相互作用する大小2つの銀河。ハッブルが撮影した特異銀河「Arp 282」

【▲ 相互作用銀河「Arp 282」(Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Dalcanton, Dark Energy Survey, DOE, FNAL/DECam, CTIO/NOIRLab/NSF/AURA, SDSS; Acknowledgement: J. Schmidt)】

こちらは「アンドロメダ座」の方向にある2つの銀河「NGC 169」および「IC 1559」(NGC 169A)の姿。向かって下の大きな銀河がNGC 169、上の小さな銀河がIC 1559です。1966年に天文学者のホルトン・アープがまとめた特異銀河(特異な形態を持つ銀河)のカタログ「アープ・アトラス」では、2つ合わせて「Arp 282」として収録されています。

NGC 169とIC 1559は、重力を介して互いに影響を及ぼし合っている相互作用銀河です。2つの銀河の間には、相互作用によってガスや塵の流れが生じています。銀河の衝突・合体・すれ違いは、この宇宙ではめずらしい現象ではありません。このような銀河どうしの相互作用は、銀河の進化における重要な側面だと考えられています。NGC 169とIC 1559が見せる相互作用の様子は、地球から2億光年以上離れた天体とは思えないほどの立体感を伴っています。

欧州宇宙機関(ESA)によると、この画像ではわかりにくいものの、両銀河はどちらも狭い領域から強い電磁波を放射する活動銀河核(AGN)を持っています。仮にこの画像でも活動銀河核からの完全な放射が捉えられていた場合、NGC 169とIC 1559の相互作用の詳細はおそらく隠されてしまっただろうといいます。その点ではかなり幸運だったとESAは解説しています。

冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡に搭載されている「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」、セロ・トロロ汎米天文台のブランコ4m望遠鏡に設置されている「ダークエネルギーカメラ(DECam)」、そして地上の望遠鏡による掃天観測プロジェクト「スローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)」による光学観測データをもとに作成されたもので、ESAからハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として2022年2月7日付で公開されています。

関連:ハッブル宇宙望遠鏡が撮影、南天“がか座”の矮小不規則銀河「NGC 1705」

Source

  • Image Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Dalcanton, Dark Energy Survey, DOE, FNAL/DECam, CTIO/NOIRLab/NSF/AURA, SDSS; Acknowledgement: J. Schmidt
  • ESA/Hubble \- A Cosmic Draw

文/松村武宏

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