アーティスト・斉藤壮馬の確固たる音楽性。影響を与えた2つのバックボーン

アニメソング(アニソン)を語る連載、今回は声優として人気を集める傍ら、音楽活動も積極的に行う斉藤壮馬さんをピックアップ! 斉藤さんの音楽性を作り上げたそのバックボーンに迫ります。

カルチャーライターの曽我美なつめと申します。アニメやマンガを愛するガチオタクである一方で、これまで約10年ミュージシャンとしても活動し続けるかたわら、現在は音楽ライターとしても活動しています。

そんな私が音楽オタク&アニメオタクの両側面から、様々なアニソン関連曲を考察する本連載。

今回は声優・斉藤壮馬さんによる楽曲について、スポットを当てたいと思います。

斉藤壮馬(SOMA SAITO) OFFICIAL WEBSITE 画像

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幅広いジャンルを愛する音楽リスナー。学生の頃から音楽活動も

言わずと知れた人気若手声優のひとりでもある斉藤壮馬さん。

『アイドリッシュセブン』九条天役をはじめ、『ハイキュー!!』山口忠役、『刀剣乱舞』鶴丸国永・鯰尾藤四郎役など。今や様々な人気作品に軒並み出演を果たしている声優さんとしても知られていますね。

ですが斉藤壮馬さんと言えば、その演技力と同じくらい魅力とされているのが歌唱力!

甘く柔らかな歌声で多くのファンを虜にしており、その活躍は様々な作品の役柄のみならず、アーティスト・斉藤壮馬の活動からも見て取れることでしょう。さらに歌唱のみならず自身でも作詞作曲を行ったりと、その音楽活動は決して声優業の一端に留まらない本格派としても知られています。

なぜ人気声優でもありながら、確固たる一アーティストとしての存在感を、今彼が確立しているのか。その理由は斉藤壮馬さん自身の、大きな二つのバックボーンに由来しているのではないかと思います。

斉藤壮馬 『carpool』 MV

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まず一つ目のバックボーンは、学生の頃より培ってきた圧倒的な音楽的素養。元々斉藤さんがアニメへの興味から、現在の声優業を志したことは有名な話です。

しかし実は同じく学生の頃から、かなり幅広いジャンルの音楽を聴いていた音楽好きな一面があったことも、一部のファンにはすでに知られていますね。その愛好歴は、音楽好きの間でも非常に人気の高いメディア『音楽ナタリー』にも取り上げられるほど(※)。

スピッツやポルノグラフィティといったメジャーアーティストに始まり、マリリン・マンソンなどの洋楽や、筋肉少女帯などアングラシーンを席巻したミュージシャン。さらにはフジファブリック、ART-SCHOOL、Good Dog Happy Menなどの邦ロックシーンのバンドもお気に入りとして挙げるなど。

ジャンルを問わない音楽リスナーとしての素質も、学生の頃から根付いていたようです。

(※)音楽ナタリー:アーティストの音楽履歴書第32回 斉藤壮馬のルーツをたどる

https://natalie.mu/music/column/410376

CD「in bloom」画像

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そういった音楽を聴き手として楽しむと同時に、学生の頃にはバンド活動や音楽制作も独り趣味で行っていたという斉藤さん。そんな彼の過去のエピソードを知った上で現在の活動を見ると、その本格的なアーティスト活躍にも大いに納得がいくことでしょう。それらの幅広い音楽から得た素養やヒントが、現在の斉藤さんのアーティストとして、そして声優としての活動にも大いに還元されている様子。

数多ある作品の中でも、特に『ヒプノシスマイク』や『あんさんぶるスターズ!』、『アイドリッシュセブン』など。

歌唱力も大きなカギとなるメディアミックス作品への出演が非常に印象的な点も、そんな斉藤さんの持つ音楽的素養の影響が大きいのかもしれません。

斉藤壮馬 『パレット』 MV

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声優界随一の読書家。数多の物語から紡げる世界観

そしてもうひとつのバックボーンは、皆さんご存知の通り声優界きっての読書家でもある一面!

こちらも斉藤さんの学生の頃からの趣味のひとつでもあり、その知識量の大きさは雑誌での連載コーナーを持ったり、出版社の書籍フェアに関する選書を担当するレベルの物。

またその方面への造詣の深さからか、様々な作品を声優さんが朗読するコンテンツにも、頻繁に参加している姿を見かけますね。そんな読書好きの一面が如実に表れているのは、やはり斉藤さん自身が作る音楽の中。

いわゆるミュージシャンが作る楽曲には、いくつかのパターンがあります。その中でも最もわかりやすいカテゴライズのひとつが、メッセージ型・ストーリー型の二つの分け方です。音楽を聞く人に勇気を与えたい、何か思いを伝えたいという気持ちが込められたメッセージ型。一方で、音楽の中でひとつの世界観を構成し、その物語を紡ぐストーリー型。

このどちらかに分類するとした場合、斉藤さんが作られている楽曲の大多数は、まるで小説や短編映画の物語のような、後者に分類される曲が多いのが特徴として挙げられます。

CD「my beautiful valentine」画像

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じれったさ満載の男女の駆け引きが描かれた『デート』や、今はもうここにいない大事な人への郷愁的な切なさを滲ませた『パレット』など。

これらの楽曲に歌詞として描かれている世界観は、まるでそのままひとつの小さな短編小説を読んだかのような――そんな気分にさせられる、という人もきっと多いはず。そういった「没入感のある物語を作る才能」が養われたのは、やはり昔からたくさんの物語に触れ続けてきた、読書家の一面があってこそ。

様々な幅広い物語を知り、その知識や素養を下地とするからこそ。確固たる唯一無二のアーティスト・斉藤壮馬としての世界観を、彼は作り上げることができているのでしょう。

斉藤壮馬 『デート』(Music Clip Short Ver.)

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声優という顔だけでなく、ミュージシャンとしての確固たる実力も兼ね備える斉藤さん。

その活躍の秘密はアニメだけでなく、音楽やマンガ、小説など。これまで人生を通してたくさんのカルチャーに触れてきた、彼の積み重ねられた素養や知識があってこそ。

それをふまえて様々な彼の楽曲を聞くと、よりさらに斉藤壮馬という一人の人間を、深く知ることができるような。そんな気すら、してくるように感じられますね。

(執筆:曽我美なつめ)

斉藤壮馬さん プロフィール

斉藤壮馬(さいとう・そうま)

所属事務所:81プロデュース

出身地:山梨県

誕生日:1991年4月22日

血液型:B型

代表作:『ヒプノシスマイク』夢野幻太郎、『アイドリッシュセブン』九条天、『KING OF PRISM』太刀花ユキノジョウ、『刀剣乱舞』鶴丸国永、鯰尾藤四郎など。■King Gnu・常田大希の圧倒的な音楽力。『王様ランキング』OPでも魅せる芸術的表現

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