フィンエアーはなぜ日本へ週40便も飛ばすのか 永原範昭日本支社長に聞く【インタビュー】

フィンエアーの永原範昭日本支社長は2月14日、アフターコロナの日本路線や今月発表された新シートについて、本誌のオンラインインタビューに応じた。以下、一問一答。

ーコロナ禍での日本線の動向は。

最初は2020年3月の終わりぐらいから、コロナの影響が出てきた。日本線は成田(〜ヘルシンキ線)の週3便だけを継続して、それ以外は運休した。その後、成田線を徐々に増やし、2021年10月からデイリー化、関空(〜ヘルシンキ)線も週3便になった。貨物需要が多く、海上貨物から航空貨物に移る流れが2021年2月くらいから顕著になり、貨物便が1日に2便飛ぶ日も増えた。今はとにかく貨物に支えられているのが正直な印象。旅客は日本の水際制限が解除されない限り、急激に増えることは難しい。12月に企業の長期滞在の人の帰国のピークがあった。それ以外はロードファクターにすると平均10%あるかないか、そんな感じでやってきた。

ー成田空港のサテライトに3機くらい駐機していた。

1日3便運航の時もあった。最初に1日2便で飛び始めたときに、乗員繰りの関係があり、一晩駐機して同じクルーが翌日に帰るというパターンを組んでいたので、フィンエアーで賑わっている感じがあった。

ーコロナ後の日本路線の見立て、どのような戻りを予測しているか。

ヨーロッパ域内やヨーロッパやアメリカの動向をみると、、制限さえなくなれば人の動きはすぐに戻る。帰国後の自主隔離の7日間がゼロになったタイミングではある程度、急激に戻ってくる。

ただ、我々の取引の90%が旅行会社経由で、80%がレジャー客。パッケージツアーに頼っているところも多く、販売のリードタイムは最低2か月くらい必要。制限が緩和されて旅行商品が販売され、その2か月後にならないと動きがないということを考えると、6月以降になると思う。

昨年の11月くらいに、2022年の夏スケジュールに日本線は週40便を運航すると発表した。おそらく今週末に、一旦の調整を発表する流れになると思う。なかなか今の環境で週40便というのは、どう考えても無理だろうと思う。

ただ、週40便と本社が発表したというところは、他のヨーロッパの航空会社と違う。他社はアメリカや南米、アフリカなどもっと大きいマーケットがあるが、我々はビジネス戦略の根幹として、ヨーロッパ=アジアというところが中心。制限さえ緩和されれば、週40便を運航するというコミットメントを本社が出すということは、我々にとってもマーケットにとっても意味がある。

ー夏スケジュールには、札幌を通年化し、福岡を季節定期便で再開する。両都市発着便はどういう客層が利用しているのか。

フィンランドの人口は550万人、そういうところからみると、札幌にしても福岡にしても決して小さな町ではない。550万人の国でヘルシンキ空港は賑わっている。札幌だけで200万人、北海道で500万人、九州では福岡だけで200万人、キャッチメントエリアでいえば1,500万〜2,000万人くらい。決して小さなマーケットではないという見方が一つある。

福岡はほとんどが日本人で、99%がレジャー客。旅行会社との連携で、観光商品をいかに販売するかがメインになる。

札幌は最初は冬だけの運航を考えていたが、最終的には通年運航になった。当初の目論見としては欧州発が6〜7割だった。北海道のパウダースノーが世界的に有名で、特にイギリスから北海道に行く割合がものすごい高く、欧州からの利用者に冬に来ていただけるのではないかという数字的裏付けもあった。実際はプロモーションのタイミングなどがうまく噛み合わず、最終的には日本発が7割乗っている結果だった。日本人にも非常に興味をもって利用いただいたので、これであれば夏のヨーロッパに行っていただくという需要を作れるのではないかと、通年化した経緯がある。

北海道で乗り継ぎというプロモーションを仙台でやった。北海道はヨーロッパに一番近い日本の地点、ヘルシンキは日本から一番近いヨーロッパの地点であるので、両地点がハブとなれば面白いことができる。日本の場合、どこの空港からも札幌行きの便はある。大体は朝イチに出て、昼前に札幌に着く便があり、間違いなく全部フィンエアーにつながる。場合によっては、北海道にも滞在し、ヨーロッパに行くというツアー、プロモーションもできないかを考えた。実現はしていないがそういう可能性もある。

ープレミアムレジャー客が世界的に増加している。この段階で新プレミアムエコノミー、ビジネスクラスを導入した狙いは。

ビジネスクラスを利用するレジャー商品は存在しているが、座席には限りがある。全部が全部レジャーに使うわけにも行かないという中で、追加プロダクトとしてプレミアムエコノミーを導入した。ビジネスクラスまでは追加料金を払えないが少しは贅沢したいという、プレミアムレジャー市場はどんどん大きくなってきているので、タイミング的には良い。後発ではあるが、レジャーのプレミアムを持たせたものとして使いたい。

