防災力が最強のPHEV・EVは? 災害時に役立つおすすめ車種6選

災害への備えとして注目を集めているPHEV(プラグインハイブリッド)とEV(電気自動車)。大規模災害が続発している昨今、防災・備災目的で購入を検討する人も増えている。そこで、防災力に優れたPHEVとEVの選び方と、おすすめ車種を紹介する。

PHEVとEVを防災用品として選ぶポイント

PHEVとEVが防災に有効と言われるのは、大量の電気を確保できるから。今までは個人が数日分の電気を蓄えておくことは難しかったが、PHEVとEVなら被災時でも電化製品を使えるレベルの電気を利用できるのだ。

なお多くの輸入車のPHEV・EVモデルでは、そもそも電化製品へ直接電力を供給する機能(AC100Vコンセント等)が備わっていない。まずこの点に注意したい。

そういった点を踏まえると、PHEVとEVを防災用品として選ぶ際は「蓄電・発電の性能」が判断基準となる。総電力や充電・給電の仕様など5つのポイントをチェック。生活に必要な電気をどれだけ確保できるか確かめよう。

一方で車中泊のしやすさは、さほど考慮する必要はない。被災時は在宅避難が基本。家に住めなくなったケースは避難所などでの生活となる。車中泊は一時避難の選択肢。長期間の避難はエコノミー症候群などのリスクを伴うため、推奨できない。車中泊がしやすいに越したことはないが、1〜2日程度の一時避難なら準備さえしていれば大半の車で対応できる。そこまでこだわらなくて良いだろう。

PHEVとEVは災害時の活躍事例がいくつも報告されている

ポイント1:住まいの被災リスクに応じてPHEVかEVかを選ぶ

被災時には大規模停電が予測されるが、電気の復旧はガソリン不足の解消より早い可能性がある。東日本大震災ではガソリン不足は日本海側でも10日ほど続いたが、電気は466万戸の約80%が3日後に回復。予測されている首都直下型大地震でも電気の復旧が6日を目標としている(内閣府発表)。

そうなると大型バッテリーを搭載するEVの方が安心と言えるが、インフラの復旧はケースバイケース。エンジンとモーターで蓄電と発電が可能なPHEVの方が災害時のリスクヘッジには向いている。結局のところ、両車には一長一短があり、街の被災リスクを考慮して安心できる方を選ぶのが正解だ。

ポイント2:「総電力は大きく、充電時間は短く」がベスト

PHEVでもEVでも、スペックで重視したいのは駆動用バッテリーの総電力。当然kWhが大きい方が電気を多く利用できる。PHEVなら10 〜15kWh、EVなら50〜80kWhであることが多い。一つの基準にすると良いだろう。

充電時間も要チェック。周辺エリアは停電しても少し離れた街は通電しているケースも考えられる。外部の給電スポットで何時間も待つのは大変だろう。急速充電に対応している車を選ぶのが無難だ。

ポイント3:燃費・電費とタンク容量・総電力のバランスに考慮

PHEVとEVは電源としてだけでなく、移動手段としても被災時に力を発揮する。言わずもがな燃料や電気の消費が少なく、エコだからだ。当然PHEVなら燃費と電費(交流電力量消費率か電力消費率)、EVなら電費が少ないことが望ましい。

気をつけたいのは、燃料タンク容量と駆動用バッテリーの総電力とのバランスだ。燃費・電費が良い車種は燃料タンク&バッテリーが小さく、エンジンによる発電量やバッテリーの総電力が低い傾向にある。総電力を優先しながら、燃費・電費に優れていることが大切だ。

充電スポットが増加してPHEVとEVはより便利に!

