「30年目のシーズン」を託された長谷川健太監督、名古屋グランパスでの“勝算”は?

2月18日(金)、いよいよ2022シーズンの明治安田生命Jリーグが開幕する。

チーム数がコロナ禍の緊急措置となっていた20チームから再び18チームに戻ったものの、今年は11月21日からFIFAワールドカップのカタール大会が開催。よって、今シーズンもJリーグは密度の濃い日程の中で行われる。

「成功」から一転、長谷川健太監督就任

名古屋グランパスは2021シーズン、J1リーグを5位で終えた。

前季よりも2つ順位を下げることとなったが、AFCチャンピオンズリーグでベスト8、そしてYBCルヴァンカップでは2010シーズンのJ1リーグ以来となるタイトルを獲得。

「成功」と位置付けて間違いのない一年であり、多くの人がマッシモ・フィッカデンティ体制の継続を予想していたに違いない。

しかし、クラブはシーズン終了からまもない12月9日、フィッカデンティ監督の契約満了を発表。54歳のイタリア人指揮官との冒険はおよそ2年と4か月で幕を閉じることとなった。

フィッカデンティ氏は退任時、以下のようにコメントを残している。

「フットボールにおいて、ビジョンが異なってきたり、新たなプロジェクトによってフットボールの方向性が変わることで、進む道が分かれてしまうことはありますが、何よりも大切なことは、私が名古屋の監督をしている時に感じたリスペクトと情熱です

AFCチャンピオンズリーグでの素晴らしい経験、ルヴァンカップでの優勝、この忘れられない2シーズンに関して、ファンの皆さんの素晴らしいサポート、これらを達成する主人公であった選手たち、そしてクラブに、この場をお借りして感謝を申し上げます。」

カルチョ出身らしい、堅守をベースとするスタイルで結果を残したフィッカデンティ氏。2022シーズンの名古屋グランパスはそれをいかに次につなげ、より強いチームへと成長していくかが鍵となる。

新たに名古屋グランパスの指揮を執るのは、56歳の長谷川健太氏だ。

清水エスパルス、ガンバ大阪、FC東京という強豪クラブの監督を歴任してきた長谷川氏。どのクラブでも若手を積極的に起用しチームの底上げに寄与してきた。この点は名古屋が監督として招聘するにあたって重要な要素の一つとなったに違いない。

というのも、フィッカデンティ体制下でチームは結果こそ残したが、若手の台頭は非常に限定的だった。近年の名古屋はアカデミーでの育成に力を入れており、2019年にはU-18チームが高円宮杯プレミアリーグWEST優勝やJユースカップ制覇などの実績も残している。

今シーズンも、FW豊田晃大、MF甲田英將、DF吉田温紀という世代別の日本代表歴を持つ逸材たちがトップチームに昇格。彼らをチームの主力に育てていく意味でもフィッカデンティ氏から長谷川氏へのバトンタッチは納得感が強い。

とはいえ、現状はフィッカデンティ氏が築き上げた強固な組織力が名古屋グランパスの一番の武器となっている。

優勝を狙える陣容が揃った今季の名古屋

最後方にはJリーグ5年目を迎える守護神ミチェル・ランゲラク。昨季自身初のベストイレブンに輝いた33歳は、今季も信じられないようなゴールストップで豊田スタジアムを沸かせることだろう。

DFラインでは昨年大怪我を負った丸山祐市がまだリハビリ中だが、日本代表としてアジア最終予選の1-2月シリーズを戦った中谷進之介に加え、セレッソ大阪からチアゴを期限付き移籍で獲得。昨季15試合の出場で4ゴールを記録した191cmのブラジル人センターバックは得点面でも大いに期待できる。

サイドバックは昨季がベース。左サイドは吉田豊が圧倒的な運動量で攻守に駆け回り、右サイドは成瀬竣平、宮原和也、森下龍矢の実力者3名が引き続きしのぎを削る。

ボランチは米本拓司が湘南ベルマーレへ移籍したものの、鹿島アントラーズからレオ・シルバを獲得。ともにボール奪取や攻撃参加が魅力の昨季Jリーグベストイレブン、稲垣祥とのコンビは今季名古屋の売りの一つとなるだろう。稲垣は今季からチームのキャプテンにも就任している。

タレント揃いの2列目は、新10番のマテウスを筆頭に、相馬勇紀、齋藤学、阿部浩之が健在。さらに、サガン鳥栖からキープレイヤーの一人だった仙頭啓矢が加入した。仙頭は中盤でボールを引き出す能力に長けており、怪我もあり徐々に出場機会を減らしたベテランの阿部とともに攻撃をオーガナイズする役割を担う。

そして前線には同じくサガン鳥栖から酒井宣福を補強。技術と“執着心”が光る金崎夢生、天才的なセンスを持つ柿谷曜一朗と多様なFWが揃っただけに、2列目を含め試合ごとにどのような組み合わせを採用するのか。ファン・サポーターにとっても毎試合の楽しみとなりそうだ。

なお、本来であれば前線のエース格はヤクブ・シュヴィルツォクだが、こちらは昨年のドーピング検査陽性からいまだ復帰の見通しが立っていない。また、チームは今シーズンの沖縄キャンプでコロナ陽性者が相次ぎ、全体練習を一時中止する事態に。練習試合も予定通りこなせなかったため開幕時点でのチームの仕上がりには不安が残る。

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陣容だけを見れば優勝も狙える名古屋グランパス。記念すべき「30年目のシーズン」を見据えると、丸山の復帰時期、シュヴィルツォクの動向、欧州移籍がささやかれる相馬などがキーポイントになりそうだろうか。

結果を出せるメンバーは揃っているだけに、引き続きコロナ禍の難しいシーズンでその時々の最適解をいかにして見つけられるか。各クラブで様々なチーム状況に直面しながら、それを乗り越えてタイトルを獲得してきた長谷川監督の手腕に注目したい。

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