが面白いです。」という事を言われたことの方が記憶に残っていますね。自分でもアナライザーを演じるのは楽しいので『2205』ではアナライザーを演じるのがメインかなと思っていたら、薮がメインだったので驚きました。

――薮の物語に関して言うと家族の話も今作では出てきますが、そこを読んだ際の感想も伺えますか。

チョー:

「彼も家族を持ったんだな」というのが最初の感想でしたね。薮がヤマトに乗っている時に「こっちも大変だけど、お前らも頑張れよ」とメールを送っているシーンで、薮の家族に対する愛を感じて良いなと思いました。

――『宇宙戦艦ヤマト2199(以下、2199)』の時から考えると新鮮でした。

チョー:

全く違いますね。

――『2199』と『2205』で薮の捉え方は変わりましたか。

チョー:

基本的に変わっていません。薮は一生懸命考えて生きるために行動しているキャラクターなんです。生きるために捕虜になり、生きるために自分の技術を教え、そこで出会った家族と一緒に生きていくことになった。今まで一人で生きてきましたが、みんなと一緒にいることの温かさを感じたんでしょうね。今は家族のために生き続けている。上から言われたから戦艦に乗って、上から言われたから地球に戻ってきて技術を教えている。サラリーマンと同じなんですよ。

――そうですね。

チョー:

それはカッコいいことでもなんでもなくて、そうやって流されたところでしぶとくやっている。

――『2205』では自分にとって大事なものが出来たという事なんですね。

チョー:

そうですね。家族が出来たときに変わったんでしょうね。家族というものが良いなと思って、離れたときに更に家族が大事だとわかった。きっと、薮自身もびっくりしているんじゃないですか。

――今回の『2205』ではヤマトに戻ってきて針の筵状態ですが、そんな薮を見られて如何でしたか。

チョー:

きっとガミラスでも異星人として叩かれていたでしょうから、薮は叩かれ慣れていると思います。

――同じく孤立した新人の土門(竜介)にシンパシーを感じて心を通わせる部分もありますが、そういったシーンではどういった事を意識されて演じられたのでしょうか。

チョー:

薮はその時に感じたことを会話しているだけだと思います。現実でもシンパシーを感じる人が居たときにどうしようか考えながら接しないですよね。そういう人が居たときに自分がそこにスッと側に行って、自分をフッと出す。それによって相手も心に思っていることを出してくれて、自分も素を出して解放されていく。そういった時は心の距離を縮めようなんて意識していないんじゃないと思いますよ。

――意識してしまうとより距離がひらいてしまいますから。

チョー:

そうですよね。

自分たちの星を救おうという考えは同じだった

――『2205』はガミラスと地球が和平を結んだ後の世界という事で、異種族間で手を取り合うことがテーマの1つでもあると思います。薮はそのテーマの中心にあるからこそ、『2205』では中心人物の1人になっていると思っています。『ヤマト』が描いている異種族で共存していくことの難しさとその尊さについてチョーさんはどう感じられていますか。

チョー:

凄く大切なことですね。人間は日本人に限らず自分と違うものを何故か否定しますよね。相手を認めようとしないところが出て来てぶつかって喧嘩しまう。

――そうですね。

チョー:

この作品ではその点を他の星という形で描いていますが、人間に近い形の異星人で違いも肌の色が違うくらいなのでまだ一緒になれているんだと思います。これが全く違う形の異星人で形態が違う生き物だと上手くいくのかというと、地球とガミラスの関係以上に上手くいかないと思うんです。

――分からないことへの怖さもありますよね。

チョー:

あるんでしょうね。でも、考えてみたら双方ともに生きたいという思いで動いているので、人間だろうと他の生物だろうと一緒なんだと思うんです。引いた位置で見ると相手を尊重して生きていればいいじゃないかと思うんですけど、実際はそこが折り合わないので難しいですね。

――作中でもそうですが、個人同士だと仲良くなるんですよ。集団となるとなかなか難しくなってくる。デスラーもガミラスの民を救おうとして戦っていて、ヤマトも地球を救おうとしていて、双方がぶつかって戦争になっていった。

チョー:

そういう所は怖いですね。互いに自分たちの生きる場所をを守りたいという考えは同じだったので、和平を結ぶことが出来たんでしょうね。

――生きることへの執念というのは星が違っていても同じだから、薮もガミラス側に潜り込んでも生きることが出来てガミラスの船員もそれを受け入れていたという事なんでしょうね。

チョー:

だから、敵対していても仲良くなれるはずなんですよ。

――故郷が同じヤマトクルーの中でも思想が違っていて、「ガミラスは敵だ」という考えの人もいれば、「新しく歩み始めるんだから気にしない」という人もいる。そういった群像劇も今作の魅力ですが、そういった各キャラクターたちがぶつかって成長していく姿を見られて如何でしたか。

チョー:

