ドラマ「湯あがりスケッチ」はハマリ役!? 村上淳「50歳手前にシガラミをサッパリ洗い流した」

銭湯を舞台に、女性たち8人のエピソードを描くオリジナルドラマ「湯あがりスケッチ」が、映像配信サービス「ひかりTV」で2月3日から独占配信されている(毎週木曜22時から全8回)。「銭湯図解」(中央公論新社)著者であるイラストレーター塩谷歩波さんを原案に、気鋭・中川龍太郎氏が監督・脚本を手がけた注目作で、どこかほのぼのとした温かい気持ちになれるドラマだ。ジェイタメ編集部では、東京・北千住の銭湯「タカラ湯」の3代目で、シングルファーザーの46歳・氏子愛之助役を演じた村上淳さんに見どころなど話を聞いた。

――村上さんが思う「湯あがりスケッチ」は、どんなドラマですか?

村上淳(=以下、村上):脚本の段階で非常に心の動きが描かれている脚本だなという印象でした。中川龍太郎監督は、脚本をベースに即興的な長回しで一連で撮る手法と、それを歩いても揺れないカメラで押さえていく手法です。何テイクも重ねていくうちに何かが生まれた瞬間にOKが出るというスタイルだったんです。その手法が今回の脚本のテーマである「人と人」に合っていた気がします。

──村上さんの役どころ教えてください。

村上:なんでしょうね(笑)。小川紗良さん、森崎ウィンくんら出演者の皆さんが映っている画(え)の中にフワッと映っている「座布団」みたいな感じですかね。ちょっと主張が強い座布団で、回を追うごとにさらに主張は強くなるんですけれど。そこにある、そこに居るということは心がけました。

──無地の座布団ではなくて、格子模様だったり線が入っていたり?

村上:そうですね。

──それに絡めて、演じていらっしゃる「氏子愛之助」はどんな人?

村上:背景やバックボーンの説明は監督から受けていたのですが、あまり深く考えずに、その場で起きることと、メインロケになる(銭湯の)タカラ湯さんが、ものすごく素晴らしい現場だったので、あまり俳優があれやこれやしなくてもよい現場でした。美術部も面白くというか、ごく当たり前に作ってくれたので、僕もごく当たり前にその場にいようというアプローチをしました。

──当たり前の演技とは?

村上:中川組でいう「リアリティ」は少し意味合いが違ってくるのですが、役のさらに数ミリ先で役者が起こす何かみたいなものを中川監督は欲しがる人なので。監督とやるのは2回目なのですが、前回の現場より、それが色濃く出たのではないかと思います。

──楽しい現場だったということですが、撮影秘話があれば教えてください。

村上:タカラ湯さんの(実際の)営業が終了した後の深夜から朝や昼までの撮影で、昼夜逆転することがしばしばあったのですが、クランクインの前にそれに合わせている自分がおかしくて(笑)。現場の2日ぐらい前から「(夜中の撮影に合わせて)もう寝なきゃ!」とか。

──撮影開始が24時だったとか。それに合わせて生活サイクル変えていくのは苦労されますよね?

村上:クランクアップして1か月ほどたったのですが、まだ僕のなかで(撮影の)時間軸が抜けていないんですよ。夜中のシフトの仕事の方みたいな(笑)。それがまず楽しくて。また、今回の現場は、若いキャストやスタッフが多かったので、なんでしょうね、彼らこそが今後エンターテイメント業界を支える核となってくると思うので、そこにいれたのは幸福なことでした。

──どんな方に見てもらいたいですか?

村上:ありきたりな言葉になってしまうのですが、老若男女のみなさんに カッティングや編集があまり入り込めない、シーンごとに長回しで追っていく映像のなかで監督なりに、のちに登場する人物もチラッと出ていたりするんですよ。あとで全話通して見たときに「あっ、この人がここ出ているんだ!」みたいな、映画的な仕掛けがあります。

──銭湯が舞台ということで、村上さんはプライベートで銭湯に行くことは?

村上:マンションのお風呂の給湯器がずっと壊れていたんですよ。近所に昔ながらの銭湯があったので、ちょくちょく行っていました。おかげさまで、昨年9月にお風呂が直りまして(笑)、それからは、ぱたりと…。家で入れなかった反動で一日2回3回とお風呂に入っています。銭湯も好きですよ。地方ロケや泊まりロケのとき大浴場がホテルについていたらうれしくなりますし。

──息子さんの村上虹郎さんと銭湯に行った思い出はありますか?

村上:彼の映画デビュー作「2つ目の窓」(2014年公開)で共演しています。彼が16歳か、だから8年ほど前ですね。二人で銭湯に入るシーンがありました。でも、そういうことがなければ行かないですね。(映画では)背中を流し合うみたいな、16の息子の背中を流して頑張れよみたいなシーンだったんですが、あれは我々役者の特権というか、憧れみたいなものを撮影で実現できたというのはありがたかったですね。

──今回のドラマのなかで「(着飾っていようが)人は裸になればみな同じだから」という愛之助の印象的なセリフが出てきますが。

村上:愛之助が放つ「ここ(銭湯)は、いろんな人がいるからね」というセリフがあるんですが、そういう ある種「昭和」な感覚は、良いところは残し改善すべきところは改善すべきと強く思っているものなのですが、なんか残っていただきたいと思う文化ですね。

──もし丸一日休みだったら、どんな過ごし方を?

村上:いま48歳なのですが、この数年かけて、ちょっと強度の強い「断捨離」もしくは、皆さんが年末にやられているような大掃除を毎日やっていたんですよ。家が本当にキレイになって、犬を3頭飼っているので、様子を見ながら音楽を聞いているのが一番いいですね。48で家をキレイにしたり掃除が楽しくなったりするは、いいものを手に入れたなと思います。

──何かのきっかけがあったということですか?

村上:コロナはやっぱり無関係ではなくて、こう考えるようになりました。「どれだけ収入が、例えば300万、3000万、300億円あったとしても、物と時間と空間っていうのは絶対に有限だ」と。自分に与えられた、この空間も有限だと。この空間を広く使うには物を減らすしかない。ゆっくりした時間が欲しいのならば、お金と知恵を組み合わせれば作れる。明日やらないといけないものを徹底的に潰して行くとリラックス状態が本当に続く。新しいものを片付けると、もうひとつ新しく片付けなきゃいけないものが見えてくるので、それが心地いいです。

──デジタルデトックスもやられているとか。

村上:スマートフォン本体は機種変更するたびにSNSのチャット記録を全部クラウドからも消します。なぜかというと、(データを)空けたところにいいものが入ると思っていて、吉報を待つには、ごちゃごちゃしたものは全部捨てるという。そのシンプルさに立てていることが50歳の手前でよかったなと思っています。

──ドラマにかけた言い方をすると、「しがらみをサッパリ洗い流した」のような?

村上:そうですね。シャワーで軽く流した程度ですが。お風呂掃除でいうと、浴槽の端っこのカビを全部すっきりさせたみたいな(笑)。

カメラ:Yoshitomo Kumagai

■村上 淳(むらかみ じゅん) 1973年7月23日⽣まれ。93年に橋本以蔵監督の「ぷるぷる 天使的休日」で映画デビュー。中江裕司監督「ナビィの恋」、阪本順治監督「新・仁義なき戦い。」、廣木隆一監督「不貞の季節」の3作品で第 22 回(2000 年)ヨコハマ映画祭の助演男優賞を受賞。主演映画「夕方のおともだち」(廣木隆一監督)が2月4日公開。

■番組公式ホームページ:

■番組公式 Twitter :https://twitter.com/yuagari_sketch

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