目立つ「キャッチボール禁止」の看板 東京に室内練習場を作った少年野球元指導者の危機感

最寄りの新木場駅から徒歩7分の立地にある「オードヴィーボールパーク」【写真:荒川祐史】

最寄りの新木場駅から徒歩7分、子どもだけで来られるようアクセス重視

最寄駅から徒歩7分の好立地に、都内では珍しい硬式も使える室内野球練習場がある。少年野球の子どもたちからプロ野球選手まで幅広い世代の野球好きが集まる。中学硬式野球の全日本コーチも務めた施設責任者は少年野球を取り巻く環境の変化に危機感を持ち、現状を変えようとしている。

【動画】プロ野球選手や人気YouTuberも使用する実際の室内練習場の映像

室内練習場「オードヴィーボールパーク」は東京都江東区の倉庫が立ち並ぶ一角にある。有楽町線など3つの路線が乗り入れる「新木場」駅から徒歩7分。施設の責任者を務める緒方将介GMが、アクセスを重視した理由を説明する。

「少なくとも中学生以上の子どもたちが保護者の送迎なしに来られる場所にしたい思いがありました。野球ができる土手は車がないと行けなかったり、自転車は危なくて禁止されたり、子どもたちだけで野球ができる場所は都心にほとんどありませんから」

1年半ほど前にオープンした「オードヴィーボールパーク」は、都内では珍しい硬式も使える室内練習場だ。マシン打撃ができる3か所のレーンに加えて、手投げ打撃レーンとティー打撃スペースがある。それぞれを区切るネットを外して全面貸し切りも可能。小学生から草野球をしている大人まで幅広い年齢層が利用している。さらに、自主トレで訪れるプロ野球選手もいるため、目の前で一流プレーヤーの打撃を見るチャンスもある。

オードヴィーボールパークの緒方将介GM【写真:荒川祐史】

「野球は大人がいないとできないスポーツになってしまった」

緒方氏は思う存分にバットを振る子どもたちをうれしそうに眺めている。首都圏に野球の練習場所をつくる必要性を強く感じているからだ。現在51歳の緒方氏は野球とともに歳を重ねてきた。子どもの頃は近所の公園で友達と野球をして、家に帰ればプロ野球のナイターをテレビ観戦。2年前までは、全国大会常連の首都圏にある中学生硬式野球チームの監督だった。2016年から3年間は、全日本シニアのコーチも務めている。

「この10年くらいで野球の環境は大きく変わりました。都内でキャッチボールができる公園は、ほとんどありません。子どもたちは、どこで野球をやればいいのか。野球は大人がいないとできないスポーツになってしまいました」

東京都豊島区で生まれ育った緒方氏が子どもの頃は、近くに野球ができる公園や空き地があるのは当たり前だった。学校が終わったら友達と待ち合わせて、暗くなるまで白球を追う。ところが今は、公園の入口に「キャッチボール禁止」の看板。はやる気持ちを抑えるようにバットを手にして「オードヴィーボールパーク」の近くで営業開始時間を待っている子どもたちが、警察に通報されることさえあったという。緒方氏は「昔も今も、子どもが野球をやりたい気持ちは同じだと思います。でも、今は野球をやりたくても、子どもたちの力だけではどうにもならないんです」と声を落とす。

時代の変化を受け入れていないわけではない。緒方氏は、子どもたちに野球以外の選択肢が増えたこと自体は歓迎している。だが、野球をやりたい子どもたちのための環境が整っていない現状を変える責任感と使命感を持っている。「子どもは変わっていません。変えたのは大人なんです。全ての子どもたちに野球を好きになってもらいたい、みんなに野球をやってもらいたいとは考えていません。野球好きの子どもたちを大好きにしたいと思っています」。

【動画】プロ野球選手や人気YouTuberも使用する実際の室内練習場の映像

この投稿をInstagramで見る

オードヴィーボールパーク(@eaudevie_ballpark)がシェアした投稿

【動画】プロ野球選手や人気YouTuberも使用する実際の室内練習場の映像 signature

(間淳 / Jun Aida)

【動画】プロ野球選手や人気YouTuberも使用する実際の室内練習場の映像

軟式、硬式どちらにすべき? あまりに多い“中学野球”の選択肢と特徴を紹介

「才能が開花する前にやめてしまう」日本ハムスカウト部長が少年野球の仕組みに警鐘

© 株式会社Creative2