世代超えた交流推進
重苦しい雰囲気を破ったのは、当時17歳だった金子陽飛(はるひ)さんだった。町内会長選びが難航する中、「ぼくがやります」と手を挙げた。鹿児島市唐湊2丁目の山の手町内会は、約50世帯の小所帯。輪番制で役員を決めてきた慣習に風穴をあけた。自身も「今思えば勇気ある一歩を踏み出した」。
2020年4月、会長に就任。これまでに会費の徴収や街灯の電気代補助申請など、役員の仕事を互いに「見える化」する名刺大のカードを作った。敬老の日は、子供たちがお年寄りの家に行き、メッセージを手渡す取り組みも実現した。ごみステーション清掃では、町内の人たちとにこやかに話が弾む。金子さんは「きれいなステーションは、わが町内会の自慢。当日参加できない人は前日にやる、と気配りのできる人が多い」と感謝する。
会長を引き受けたきっかけは、大学でまちづくりを教えている父親の影響が大きい。普段から「楽しくまちづくり活動をするには」などをテーマに、親子で会話を重ねていた。そんな父が「陽飛ならできる」と背中を押した。
「勉強を押しつけられる」という雰囲気に違和感を抱き、中学生の頃に不登校を経験。昨春、通信制の高校を卒業した。「将来は、まちづくりに貢献できる会社を立ち上げたい」と、町内会長をこなしながら勉強に励む。
今では講演依頼も数多く舞い込み、延べ千数百人の前で語ってきた。「父に似て人前で話すのは得意。自分の経験や思いを大勢に知ってもらい、若い人たちに町内会の楽しさを知ってほしい」
世代を超えた交流を軸に、住み続けられるまちづくりを目指す。18歳町内会長の挑戦は続く。(南日本新聞・畦地文雄)
【メモ】2020年春、「全国初!?高校生の町内会長誕生」として話題になった。10代から見た町内会の様子や気持ちをつづったコラム「陽飛がゆく」を南日本新聞に月1回連載中。趣味はテレビゲーム。ギターも練習中。
=おわり=