前田健太とTシャツ合作 独特過ぎる画風でバズった“野球イラストレーター”の正体は?

イラストレーターの「りおた」さんが描いたツインズ・前田健太のイラスト【写真:本人提供】

SNSで話題の野球イラスト作者「りおた」さんにインタビュー

野球への愛を表現するには様々な方法がある。ここで紹介するのは、プロ野球選手の“一瞬”を特徴的にとらえたイラストで、ファンを沸かせている男だ。イラストレーターの「りおた」さんは、自身のSNSへ選手のイラストを積極的に投稿。ツインズの前田健太投手には同僚選手のイラストを提供するなど、選手からも注目の存在となっている。「Full-Count」ではりおたさんにインタビューを行い、選手との交流からイラスト哲学まで存分に語ってもらった。

【ギャラリーを見る】前田健太、田中将大の姿も…りおたさんが野球選手の“特徴”を見事に捉えたイラスト集

りおたさんは山口県在住の31歳。スポーツは野球もサッカーも見ることが好きで、デザインの専門学校を出るほど“描く”才能にも恵まれていた。社会に出てからはサッカー雑誌にイラストを持ち込み、仕事に結びつけたりしていたものの『野球も描いてみたい』という欲は常に持ち続けていたという。

「長いことサッカーのイラストをやっていて、行き詰まりと伸び悩みを感じた時期に、ちょうどサッカー界で『この人にはかなわないな』という描き手さんが出てきたんですよね。その挫折を機に、絵の表現方法もジャンルも転換期だなと思ったんです。元々野球が好きだったことも相まって、4、5年くらい前からコツコツ描き始めて、フェイスブックなどのSNSに投稿していたんです」

今はSNSを介して直接、選手と繋がれる時代だ。まずりおたさんの特徴的なイラストに反応したのは、ダルビッシュ有投手(パドレス)が神戸市に構える「ダルビッシュミュージアム」だった。2017年当時、館長を務めていたダース・ローマシュ・匡氏(元日本ハム)からの申し出は「ダルビッシュを描いた個展をやりませんか」という願ってもないものだった。

注文に応えて制作したのは、ダルビッシュと十二支の動物を絡めた12枚のイラスト。すべてを完成させるには2~3か月かかり、本業の傍らという厳しい条件だったが、野球のイラストを仕事にしたいという情熱が勝った。ダルビッシュも自身のツイッターでこの個展をリツイートするなど、“りおた流”のイラストが注目されるきっかけになった。

「元々、ダルビッシュ投手は日本にいるときから好きな選手でした。そんな選手をテーマにした個展を、本人のミュージアムでさせていただいた。もう夢みたいな経験でした」

原案・前田健太、イラスト・りおたの「合作」でバズる

どんな世界でもそうだが、地位はすぐに築けるものではない。そこからも雌伏の時は続いた。転機になったのは、世界が新型コロナ禍に覆われた2020年だ。インスタグラムへの投稿を続けていると、モチーフとなった選手から直接反応をもらえることが増えてきた。斉藤和巳さん(元ソフトバンク)、G.G.佐藤さん(元西武)、そして日本ハムの新庄剛志監督からも、2020年末に現役復帰を目指してトライアウトを受験した際のイラストに「反応」をもらったことがある。

2020年には、野球イラストの世界にさらに“ハマる”きっかけがあった。この年からツインズに移籍した前田健太投手が、自身のツイッターの「アイコン」に使うアートを求めていたのだ。ダメ元で送ったところ、不採用ではあったが本人から連絡が来た。それも「以前から絵を描いて頂いてたのを、実は少し見させて頂いてました!」という望外なものだった。

りおたさんの画風や表現スタイルが気に入られたのか、時々インスタグラムで前田投手を描いた作品を紹介してもらえるなどの交流が始まった。そして昨夏「チームメートを描いたイラストTシャツを作りたいので、協力して下さる方を募集しています!」という前田投手発の企画に飛び付いた。

描き起こしてほしいと求められたのは、ベネズエラ出身のウィリアンズ・アストゥディーヨ捕手。日本では決して有名ではなく、どんな選手なのか写真を探すところからのスタートだった。「ぽっちゃりしていて、特徴がはっきりしている。描きやすい選手でしたね。マエケンさんからは『力士のイメージで』という注文でした。やはり外国の方からすると、日本=相撲というイメージが強いじゃないですか。そこに2か国の国旗を交えて、日本とベネズエラの友好のようなイメージで仕上げてほしいとのお題でした」。

アストゥーディヨが土俵入りしているイラストを描き上げると、無事に採用された。さらにそこからの広がり方は、想像を超えていた。前田はこのイラストをTシャツにして、アストゥーディヨと揃って着用している姿を自身のインスタグラムで公開。さらにエンゼルス戦の試合前、大谷翔平投手と談笑する前田がこのTシャツを着ている姿が各媒体で報じられた。

大谷効果でどんどん拡散…1時間後には“バッタもん”が登場

「ここまで広まるのかとびっくりしました。一番驚いたのは、ツインズの公式ツイッターでTシャツが紹介された1時間後には、もうインターネットで“バッタもん”が売られていたことです。国内なら訴訟とかも考えますけど、急だったし言葉もわからないので……。とにかく乗っかって商売するたくましさがもう滑稽で、もはや笑えてきましたよね。それだけ話題になってる証拠だなと、ポジティブに受け止めました」

その後、りおたさんはこの企画とは別に、前田投手からトミー・ジョン手術後のリハビリ時に着用するTシャツデザインの依頼を受けるという“念願”を果たしている。

前田投手も、時に自らのイラストを公開することがあり、あまりに独特な画風が名物化している。りおたさんはそのスタイルを「グッズとの相性の良い”ゆるい絵柄”が素敵ですよね。自分の絵の強みを理解しているところが良いなと。ハッキリとした思い切りの良い線や色使いのセンスも良くて。何よりも絵を楽しんで描いているのが伝わってくるのが最大の魅力だと思います。マエケンさんの描かれる絵、大好きです」とプロの目から高く評価している。2人の“画伯”が力を合わせて作ったムーブメントだった。

【ギャラリーを見る】前田健太、田中将大の姿も…りおたさんが野球選手の“特徴”を見事に捉えたイラスト集

りおたさんが野球選手の“特徴”を見事に捉えたイラスト集【画像:本人提供】

りおたさんのSNSはこちら

○公式サイト
https://riota-illust.com

○Twitter
https://twitter.com/riota2gaoe

○Instagram
https://instagram.com/riota2gaoe(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

© 株式会社Creative2