こうやって色んな考えを持った人が組織に入っていくことで徐々に変わるんだろうなと思いましたね。

――自分の持っていなかった視点が入ってきて気付かされることもありますから。

チョー:

受け取るだけではなく自分からも発信することもありますからね。

――特に1つの船の中で共同生活となると、そうせざる負えないという部分もあります。

チョー:

そうやって揉まれ合って成長するというのも今作の魅力だと思います。

――艦の中でヘイトを向けられても生きていく薮はタフですね、ヤマトクルーの中でも一番じゃないかなと思います。

チョー:

薮は元々ひとりで生きていると考えていたところに、頼ってくれる人が現れたのでタフになったんだと思います。

――それが家族を持つことで得た強さということですか。

チョー:

しかも、奥さんだけでなく子供まで出来た。急に頼られて薮はビックリしたと思います。

――それはやはり一人だった時に持っていた強さとはまた違ったものになるんですね。

チョー:

そうでしょうね。ただ、今はまだ良いところしか見てないかもしれないので、家族の大変さはまだ感じていないかもしれないですね。でも、これから自分の子供も生まれて、奥さんに尻に敷かれながら生きていくことになる。反抗期の子供たちには嫌がれるかもしれない、そうなってもその家族にしがみついていくことで薮はさらに変わっていくと思います。

――そのドラマも観たいですね。

チョー:

10年後に薮がどうなっているかも観たいですね。普通に平凡には生きていないと思いますよ。ズタズタになっているかもしれないですし、家族の絆で強くなっているかもしれない。そこは福井(晴敏)さん次第ですけど、楽しみですね。

声優って面白いなと思ったのは緒方賢一さんのアナライザーが切っ掛け

――チョーさんはオリジナルの当時の『ヤマト』を観られていたのですか。

チョー:

高校生の頃に放送されていましたが、毎週楽しみに観ていました。当時は薮ではなくアナライザーが面白いなと思っていました。声優って面白いなと思ったのは緒方賢一さんのアナライザーが切っ掛けです。

――『ヤマト』はチョーさんが声優を目指す切っ掛けの作品の1つだったんですね。

チョー:

そうです。

――アナライザーが印象に残っていたという事ですが、実際にアナライザーを演じられて如何でしたか。

チョー:

緒方さんのアナライザーは人間的だったので僕もそっちを演じるのかなと思っていたんですが、リメイクシリーズでは機械的なアナライザーが求められたので原作とは別物として切り離して演じました。アナライザーはロボットで感情を入れなくていいので、気楽に演じることが出来ました。

――逆に言うと薮は難しかったのですか。

チョー:

薮も難しいという事はなかったですね。物語のシーンごとにこういう風に感じるだろうなという事を自然体として出せるように演じました。難しいという点で言うとガミラス語をやるのは難しかったです。周りにガミラス語が上手い人多かったので、教えてもらいながら演じました。今は無くなって良かったと思っています(笑)。

――演技以外に考えなければいけないことがなくなりますからね(笑)。薮はアナライザーと違って本当に人間臭くて、そこが凄く良いなと思っています。私はサラリーマン的で共感するところがあったのですが、チョーさん自身も薮に共感するところはありましたか。

チョー:

『2205』で初めて共感しています。ガミラスの捕虜になって、生きて抜いてきたことで薮は変わったんでしょうね。捕虜ですから、殺されていてもおかしくないわけですが、どっこいちゃんと生きていたんだよという、しぶとさを感じます。

――アナライザーはロボットなので共感しようがないですからね。

チョー:

共感は出来ないですけど生身の人間と無機物のロボット、その対比には哀愁があると思っています。AIがどんどん進んでいって、まるで生きているかのように反応するようになって人間と同等に会話が出来ている。でも、無機物なんだ、本当は心がないんだというところに悲しさが見えることがありますね。

――確かに悲哀がある部分もありますね。

チョー:

もっとAIが進んでくればもっと人間的な話し方をするアナライザーが出てくるかもしれない、それでも心は機械なんだという。

――複雑ですね。先ほどはそれほど意識せずに演じられたという事ですが、今はそういった部分も意識して演じられているのですか。

チョー:

これまでは意識せずに演じていました。これからシリーズが続いていくとアナライザーも進化していくことになるでしょうから、そこで初めて緒方さん的なアナライザーになるかもしれないですね(笑)。

――人間的なアナライザーになると(笑)。

チョー:

洒落も駄洒落も自由に出せる、個人差もあるアナライザー。緒方さんのアナライザーはもっと未来を行っていたんですよ。

――これから先、どういったアナライザーが観れるかも楽しみです。そして、いよいよ『2205』が上映されます。楽しみにされているファンのみなさんへメッセージをお願いします。

チョー:

劇場に来てくれるみなさんはファミリーで、ヤマト家族だと思っています。ヤマト家族みんなでこの空間を楽しみましょう。

©西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト2205製作委員会

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