広がる髪の毛“治療” 事情 頭を見られて「時は残酷やな」と言われた町医者が祈りを込めて説明

「お前、ほんまに禿(は)げたなぁ!」。往診をしている私の顔?頭?を見て、今は亡き父がしみじみと言いました。

ある時は5歳の女の子に頭を見せてと言われ、ひざまずいて頭を見せると指を指して大笑いされ、悲しくなったことがあります。ある時は友人の結婚式の際に、「時は残酷やな」と髪をみてボソッと呟かれたこともありました。

散髪屋さんでは、後から入店しても大体一番先に店から出ます。髪の毛の量が半分くらいしかないので料金も半分にして欲しいものだと常日頃思い、最近は風呂場で自分で散髪をしていました。私のように男性で髪の毛に関する悩みをもっておられる方は多いのではないでしょうか?

これだけ医療が進歩しているのですから、禿げなど簡単に治りそうなものだと思いますが、他に治さないといけない病気があるので、そちらの方に力を注いでいるのでしょう。どなたか私が生きている間に特効薬を作って頂きたいものです。

特効薬ではありませんが、最近は発毛外来などをたくさん見受けることができます。効果は人それぞれですが、劇的に発毛する人も見受けられますので、そういった専門外来を受診してみることは一つの方法です。

また、薬の効果が乏しい人はウィッグや植毛などの方法もあります。最近は定額制度のものや良心的な値段の商品もあるようですが、ある医師のYouTubeでは増毛をして酷い目にあったと嘆いておられました。増毛に関しては個々で調べて慎重にした方がいいかもしれません。

最近は植毛の技術も発達してきており、以前のような後頭部の皮膚を切り取ったりせずに後頭部の皮膚から特殊な機器を使用して、植毛する毛を抜き取る技術も発達しています。海外では髭や体毛を使って、植毛するケースもあるようです。

日本ではまだまだ一般的ではないようですが、禿げの人達は髭や体毛が濃い場合が多いので期待が持てる治療の一つだと考えています。ますます禿げ治療が進歩することを祈るばかりです。

◆谷光利昭 兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。外科医時代を経て、06年に同医院開院。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。

© 株式会社神戸新聞社