ポイント4:自宅に給電したいならV2H対応がベター

自宅にV2H(Vehicle to Home:充電に加え、車両に貯めた電池を自宅などへ供給出来るシステム)機器を導入できるなら、V2H対応の車種を選びたい。V2H機器を利用できれば自宅で充電できるだけでなく、無理なく自宅内の家電を使うことができる。現状ではV2H機器は高額だが、防災関連の補助金を受けられるのに大きなメリットがあるのだ。

V2H機器はニチコンをはじめとする数社が販売する。また対応しているのは国産の一部車種のみとなっている。選択肢は少ないが、V2Hを導入するなら対応車種がおすすめだ。

ポイント5:コンセントを設定できるかも要確認

V2Hを利用しない場合は車内のコンセントから車の電力をとることになる。ご飯を炊いたり、電子レンジを使ったりしたいなら100V / 1500Wのコンセントが必要だ。さらに車内コンセントはタコ足配線をすると発熱の危険性があるため、コンセントの数は2つ以上あると助かるだろう。

特に、輸入車は外部に給電できない車種もほとんど。国産車の場合も車種によっては設定されていない。もしコンセントがないようならメーカーオプションやアフターパーツ、カー用品で対応できるか確認しておこう。

防災力に優れたPHEV3選

前述のポイントを元に各PHEVを見比べ、防災力No.1の車種を決定。有力な車種も紹介する。なお、今回調査の対象としたのは2022年2月1日現在、日本で発売されている車種のみ。海外でのみ販売している車種や、国産でもリリースされてない車種は選考外としている。

防災力なら最強は三菱 3代目アウトランダーPHEV

2021年に登場した3代目アウトランダーPHEVは、トップクラスの蓄電・発電力を誇っている。

総電力は20kWhと、国産車で1位。輸入車を含んでも、20kWh台に到達しているのは格上サイズであるX5 xDrive45e(24kWh)の2台だけ。燃料タンク容量も56Lと十分であり、バッテリーと燃料が満タンなら最大12日分の電力を供給できるハイスペックだ。

防災の専門家も認めている三菱 アウトランダーPHEV

しかも、アウトランダーPHEVは急速充電に対応。約38分で80%充電できる。V2Hにも対応しているし、AC電源は100V / 1500Wを2つ備えている。充電・給電能力も申し分ない。

給電のしやすさもアウトランダーPHEVの特徴

車内も広々としており、飲食物や防災グッズの貯蔵庫として活用できるのも好印象。EVも含めて、防災力においては最も優秀と言えるだろう。

土俵際の防災力が際立つトヨタ 2代目プリウスPHV

2017年に登場した2代目プリウスPHVは、現時点で唯一「大型ソーラーパネル」をルーフにオプション装備できる車種だ。

晴天時の発電出力は最大で5.5km/日なので走行を補えるほどの電気は生み出せないが、少なくともスマホは充電できる。情報が命を左右する被災時に、ガソリンと電気の供給が完全停止してもスマホが使えるのは値千金と言っても過言ではない。

エコと防災を両立するトヨタ プリウスPHV

総電力は8.8kWhと少ないが、9.35km/kWhというトップクラスの電力消費率でカバーしている。オプションではあるが急速充電に対応し、約20分で80%充電できるのも見逃せない。

V2Hを導入すれば存在感がさらにUP!

V2Hにも対応しているし、100V / 1500Wコンセントも2つ備えている。なお、コンセントの電周波数は国産PHEVで唯一60Hzとなっている(工場出荷時)。周波数を切り替えたい場合は販売店に相談しよう。

優雅さと防災力を兼ね備えたレクサス 2代目NX (450h+)

PHEVはあくまで車。防災力だけでなく、乗り心地やデザインも考慮したいという人は多いはず。そんなニーズに応えてくれるのが2代目NXの450h+だ。

レクサス初かつ唯一のPHEVであり、質感の高さが魅力。共通のPHEVシステムであるトヨタ RAV4 PHVより燃費は低いが、エンジン出力に勝るなど車としての性能が高くなっている。

優れた性能で所有欲を満たしてくれるレクサス NX450h+

防災面でのスペックは飛び抜けて優秀ではないが、すべてが高レベルだ。総電力18.1kWhという大容量で、100V / 1500Wコンセントを2つ標準装備。V2Hには対応していないが、か、AC外部給電システムでの給電もできる。

