戦争をどうつくるか、嫌悪感が深い学びに 横浜で特別授業

「戦争のつくり方」を議論する生徒たち(横浜市立南中学校提供)

 戦争の記憶を次代へ-。横浜市立南中学校(同市南区)の2年生185人が1月、オンライン授業で沖縄戦について学んだ。

 当時の話を聞くだけでなく、ロールプレーイング方式で当事者の立場を体験することで、戦争の恐ろしさや悲惨さが一人一人の心に深く刻まれた。授業の感想を伝えるアンケート用紙には、戦争を「自分ごと」として捉える生徒たちの言葉が並んでいた。

 「あなたは1944年7月の沖縄県読谷村の住民です。本土決戦に向け疎開せよと通達が来ました」-。

 教室のモニターを真剣な表情で見つめる生徒たち。沖縄県にいる講師が話し掛ける。「8月21日に出航する疎開船に乗りますか、とどまりますか」。生徒らはA、Bの選択肢が書かれたボードを頭上に掲げた。

 疎開船に乗ることを選ぶと、待ち受けるのは「死」。学童疎開船が米軍の攻撃を受けて沈没し、約1500人が亡くなった「対馬丸事件」だ。疎開を選んだ生徒は着席し、「生き残った」生徒たちが立ったまま、次の質問に移る。どちらのガマ(洞窟)を選ぶか、南部・北部どちらに逃げるか-。その先には集団自決や餓死、空襲が待ち受ける。

 5問のロールプレイが終わり、見渡すと「生き残った」生徒はごくわずか。講師はこう続けた。「住民の4人に1人が亡くなったという数字だけで見るのではなく、戦争は自分と同じように生きていた一人一人に起こった出来事です」

 後半のワークショップの課題は「どうすれば戦争がつくれるか」。生徒はグループに別れ、議論を始めた。「SNS(会員制交流サイト)を使おう」「兵役を課せるよう法律を変えよう」「戦争を美化する漫画を作ればいいんじゃない」-。

 沖縄県の平和啓発プロモーション事業「御万人(うまんちゅ)ぴーすふるアクション」の一環として行われた今回の特別授業。衝撃を受けたのは、生徒だけではなかった。

 同校の教諭は「どうすれば平和になるかを考える学習は今までたくさん行ったが、『戦争のつくり方』を考えるのは初めて。生徒が国民を洗脳する方法を考えながら『こんな社会、やばい』と嫌悪感を示していて、かなり深い学びになったと思う」と話す。

 特別授業は、昨年予定していた現3年生の沖縄への修学旅行が新型コロナウイルス禍で中止となる中、「平和の学びを止めたくない」との教諭らの思いで、実現。日程の関係で沖縄への修学旅行を5月に予定する現2年生が引き継ぐ形になったといい、校長は「コロナに振り回されたが、生徒と先生、沖縄とのつながりが強くなった」と力を込める。

 授業後のアンケートには、戦争を「自分ごと」として受け止め、次につなごうとする生徒たちの言葉が記されていた。「沖縄のことをもっと学びたい」「つらい思いをして証言してくれた人の話を受け継いでいきたい」。3年生から渡された平和のバトンをしっかりと受け取った2年生たちが走りだす。

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