ロックンロールの女番長!ジョーン・ジェット「バッド・レピュテーション」  本人出演のドキュメンタリー映画「バッド・レピュテーション」に見るジョーン・ジェットの生き様

ランナウェイズから始まるジョーン・ジェットのロック

最近マイブームで、女性お笑い芸人にハマってしまった。男芸人が幅を利かせる中で、自分のお笑いをひたむきに、そしてたくましく追求する女性芸人。女性芸人だけのお笑い大会『THE W』も素晴らしく面白い。

―― 今、女性芸人が確実にキている。男に媚びることなく、女性が自分らしく輝くこと。芸人という “男性社会” のなかで女性芸人は闘い続けている。

さて、ロックの世界で男性=家父長制に闘い続けた人は誰かというと、アメリカのロッカー、ジョーン・ジェットが浮かぶ。

ジョーンのキャリアはランナウェイズから始まる。「女性がロックなんて!」という意見が大多数だった時代、純粋にハードロックをやりたいという想いから集まったのが「チェリー・ボンブ」で有名なランナウェイズだ。しかしこの女性ロックバンドは性的な目で消費されてしまった。それを遠因にバンドは解散。最悪な事態であった。

映画「バッド・レピュテーション」で描かれるジョーン・ジェット

ドキュメンタリー映画『ジョーン・ジェット / バッド・レピュテーション』では、解散後の打ちひしがれるジョーンを見ることができる。

ジョーンはただでは挫けない。淡々と録音をする。しかしレコードを出そうにもレーベル契約がない。ならば自分でレーベルを作ればいいじゃないか、ということで、彼女は自身のレーベル「ブラックハート・レコーズ」を始めた。そう、自主レーベルを持った初の女性ミュージシャンとなったのだ。

「女だから」「男だから」という偏見は、いまも生きている。近年になってやっと女性の権利やジェンダー・エクオリティーについて語られ始めた。フェミニストであるジョーン・ジェットは、「ライオット・ガール」ムーブメントにも協力している。フェミニズムと政治思想を掛け合わせ、自分たちの置かれているひどい差別的状況や暴行などを語り、パンクロックを歌うというのが、この運動であった。その代表格バンド、ビキニ・キルのレコードをジョーンは喜んで引き受けている。

ジョーンにはまさに “女傑” という言葉がふさわしい。後輩バンドの面倒をみたり、さまざまなバンドのプロデュースをしたりと本当に分け隔てない。権力に寄りかかることなく活躍していく姿は映画でも印象的に描かれている。

「バッド・レピュテーション」を歌うジョーン・ジェットのしたたかさ

ところで彼女のセクシュアリティは謎のままである。レズビアンの友人はジョーンの「いけないアナタ(I Hate Myself for Loving You)」という大ヒット曲についてこう言う。曰く「レズビアンの讃歌」であると。

彼女は自分が性的マイノリティだと気づかれたくなかったという。だから、女である “あなた” を、こんなにも好きな女の私に反吐が出る、というように歌詞を理解し勝手に共感したのだろう。またジョーンの歌に『A.C.D.C』という歌がある。これは隠語で “両刀使い” の意味を持つ。歌詞もPVも衝撃的である。

ジョーンのオープンリー・レズビアン・アーティストとしてのスタンスは、様々なLGBTプライドイベントで演奏を行い実際に活動することでアピールしていく、というものなのだろう。

キャリアを築くまでのジョーン・ジェットの活動は壮絶であった。「女のくせにロックをやるふしだら娘」と罵声を浴びせられ、またブーイングとともにアンプが飛ばされることもあったそうである。

映画の題名にもなっている「バッド・レピュテーション」の歌詞を見てみよう。

 私の評判なんて、どうでもいい
 あんたは過去に生きてる
 今は新しい時代なのにね
 女の子はなんだってできるし
 私だってする
 私の評判なんて、ほんとどうでもいい

この刺激的な歌詞を持つ曲は、日本でも人気のアヴリル・ラヴィーンがカヴァーをし、2012年には漫画『ワンピース』の映画版12作目『ONE PIECE FILM Z』の主題歌に選ばれている。

彼女の歌は世代を超えて、ロックンロールのハートを届けてくれる。

縛られないで自由になろう!

彼女はそう呼びかける。ジョーン・ジェットこそ、まさにロックンロールの女番長だ。

カタリベ: 白石・しゅーげ

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