九州・沖縄県紙交換企画【SDGsの姿 2022】ー7ー 3カ月間合成洗剤を使わない実験をした地島(福岡県宗像市)

海の生態系回復願う

シャボン玉石けんの製品を使って歯磨きする子どもたち=福岡県・地島

 合成洗剤を使わない生活できれいな海を-。福岡県宗像市の玄界灘に浮かぶ地島で2021年9~11月、島全体で合成洗剤を使わず、添加物のないせっけんだけで暮らした場合の環境への影響を調べる実験があった。「海が変わってほしい」。島民は、多様な生態系の回復を願う。

 「水作業で手が荒れなくなった」と主婦立石美雪さん(62)。「環境にも肌にも優しい。子どもたちの将来のため使っていきたい」。合成洗剤をやめたことで肌の調子がよくなった島民は多い。
 実験は、無添加の製品を多く扱う北九州市の「シャボン玉石けん」が中心となり、島の全62世帯と小学校、漁村留学センター「なぎさの家」で3カ月間、入浴や洗濯、皿洗いなどに同社が無償提供したせっけんを使った。

 合成洗剤の成分が自然界で分解されにくい一方、無添加のせっけんは分解されやすく、環境への負担が小さいとされる。実験に協力する山口大大学院創成科学研究科と九州環境管理協会が、島内の下水処理場で水質や微生物の生息状況を調査。環境への影響を分析し、22年以降に結果を公表する予定だ。

 住民130人余りの多くが漁業に携わる地島。20年まで漁師をしていた山下秀字さん(63)は「最近はアワビもワカメも減った。海が変われば魚や海藻が増えるはずだ」と期待する。

 ただ3カ月の実験では、洗った衣服がごわついたり、食器に「せっけんじみ」が残ったりする課題も。シャボン玉石けんと島民はその都度話し合い、添加物のない別製品を組み合わせて使うなどして解決に努めてきた。

 「生活排水の問題は、一つの島だけでは解決できない。取り組みが広まれば」。島民は口をそろえる。
(共同通信・渡辺みらい)

 【メモ】合成洗剤には、香り付けや、汚れを落としやすくする目的で人工の化学物質が多く含まれている。こうした物質が生活排水として川や海に流れ込むと、微生物の力で分解されにくく、環境汚染につながる。

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