韓国俳優イ・ジュンギの決断力―“マイペースといわれるB型のわりに、シリアスで慎重な面がある”

主演最新作の韓国ドラマ「悪の花」の演技で俳優人生の集大成とも評価されたイ・ジュンギ。彼は、自分の言葉を、自分の考えを持つ俳優だ。どんな作品でも、どんな状況でも、どんな質問でも、明確な自分の考えをもとに言葉を発してくる。インタビューでも、ファンミーティングのようなファンとの交流の場でも、ハッとさせられるような言葉を残し、さらに彼を知りたくなるような魔法をかけていく。これまでのジュンギが発した言葉で、印象的だったもの、イ・ジュンギそのものを表したような言葉を振り返ってみた。


繊細で慎重。でも、一度決めたら、突き進む

■俳優としての思い、スターとしての立場

_「僕は、かなり慎重なタイプだと思います。あらかじめ負の要素を想定し、準備しています。たとえば、毎回、作品を選ぶとき、そろそろ失敗するころじゃないかなと思ってしまうんです。俳優としてだけでなく、スターとしての立場もあるので、そういうことに少し敏感なのかもしれません。

スターというものは、脚光を浴び、多くの人に愛される反面、バッシングされたりするものなので、どうかすると心が揺れることもありますよね。なので、できるだけ気にしないようにしています。そのときは脚光を浴びなくても、作品だけは長いあいだ愛されて、皆さんの記憶に残ればいいなと思っています」_

(2009年「イルジメ[一枝梅]」でのインタビューより)

――ファンの間では周知のことかもしれないが、実は繊細で慎重なイ・ジュンギ。それは、おそらく多くの責任を背負っている自身の立場もそうさせているのかもしれない。

■俳優にとっての刺激

「誤解を恐れずに言えば、軍隊での生活が、俳優としての僕に与えた影響はありません。それよりも毎作品ごとに感じる新しい刺激が、僕にたくさんの影響を与えていると思う。俳優にとっては、作品ごとに与えられたキャラクターをどう消化していくかが挑戦で、それ自体が刺激的です」

(2014年、除隊後初来日記者会見より)

――軍除隊後に聞かれる質問の筆頭が、「軍での生活が、俳優としてのご自身に与えた影響は?」。痛快なまでに、バサッと切り返した回答が印象的だった。

■不安と葛藤

_「実は僕、複雑な人間なんです(笑)。作品を選ぶときはいつもそうなんですが、どんな自分を見せられるだろうという期待が大きければ大きいほど、失敗もできないという不安に押しつぶされそうになる。時代劇は特に、ほかの俳優より経験値が高いという自負がある反面、これまでと同じじゃないかと失望されることを怖れる気持ちも湧き、苦しみます。

一方で、出演を決めてしまうと、“この作品をいいものに作り上げる!”という1点に頭が切り替わります。そういう意味では、単純ともいえます(笑)」_

(2017年、「麗<レイ>〜花萌ゆる8人の皇子たち〜」でのインタビューより)

――俳優として、人間としての、弱さも吐露するイ・ジュンギ。自分自身を「複雑」で「単純」と話すが、「細やか」で「シンプル」、といったほうが近いかもしれない。

■決断力

「一度決めたら、それを推し進める力は強いので、決断力があると見えるようです。でも実は、選択するまでに時間がかかるタイプなんです。どの作品でもそうですね。いつも悩んでは、“おい、ジュンギ、果敢になるべきときは、なってみろ!”と自分自身に繰り返し言い聞かせています。マイペースといわれるB型のわりに、シリアスで慎重な面がありますね」

(2014年「朝鮮ガンマン」でのインタビュー)

――決める前までは悩む。だが、一度決めたら、突き進む。慎重かつ、大胆な理由は、この生き方にあるのかも。

「朝鮮ガンマン」Licensed by KBS Media Ltd. ©2014 KBS. All rights reserved

TEXT:高橋尚子(編集・ライター)

Edited:野田智代(編集者、「韓流自分史」代表)

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