人員増強も職員「本当に辛い」…感染傾向にも変化が…自宅療養6割で保健所の対応は? 【取材中も鳴り続ける電話…感染ピークの保健所は】

新型コロナの感染者と医療機関をつなぐ砦となっている保健所。オミクロン株の急拡大で、第6波が収束する兆しすら見通せない中、職員1人1人が懸命の対応に追われています。保健所の今を取材しました。

鳴りやまない電話。
束の間の昼休みも、対応に追われる職員。

今月9日の金沢市保健所の様子です。

石川県内にある5つの保健所のうち、金沢市保健所の管轄は、中核市である金沢市全域です。感染源特定のための疫学調査や患者の健康観察、入院先の調整とその業務は多岐にわたります。

1月半ばから急激に増え始めた県内の感染者。その症状の多くが無症状や軽症のため、自宅療養者の数は11日の時点で3275人と、治療中の患者の6割を占めるまでに増えています。

電話応対する職員「お子さんからうつったものだと思うので、それは今の時点でお母さんの療養期間中はお母さんからお子さん行くというのはないかなと思いますので…」

【減らない感染者…もし自宅療養になったら?】
もし、自宅療養になったら…心がけるのは、どういった点なのでしょうか?職員に話を伺いました。

地域保健課 宮崎陽子・課長補佐「基本的に陽性者と分けて食事等生活を別にして頂く。どうしても共有せざるを得ないところ、トイレであったり、お風呂というところは、お風呂に関しては最後に陽性の方が入っていただくということ。トイレに関しては、こまめに消毒対応をしていただくということで、完全に動線を分けて頂く」

【追いつかない対応…人員増強も職員らは「本当に辛い」】
保健所では、感染者への聞き取り調査に加え、自宅療養者の健康観察や相談にも応じています。

電話応対する職員「あとはほかの方との生活を分けて食事をなさっているかとは思いますけども、それも続けてください」

感染者の急増で一時は、保健所からの連絡が陽性判明から2日後になることもありました。そのため今月からは、他の部署の応援も加えて人員を2倍に増やしています。
さらに、これまで濃厚接触者への連絡も担っていた保健所の業務を、金沢市では、同居家族など一部を除いて専用のコールセンターでの対応に切り替え、現場の負担軽減に努めています。

地域保健課 宮崎陽子・課長補佐「おかげさまで翌日にはしっかり対応できている。ただ、職員の方がやっぱりもうバーンアウト寸前というかかなりメンタルは来ているかなと感じます」

保健所に届いた感染者の情報は、年代や症状に合わせ優先順位をつけて対応しています。トリアージと呼ばれる緊急時の医療や救命現場で必要とされる作業です。

地域保健課 宮崎陽子・課長補佐「対応に遅れが出ていることについては、辛いです。本当につらいです。ただ、本当に優先順位を付けて対応せざるを得ないという現場の事も少し理解してほしい」

【現場から見えた“新たな感染傾向”】

こうした中、金沢市保健所の越田理恵所長は、これまでの若い世代を中心に広がっていた感染傾向に変化が起き始めていると懸念を示します。

越田所長「当初は若い人たちから広がっていった。行動範囲の広い方の中で感染していた。その次に家庭内感染。子どもたちが感染する。次は高齢者にシフトしていくという形だと思っている」

ミーティングでの報告「高齢者施設での陽性者が凄く増えてきた状況です」

この日のミーティングでも、高齢者への感染の広がりが共有されました。施設内の感染はクラスターに繋がりやすく、職員の間に緊張感が走ります。こうした状況に加え、第6波の急拡大で連絡がつかない感染者も増えているといいます。

【電話が繋がらない感染者…増加する事務作業…課題は山積】

金沢市保健所 折坂聡美・医長「陽性者が増えると繋がっていない人も日に日に積もっている形になる。これがすごく気になっている」

保健所では病院に連絡したり、住所を調べたりしていますが、中には先月から一度も連絡が取れないという人も。

折坂医長「このなかで具合が悪くて電話に出られない人がいるのではないかということもありますので、繋がっていない方は心配なので毎日連絡しています」

想定外の感染スピードに比例した膨大な事務作業。そんな職員らの心の支えとなるものが、それぞれの机にありました。

折坂医長「速く頑張って早く帰ってきてね、と。」

家族や友人から贈られた応援メッセージを励みに過酷な状況に臨んでいます。

【命を守る使命…呼びかけたいのは”感染対策の徹底“】
越田所長「いかに命を守るかということが我々の使命ですし、具合が悪いとかということを感じた時点でちょっと一呼吸おいて検査に行くなりちょっとお家にいるなりしていただくことをお一人お一人が守ってほしい。」

日々、感染者と向き合う職員たち。
必要な人に適切な医療を届けるための戦いが、これからも続きます。

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