なぜ松田宣浩は重用されるのか? キャンプ合流初日に示した頼もしさと鷹の課題

声を出してノックを受けるソフトバンク・松田宣浩【写真:福谷佑介】

若手にはない松田の声出し「若い選手は選手に対しての声がない」

10日に宮崎での春季キャンプA組に合流したソフトバンクの松田宣浩内野手、柳田悠岐外野手、ジュリスベル・グラシアル内野手。藤本博史監督が「3人が来たことで活気づくよね。締まってくる」と語るように、これまでの第2クールまでに増して、チームの練習中の雰囲気が明るく、ポジティブなものになったのは明らかだった。

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そこには今季キャプテンに就任した柳田の“太陽”のような明るさも1つの要因だろう。そして、もう1つはやはりムードメーカーである松田の存在。ルーキーの野村勇内野手をいきなり「いさみちゃん」と名付けてニックネームで呼んで盛り上げただけでなく、シートノックや連係練習などでも一際、大きな声を張り上げて、チームにピリッとした空気をもたらした。

松田自身も思うところがあったようだ。新型コロナウイルスの感染でキャンプインは筑後のC組で迎えた。第2クールまでは筑後で練習を積みながらも、宮崎の様子も気になっていた。「筑後から映像見た時も、活気がないと思っていた」とバッサリ。「ぬるいでしょ、活気がなかったでしょ。若い選手が声は出している。ただ自分の中で出しているだけで、もう少し出して欲しいなと見ていた」と若鷹に苦言を呈した。

確かにキャンプ序盤から、川瀬晃内野手や2年目の井上朋也内野手らが積極的に声は出していた。ただ、松田が出す声とは何かが違う。その中身を藤本監督が指摘していた。「若い選手は声は出しているけど、選手に対しての声がないんですよ。『さあ行こう』ってだけで、シートノックやってても『何してんねん、お前!』とか他の選手を叱咤激励するのがないんです」と語る。

「僕は活気をつけるのが取り柄。負けることはない」

さらに、松田の“声出し”を「良いプレーに対して良いプレー、悪いプレーに対して悪いプレー、というので1回1回声を出せる。それが良いところ。マッチはそういうのができるから締まってくる」と評する。ただ声を出すだけでは十分ではない。本当に必要なのは選手に向けての声かけ、意味のある声出しなのだという。

これまでチームをムードメーカーとして支えてきた松田。チームでは世代交代の必要性が叫ばれているものの、なかなか精神面での“ポスト熱男”は育ってこないのが現実だ。「マッチがいると色々悪いプレーは叱ってくれるし、自分が悪いプレーをすると大きな声で謝る。(若い選手も)一生懸命やってるけど、今度聞いてみて。『さあ行こう』『いいぞ』しか言ってないんですよ。そういうのができる若い選手が出てこないとね」と指揮官。若手への物足りなさとともに、だからこそ松田がチームに必要とされ、不可欠な存在であると再認識させられる。

「僕は活気をつけるのが取り柄。負けることはないと思う。野球の結果に繋がることではないので、できる人がやればいいかな、と思っています」とも語っていた松田。キャンプ合流初日で感じさせた存在の大きさ。精神的支柱としての頼もしさを感じると共に“ポスト熱男”の後継者の出現を望みたい。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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