<社説>まん延防止措置解除 対策緩めてはならない

 玉城デニー知事は16日、沖縄県に適用されている新型コロナウイルス対策のまん延防止等重点措置の延長を国に要請しないことを発表した。県の要請を踏まえ、政府も重点措置解除の方針を決めた。 重点措置は20日で終了する運びとなるが、17日の新規感染者数も依然として700人台であり油断はできない。引き続き警戒を緩めず、県民一人一人が感染拡大を防ぐ行動をとることが重要だ。

 沖縄県の重点措置は1月9日に始まり、飲食店への時短営業要請などの対策がとられてきた。1日の感染者数が1829人(1月15日)に上った当初に比べて感染は減少傾向にあり、病床使用率も現時点で50%を下回る。県民の協力で重点措置の効果が示されてきたといっていい。

 飲食店の営業など自粛が続いた経済活動を正常に戻していくことが必要だ。ただ、7日に重点措置を先行解除した宮古圏域で感染者数の増加が見られる。感染のリバウンド(再拡大)に注意を払い、慎重に進める必要がある。

 県として重点措置を再度要請する場合の基準を明確に示しておくとともに、今の間に3回目のワクチン接種を急ぎ、再拡大があっても重症化するリスクを下げておくことが求められる。感染した場合に重症化リスクの高い高齢者のケアに支障を来さないよう、医療機関の受け入れ体制を万全にするほか、介護・福祉施設への補助や業務継続計画の支援も重要だ。

 政府として対策をとらなければならないのは、水際対策の欠陥が明らかになった在日米軍基地の存在だ。オミクロン株対策で厳しい入国制限を敷いた中で、第6波を招いたのは米軍基地からの「染み出し」にほかならない。新たな変異株の持ち込みなど、今後も在日米軍基地が感染源となる可能性がある。この“抜け穴”をふさがない限り、県民の努力を無にする事態が繰り返されてしまう。

 在沖米軍基地内で感染者が急増した昨年12月、沖縄を含む全ての在日米軍施設で、米国からの出国時にPCR検査を実施していなかったことが判明した。

 その後、「日本側からの強い申し入れを踏まえて」(林芳正外相)出入国時の検査を実施しているとしていたが、ウイルス量を調べる抗原定量検査ではなく、精度が落ちる抗原定性検査だった。空港検疫で定量検査を導入している日本の措置と整合性が取れず、結局、米軍任せの対策という実態を露呈した。

 米軍関係者の入国時の検査に国が関与できず、米軍次第の水際対策では主権国家とはいえない。岸田文雄首相は日米合同委員会の下に新設した「検疫・保健分科委員会」で話し合うとするが、国民の目の届かないブラックボックスである限り解決にならない。

 自国の防疫措置を漏れなく適用するため、日米地位協定を改定すべきだ。

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