<県政の現場から 2022長崎知事選> コロナ認証店 酒類提供自粛に賛否 県は医療逼迫を懸念

人影がまばらな繁華街。看板に明かりはともっているが、入り口に「休業」と張り紙をした店が目立った=9日午後7時28分、長崎市本石灰町

 長崎県内全域に適用されている新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」が14日、延長された。県は医療提供体制の逼迫(ひっぱく)を懸念し、引き続き3月6日まで飲食店に対し営業時間短縮と酒類の終日提供自粛を要請。これに対し感染対策の第三者基準を満たす「認証店」からは緩和を求める声が上がる一方、感染抑制のため一定理解を示す意見も聞かれた。
 政府が本県を含む13都県の重点措置延長方針を固めた9日午後6時ごろ、長崎市の歓楽街の人影はまばら、開いている飲食店も数えるほどだった。すし店店主の入江俊尚さん(62)は売り上げが1万円程度の日もあると嘆く。「酒を飲めなければ人は夜の街に来ない。他県は(酒の提供は)よくて、なぜ長崎はだめなのか。せっかく認証を取ったのに…」
 一方、諫早市内のある認証店のスナックは休業中。経営者の女性(56)は「夜9時まで営業できても(感染が)怖いし、そもそもお客さんが来ない。重点措置が適用されてホッとした。協力金があるだけでもありがたい」と県の方針に理解を示す。
 政府の基本的対処方針によると、重点措置の適用地域では、非認証店は酒類を提供できず午後8時までの営業。協力金は1日1店舗当たり3万~10万円が支給される。一方、認証店であれば非認証店と同じ対応を取るか、午後9時までの営業と酒類の提供も認められている。ただ後者の場合、協力金は同2万5千~7万5千円に減額される。
 この「選択制」を採用するかどうかは各自治体の判断。1月21日に適用された13都県のうち採用しなかったのは本県を含め3県。本県は認証店でもクラスター(感染者集団)が複数発生していることなどを理由に挙げた。
 県が厳しい制限を続けるのは、医療逼迫を懸念しているからだ。昨年末時点で県内の累計感染者は約6千人。それが第6波で一気に2万人を超えた。県全体のコロナ病床使用率は13日時点で約4割。医療従事者の感染者も相次ぎ、各医療機関で一般診療を制限するなど影響が広がっている。現在まん延しているオミクロン株は重症化率が低いとされるが、高齢患者の増加に伴い酸素投与が必要な患者も増えている。
 知事選に立候補している中村法道知事(71)は「感染拡大を一刻も早く抑えたい」として県民に理解を求めつつ、感染状況が改善すれば認証店でマスク会食の徹底などを条件に酒類の提供もあり得るとする。

 知事選では、新人の医師大石賢吾候補(39)は「社会経済活動を回復させるべきだ」として選択制採用を主張。会社社長で新人の宮沢由彦候補(54)も「経済活動を回すべきで、重点措置の延長は不要」との立場だ。


© 株式会社長崎新聞社