JR京都駅周辺、再開発が加速 コロナ後も視野、古都の玄関口大きく変化へ

高層複合ビルへの建て替えが計画されている京都中央郵便局。左は京都駅ビル(京都市下京区)

 JR京都駅(京都市下京区)周辺エリアで、再開発が加速してきた。北側では京都中央郵便局を高さ約60メートルの高層複合ビルに建て替え、2029年度以降の開業を目指すプロジェクトが始動した。東側では23年秋に市立芸術大が開校予定で、相乗効果による活性化も期待される。古都の玄関口の街並みが今、大きく変わろうとしている。

 日本郵便(東京都)と京都駅ビル開発(下京区)が計画する高層複合ビルは、地上14階、地下4階、延べ面積約13万平方メートル。京都中央郵便局と、隣接の立体駐車場を一体的に開発し、1~2階は商業施設、3~10階はオフィス、11階以上はホテルとしての活用を見込む。

 観光客の混雑が課題となっていた駅前バスターミナルの一部をビル1階へ移設するほか、災害時には帰宅困難者を受け入れられるよう防災備蓄倉庫を整備、屋上は緑化して一般に開放する計画だ。塩小路通側は高さ31メートルに抑える方針で、日本郵便は「周辺の街並みとの調和も図り、玄関口としてふさわしい計画にしたい」とする。

 新ビルと地下通路でつなぐ構想が持ち上がったのは、京都駅前地下街ポルタ。運営する京都ステーションセンターの押川正大社長は「オフィスだけでも相当な規模がある。飲食や物販の需要が大きく伸び、駅前を回遊する人も増えるだろう」と歓迎する。一方、新型コロナウイルス収束後のインバウンド(訪日外国人)や観光需要の回復を見据えると、駅周辺で不足する業態やサービスが多くあると分析。例えば夜間に出掛けられる場所が少ないといった課題も残る。押川社長は「今後は駅前事業者と市立芸大が協力し合い、京都らしい文化を感じられるエリアにしていけたら」と話す。

 激化していたホテル開発はコロナ禍で一服しているものの、駅北側の植柳小跡地では外資高級ブランド「デュシタニ京都」が23年秋の開業を控える。新ビルも高級ホテルの誘致を目指しており、富裕層の滞在客が増加する可能性もありそうだ。

 駅東の崇仁地域(下京区)と南東の東九条地域(南区)では、市が文化芸術を基軸に再開発を主導している。崇仁には23年に市立芸術大(西京区)と銅駝美術工芸高が移転開校、東九条では東京・お台場でも人気を集めるクリエイター集団「チームラボ」のミュージアムが24年度に完成予定だ。周辺では既に若者をターゲットにした“インスタ映え”の飲食店が開業するといった変化も出始めた。南東側には未利用の市有地が点在しており、地域と共生する民間事業者の誘致が今後の焦点となる。

 また市が再開発を進める理由の一つに、一帯で急速に進む高齢化や人口減少がある。今後は若い世代の移住を促していく方針だが、市立芸大の学生は約千人と、大学としては極めて少ない規模。さらに京都駅徒歩圏内の東九条ではホテル開発などを背景に地価上昇が続いており、定住人口増へのハードルは高いとみられる。

 市プロジェクト推進室は「駅前にオフィスができれば周辺への居住ニーズも出てくるのではないか。市有地も有効活用し、若い人が住みたいと思う地域にしていくことが今後の課題だ」としている。

観光シーズンには混雑も目立つ京都駅前広場のバスターミナル(京都市下京区)
京都駅東側の崇仁地域で建設が進む京都市立芸術大の新校舎(京都市下京区)

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