障害者福祉 もっと触れ合う機会を コロナ禍で地域との交流激減 川棚 2022長崎知事選 まちの課題点検・14

施設の子どもたちと遊ぶ覚明さん。「障害者に寄り添う県政を」と願う=川棚町小串郷、「あすなろ」

 寒空の下、子どもたちは元気いっぱいに広場を駆け回る。ご機嫌に歌いながらブランコを揺らす子、思い出したように縄跳びを引っ張りだして来た子、傘を振り回してはしゃぐ子。「今は晴れてるから、しまおうか」。傘を持った子に優しく呼び掛けながら、ブランコの子の背中を押す。
 覚明優衣さん(21)は、長崎県東彼川棚町小串郷の社会福祉法人「長崎慈光園」の保育士。昨年4月から同法人が運営し、県内では2カ所ある福祉型の障害児入所施設「あすなろ」で働いている。施設には自閉症や学習障害(LD)などを抱える子どもたち37人が生活。一人一人の特性に向き合い、粘り強くコミュニケーションを図る必要がある。意思が伝わり、子どもたちの素直な言葉や態度に接するとやりがいを感じる。
 元々、障害者福祉の仕事に関心はあった。優衣さんの双子の弟、和哉さん(20)と友哉さん(20)は共に自閉症。当初は一般の幼稚園で働くつもりだったが、施設での実習を通して職場環境に親しみを感じ、就職先を決めた。仕事をするようになり、これまで以上に弟たちの言動にも目が向くようになり「以前より会話が弾むようになったし、気持ちを分かるようになった気がする」。
 現在、友哉さんは就労継続支援事業所で働いている。和哉さんは就労移行支援事業所に通い、一般企業などへの就職を目指して面接を重ねているが、なかなか決まらずに苦労している。
 県の障害福祉計画によると、県内の障害者雇用は、法定雇用率の引き上げや障害者雇用への関心の高まりにより近年、増加傾向にある。就労を支援する福祉施設から一般就労への移行も増えているが、原則最長2年の訓練を受けながら一般就労への移行を目指す就労移行支援事業所の移行実績は、2019年度末で訓練終了予定者の4割程度。県は移行率向上を目指して、さまざまな施策に取り組むが、最近2年は新型コロナウイルス感染症拡大で企業側の採用が鈍化している。
 「和哉は歴史が好きで、クイズ番組に即答して驚かせる。友哉は絵を描くのが好きで、ちょっと見た絵をさらりと写してみせる。2人ともそれぞれに自慢できることや尊敬できる面がたくさんある」と優衣さん。日常生活や地域の中に、もっと障害者と触れ合う機会があれば、彼らが活躍できる場所もきっと増えていくのにと思う。
 川棚町は特性の異なる二つの県立特別支援学校があり、諫早・大村両市を含む「障害医療福祉圏域」としても比較的体制が充実。県内でも障害者が身近な地域と言える。だがコロナ禍の影響で地域と交流する機会は激減。障害者と地域社会を隔てる新しいバリアーが生まれたようで、少しさみしくも感じる。
 社会全体が閉塞(へいそく)感に覆われているからこそ「障害のある人にとって暮らしやすい社会になるといい」と願う。「それが、みんなにとって優しい社会だと思うから」。子どもたちや弟たちの顔を思い浮かべながら、知事選に1票を投じるつもりだ。

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