V2Hには未対応だが給電能力は十分以上

他の国産PHEVよりもプレミアムで、輸入PHEVより防災力に優れている。この独自のポジションがNX 450h+を推す理由だ。

防災力に優れたEV3選

EVもPHEVと同様の条件で、最も防災力に優れた車種を選定。さらに使い勝手が異なるおすすめEVを2台紹介する。

EVで最も高い防災力備えるのは日産 初代アリア

2022年に登場した日産初のクロスオーバーEVであるアリア。厳密には限定版「B6 limited」が販売されているだけで、正式販売はまだだが車自体の予約受付中なのでノミネートした。

総電力はB6グレードが66kWh、B9グレードが91kWh。二回り以上もボディが大きいメルセデス・ベンツ EQE が90kWhであることを踏まえると、いかに大出力のバッテリーか分かるはずだ。

国産EVのSUVとして期待大な日産 アリア

もちろん、国産EVの強みである急速充電とV2Hへも対応もバッチリだ。ネックとなるのは100V / 1500Wコンセントがないこと。ただ、ディーラーオプションの「DC/ACインバーター」を購入すれば外部に給電することも可能だ。

自宅給電できれば防災力はさらに向上

AC100Vのコンセントが2つ備わり、最大出力も1500Wあるので、多くの電化製品を使用できる。電周波数を50Hz/60Hzをスイッチで切り替えられるのも便利だ。

優秀なうえ中古車でも狙いやすい日産 2代目リーフ

EVの先駆者であるリーフ。2017年にフルモデルチェンジした2代目は、小型ながら非常に防災力が高い。

S、X、G、アーバンクロムの4グレードは総電力が40kWhだが、e+の3グレードは62kWhと同サイズの中では高水準。急速充電にも対応し、e+グレードでも約60分で80%充電ができる。V2Hにも当然、対応している。

e+の登場でさらに防災力が増した日産 リーフ

一方で、100V/1500Wコンセントは設定されていない。しかし、ニチコンの「パワー・ムーバー ライト」「パワー・ムーバー」といったアフターパーツを利用すれば外部給電が可能。むしろ車外に設置できる分、コンセントよりも給電しやすい。

日本で最も流通しているEVだけあって使い勝手良好

同アフターパーツは45〜65万円(税別)と高額だが、リーフはEVとして比較的リーズナブルなので合計額で考えれば高くない。むしろ中古車流通台数が最も多いEVであるため、お手頃価格で手に入れられるかもしれない。

圧倒的な総電力の高さを誇るBMW iX

2021年11月に登場したiXはBMW初となる4WDのEVだ。特筆すべきはバッテリーの総電力で、xDrive40は76.6 kWhだが、xDrive50はなんと111.5 kWh! 日本で販売されているEVで最大電力だ。

さらに一充電走行距離(WLTCモード)も650kmなので、1週間の停電でも問題なく乗り越えられるはず。

高電力だからこそのパワフルな走りが魅力なBMW iX

さらに150kWの急速充電に対応。大容量のxDrive50でも約42分で80%充電できる。現状では50kWの急速充電器が多いため、実力を発揮できていないが、それでも十分だろう。

150kWの急速充電機が普及すれば安心感がさらに高まるはず

一方でV2Hには未対応。コンセントもないが、12V電源ソケットやUSB電源ソケットはあるため、インバーターを探せば消費電力が低い電化製品なら使うことができる。被災時に電気を活用したい人には不向きだが、ガソリン不足を考慮した移動手段としては最適だ。

どんな車選びでも自分の生活に合っているかが大前提

つまるところ、PHEVとEVを防災に役立てたい場合、電気の蓄電・発電・給電能力がキーとなる。しかし、防災で大事なのは「日常生活の延長線で災害に備える」こと。自分のライフスタイルに適した車の中から、より安心できるPHEVとEVを選ぶのが大前提だ。

2022年はトヨタ bZ4Xやスバル ソルテラなど新型車が続々デビューする。防災力に優れた車種も多いので、自分にピッタリな1台がより見つけやすくなるはずだ。

[筆者:たけだ たけし]

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