神奈川県立足柄上病院の分娩廃止 周辺2町が出産時のタクシー代肩代わり 「安心」提供、業者支援も 

県立足柄上病院=松田町松田惣領

 神奈川県立足柄上病院(松田町)の分娩(ぶんべん)廃止を巡り、大井町と松田町が4月から、妊婦の出産時のタクシー利用料金を肩代わりする新制度をそれぞれスタートする。いずれも周辺に出産できる医療機関がなく、大井町の小田真一町長は「せめて足代だけでも支援し安心して出産してほしい」と呼び掛けている。

 両町とも自家用車を出す親族らがいない状況で突然の陣痛に見舞われたケースなどを想定。産科病院がある小田原市内までの費用を助成する。

 毎年約100人の新生児が生まれている大井町は2022年度予算案に120万円を計上。上限1万円で出産時のほか、産後検診時のタクシー利用にも使用できる。利用者は立て替えた分の領収書を提出する。

 松田町は事前にタクシー券の配布などを検討しており、最も遠い寄地区から小田原までは片道1万円かかるが全額助成する。同町は20年から75歳以上と妊婦を対象に通院や買い物でのタクシーの初乗り運賃も助成している。22年度も新型コロナウイルスの感染防止策の一環として約900万円を計上し、本山博幸町長は「コロナ禍で打撃を受けたタクシー業者への支援もある」と説明した。

 同病院は産科医不足やコロナ禍を受けて20年から産科が休診している。県と小田原市などは21年に、分娩機能を同市立病院に集約することで合意した。

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