「宇宙開発は不要」その理由は? ガンダム富野監督に聞く 〝小田原嫌い〟複雑な故郷愛も

小田原市民功労賞を授与された富野由悠季監督=小田原三の丸ホール

 人気アニメ「機動戦士ガンダム」の生みの親でもある富野由悠季監督(80)が今月、小田原市から市民功労賞を授与された。式典後に神奈川新聞社の取材に応じた富野監督は「小田原は嫌いだけど、故郷からは逃げられない」と複雑な故郷愛を吐露。これまで数多くのSF作品を手掛けてきたが「宇宙開発は不要。古い拡大路線の考え方は捨てるべき」と環境保護を訴えた。

 富野監督は同市出身で昨年7月、地元の商業関係者の要望もあり、市のふるさと大使に就任。その縁から今月6日に市民功労賞を贈られ「自分の個性や作品が小田原の風土から影響を受けたことはうそがつけない。(ガンダムなどの)キャラクターの出身地も小田原」と述べた。

 しかし、22歳で故郷を離れた富野監督は「自分は小田原から脱出した人間」と“小田原嫌い”を標ぼう。その理由の一つとして幼少期に親しんだ小田原の自然が開発により変化していく現状を憂えた。

 幼少期を過ごした酒匂川では1974年に飯泉取水堰(せき)(同市扇町)、79年に三保ダム(山北町)が完成。県によると、土砂の流出量の減少により、酒匂川流域で47年から2020年まで最大130メートル、砂浜の汀線(ていせん)が後退した。富野監督は「(開発により)酒匂川が川でなくなった。このまま砂浜が完全になくなってしまうのを見たくない」と危機感を募らせる。

 ガンダムシリーズは一貫して人類が宇宙進出を果たした「宇宙世紀」が舞台。しかし、富野監督は米航空宇宙局(NASA)などの火星移住プロジェクトを年頭に「宇宙開発で未来が開けるのは50年前の空想。現在の地球の環境を持続させることを考えないといけない」と訴えた。

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