<社説>民法「嫡出推定」見直し 家族法制、不断に検証を

 女性が婚姻中に妊娠した子どもは夫の子と推定する民法の規定「嫡出推定」が見直される。離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定する規定は維持するが、女性が出産時点で再婚していれば現夫の子とする例外を設ける。 嫡出推定の見直しは明治期の民法制定以来初めてだ。現状にそぐわなくなった規定について、「子どもの利益」を最重要視して法制審議会が示した判断を評価する。

 一方、ドメスティックバイオレンスの被害者など事情があって離婚、再婚ができない女性は対象から外れるとの批判もある。民法を巡っては今後も不断の見直しが必要だ。

 嫡出推定は父子関係を早く安定させることが子どもの福祉につながるとの考え方に基づく規定で、女性が婚姻中に妊娠した子は「夫の子」と推定するのが大原則だった。

 離婚後300日以内に別の男性との子どもを産めば前夫の子とされるため、出生届を出さないことも多く、子どもが無戸籍になるケースがあった。改正によって女性が出産時点で再婚していれば現夫の子とする。無戸籍者らの住民票の作成や各種届け出には困難が伴い、救済に向けた支援の拡充も求められている。

 父子関係の確定を否認する嫡出否認についても見直す。現行は夫のみに否認を認めてきたが、一家の長が権限を持つ家制度の名残だとして批判があった。母と子にも否認権を拡大する。父親の協力が得られない場合でも母子主導で申し立てが可能となり、期間も出生を知ってから1年だった制限が3年となる。

 嫡出推定の見直しの他にも今回の改正には要点がある。専門家が男女平等につながると評価したのは女性のみにあった再婚禁止期間の撤廃だ。父親の推定が前夫と現夫で重複することを避けるため、女性だけに100日間の再婚禁止期間が設けられていた。

 かつて禁止期間は6カ月だったが、最高裁の違憲判断を受けて100日に短縮された経緯がある。差別的だと批判されてきた規定がなくなる。

 懲戒権の規定も削除し、体罰の禁止も明文化する。現行の規定は、子の身体や精神に苦痛を加えて懲らしめることを許してきた。明治期の民法にあり、戦後の民法改正でも引き継がれてきた。

 2011年の民法改正時にも議論されたが、削除を見送っていた。18年に目黒区で5歳児、19年には千葉県野田市で10歳女児がしつけを理由に虐待死した。19年の改正児童虐待防止法は子への体罰の禁止を明文化しており、民法の規定が課題だった。法制審が改正を示した意義は大きい。

 22年度以降の改正法案提出が見込まれる。伝統的な家族制度の崩壊などを理由に保守系議員らが反発することも予想されるが、改正の頓挫はあってはならない。生活様式や価値観の変容にあわせ、家族の形を巡る法制度の課題に向き合い続ける必要がある。

© 株式会社琉球新報社