ビジネスクラスのプロジェクトは2018年に始まった。実際の導入は2021年を予定しており、1年遅れている。エアバスA350型機は16機を保有し、あと3機追加して19機体制になる。エアバスA330型機は8機あり、機齢は11年から12年になってきた。A330は10年以上前のプロダクトで古さを感じるようになってきたので、刷新する狙いもあった。環境負荷の面でも劣っているので、座席軽量化で環境に貢献できる部分もあった。

ーどういった運賃体系を想定しているか。

3つのクラスの運賃は別に作り、それぞれに運賃体系を設定する。パッケージツアーの場合、エコノミークラス運賃で作った商品をベースに追加料金を支払うという販売の方法になっていくと思う。エコノミークラスと比べ、ビジネスクラスで40万円くらいの差がある。プレミアムエコノミーは15万円前後くらいをイメージしている。

ーこれまでビジネスクラスには乗れず、プレミアムエコノミーがなかったからフィンエアーを選ばなかったというビジネス客も想定しているか。

(プレミアムエコノミーは)ビジネスクラスの利用者とは違う客層だと思っている。ビジネスクラスまでの差額を払えないけれど、という利用者だと思っている。機材によって違うが20席くらいしかない。

プレミアムエコノミーの利用を許可している企業している企業は意外と少なく、エコノミーかビジネスという感じがする。企業の中でもプレミアムエコノミーの位置づけがクリアになってくればシェアが増えていくと思う。

ー当日アップグレードなども販売するか。

今はその話は出ていないが、可能性は充分にある。プレミアムエコノミーが初導入で、利用者の買い方などの経験がない。売れ方を見ながら、空港での追加料金でのアップグレードみたいなものも当然考えてくると思う。

ー投入路線は3月1日に発表される。日本線にもかなり早くに入ると思うが、どういった路線に投入されるか。

今の状況だと中国はほぼ便がない、あとは韓国と日本、タイ、シンガポールなので、日本線に入る可能性は個人的には高いと思うが、まだ何も知らされていない。

ー日本路線が貨物需要に支えられている中、前回の決算ではキャッシュポジティブになるかならないかで、貨物便を動かすかを決めているという話があった。日本=ヨーロッパ間ではシベリア鉄道などの陸送との競争もあり、貨物運賃の下落は北米線より早く進むと思う。これは運航計画の見直し要因になるか。

まったくその可能性がないとは言えないが、運航計画のキャッシュポジティブというのは、儲けになる部分ではなく運航コストでみている。飛行機の場合、飛んでも飛んでなくてもお金がかかる。飛ばして1ユーロでも儲かるなら飛ばしたほうがいい。極端な下落は多分ないので、イールドが下がったところで、貨物便としての運航をやらないというところまではいかないと個人的に思っている。今も貨物需要は好調に推移している。

ー羽田線の開設が遅れている理由は、成田での貨物の取り扱いや乗員繰りという点が大きいか。

それもある。羽田は早く開けたほうがいいと思っているが、両方というわけにもいかない。成田でのフォワーダーとの関係があり、成田のほうがハンドリングがしやすい。成田=羽田の陸送部分が航空会社の負担になってくる。

ー3月に需要が戻って来ない状況では、羽田線開設はもう少し先になるか。

なんとも言えないが、日本で羽田の価値が高いということはわかっている。今より少しでも需要が膨らむという見立てがあれば、羽田を夏スケジュール頭からの開始も充分に考えられるが、まだ難しいと個人的には思う。今週末くらいに調整が入る。

ー日本線の供給座席数はアジアで最も多い。これだけ規制が長期化する中で、アジアのハブを韓国や中国に移すというように展開が変わってしまう可能性はあるか。

あまり心配しておらず、そういう可能性はない。日本路線はエンドツーエンドで、日本の利用者をヨーロッパへ、ヨーロッパの利用者を日本へということに限定されており、乗り継ぎの割合はすごく少ない。そういう意味でハブを他の国へ移す考えはまずない。

ーフィンエアーはなぜ日本を重視するのか。人口550万人の国から大きいが、中国など巨大マーケットもある。

やはり日本の旅行市場の底堅さ、安定的な部分がある。コロナは世界中どうしようもないが、経済的におかしくなり、急にお客さんがゼロになるということは日本ではなかなか起こり得ない。安定を担保されている感じがあると思う。日本の旅行市場は、急激に価格が上下する市場でもなく、ある程度安定している。その国そのものの魅力もあり、何千万人単位でインバウンドも増えていた。日本の人気はヨーロッパでものすごく高い。我々の中でも日本人と外国人のシェアも外国人寄りに増えていて、そういう需要もある。もともと、日本の旅行業がヨーロッパで売上を作っているというところも大きい。ホテルやサプライヤーからみた時、本当にトラブルが少ない国というイメージがあると思う。

ーストックホルムからアメリカやタイへの路線の展開を始めた。例えば関空=ストックホルム線などを開設する可能性はあるか。

日本の地点からはフィンランド・日本の間でしか飛ぶことができない。よってそういう計画はまったくない。

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