球団チアがコロナ禍で抱えた葛藤と苦悩 「何のために踊るのか」から得たものとは?

「diana」最終オーディションの様子【写真:荒川祐史】

DeNAのオフィシャルパフォーマンスチーム「diana」のオーディションが行われた

2020年に新型コロナウイルスが大流行し、大きな打撃を受けたエンターテインメント業界。舞台やライブはことごとく中止になり、演者は苦しい生活を強いられた。それはプロ野球を盛り上げる各球団のチアチームも同じ。DeNAのオフィシャルパフォーマンスチーム「diana(ディアーナ)」も葛藤の日々を過ごした。「誰に向けて、何のために踊っているんだろう」と自問自答するメンバーも。ただ、コロナ禍を経て得たものも大きかった。

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昨年12月19日に行われた2022年度の「diana」メンバーを決める最終オーディション。午前中に個人面接が行われ、午後にはダンス審査が行われた。約50人が参加し、ヒップホップやジャズだけでなく、バレエ、アクロバットなど、それぞれ得意なダンスで審査員にアピールした。

コロナ禍で、チアの在り方は大きく変貌した。通常はグラウンドで行っていたパフォーマンスは、高さ31mで急こう配のウイング席になった。高さの恐怖や振り付けも変わり、選手との距離も遠い。オーディションで審査員も兼任するマネジャーは「『何のために踊っているんだろう』と自問自答していたメンバーもいました」と振り返る。

「コロナ禍は人によって捉え方が違いました。ひとりひとりに合わせた言葉かけをしていましたが、正解がなく難しかったです」

「diana」最終オーディションの様子【写真:荒川祐史】

求められるのは“想像力”

一方でコロナ禍がもたらしたものもあった。無観客により、様々な場面でライブ配信が行われ、dianaが取り上げられる機会が増えた。オーディションでも、通常は書類のみだった一次審査にダンス動画を取り入れた。「どんなダンスが得意なのか、あらかじめ分かったうえで審査に臨めるのは良いですね」と効果的だったという。

昨季はコロナウイルスの感染拡大も下火となり、最大で約1万6000人が来場できるようになるなど、規制も緩和された。現在はオミクロン株が拡大しているものの、今季は満員のスタンドが戻ってくるかもしれない。ただ、無観客期間を経て、チアチームに求められるものは変わったとマネジャーは話す。

「ライブ配信などオンライン上の仕事が増えてきて、たとえ満員になったとしても、直接も画面越しでもハイブリットに対応できる能力が求められますね」。中でも必要なのは“想像力”だという。「観客の反応がなくても、いかに観客の顔を想像できるかが大事になってきます」。

200人が応募したオーディション。ダンススキルや、コミュニケーション能力などはもちろんのこと、審査員も想像力を働かせる。「合格する子は、横浜スタジアムで踊っている姿が、目に浮かんできますね」。年明けに19人の合格者が発表された。

「diana」の目指すべきところは、選ばれ、愛されるエンターテインメント。野球、チアダンスの領域を超えて、YouTube、テレビなどでも輝きを放てる集団だ。コロナ禍を経て一皮も、二皮も剥けた新生「diana」が、新たなエンターテインメントで球場を沸かす。

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(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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