阪神は守護神の穴をどう埋める? 球団OBが推すガンケルの救援起用とドラ3新人の抜擢

阪神のジョー・ガンケル【写真:荒川祐史】

新外国人のケラーはコロナ禍の入国制限で来日が遅れている

昨季、前半に首位を快走しながらもリーグ優勝を逃した阪神。今年こそ17年ぶりのリーグVを手にしたいところだが、2年連続セーブ王の守護神ロベルト・スアレス投手がメジャーへ移籍した穴は大きい。新外国人のカイル・ケラー投手がその後釜として期待されるが、コロナ禍でまだ来日できていない現状にある。現役時代に阪神、ヤクルトなど4球団で計21年間捕手として活躍した野球評論家の野口寿浩氏が沖縄・宜野座キャンプを視察し、新たな“勝利の方程式”を提言した。

「新外国人が開幕に合わないのであれば、9回を任されるのはおそらく岩崎(優投手)」と野口氏は言う。昨夏の東京五輪で侍ジャパンの一員として金メダル獲得に貢献した岩崎は、レギュラーシーズンでも62試合に登板し3勝4敗1セーブ41ホールド、防御率2.65の好成績を残したものの、5年連続40試合以上登板の勤続疲労がうかがえ、昨年は調子を落とす時期もあった。

さらに心配なのは、岩崎が抑えに回った場合に、8回を担うセットアッパーと目される岩貞祐太投手だ。15日にはシート打撃に登板したが、打者5人に対し1本塁打2四球と精彩を欠いた。最初の打者の大山を一ゴロに仕留めたものの、坂本、小幡に連続四球。島田の一ゴロの後、江越にバックスクリーンへ1発を食らった。「明らかなボール球で四球を連発し、仕方なくストライクを取りにいって1発を浴びた。キャンプ中盤でちょうど疲れが出る時期ではあるけれど、それを差し引いても、現段階では不安です」と野口氏は首をひねる。

そんな中で野口氏が推すのはジョー・ガンケル投手のリリーフ起用だ。昨季は20試合全てが先発で9勝3敗、防御率2.95をマークしたガンケルだが、同氏は「リリーフで起用したら面白いのではないか」と見る。来日1年目の2020年には28登板中、22試合でリリーフで登板しており、経験もある。

ガンケルは「クローザーまで考えてもいいかもしれない」

「コントロールが良くて球威もある。三振をバッタバッタと取るタイプではないが、安定感が抜群。8回を任せてもいいし、クローザーまで考えてもいいかもしれない」とまで言う。「もちろん、ガンケル抜きでも先発要員が6人揃うことが条件だが、青柳、秋山、西勇、伊藤将、及川、藤浪、アルカンタラがいて、左肘のクリーニング手術で出遅れる高橋も、それほど時間はかからないと聞いている。頭数は足りるのではないか」と、仮にガンケルをリリーフに回したとしても、先発陣に不安はないと見る。

さらに、ルーキーにも可能性を感じた。この日のシート打撃には、ドラフト3位の左腕・桐敷拓馬(きりしき・たくま)投手も登板。打者5人を無安打1四球1奪三振に抑えた。特に、マルテを内角に食い込むスライダーでどん詰まりの遊ゴロに仕留めたシーンは印象的で、野口氏は「プロ入り後初の実戦形式での登板で、緊張感も疲労もある中で堂々と投げていた」と目を細めていた。

「スアレスの穴を1人で埋めるのは大変。シーズンを通して活躍することは難しくても、1か月間ならなんとかなるという投手が、入れ替わり立ち代わり役割を果たしていくことならできるかもしれない。そういう意味で、桐敷もそうだが、石井、小川、小林、浜地、湯浅ら楽しみな投手は多い」とも語る。今季は、延長12回まで行われる。「7、8、9回に勝ちパターンの救援陣を注ぎ込んでも、決着がつかず、その次に投げる投手が重要になるケースが増える」。鍵を握るのは救援陣。スアレスの抜けた穴を“数の力”で埋め、矢野阪神は優勝に近づくことができるか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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