秘境祖谷、徳島県三好市。急峻な山々に集落が点在する。ここでは何世紀にもわたって住み続けてきた人々が独自の文化を発展させてきた。厳しい自然環境で発展した農耕システム、そしてこの秘境まで落ち延びてきたという平家の伝説。そんな祖谷の昔の暮らしを垣間見ることができる、東祖谷歴史民俗資料館を紹介する。
知る人ぞ知るもう一つの平家物語…徳島県三好市祖谷へ落ち延びた平家の伝説
祖谷は、日本三大秘境の一つとして知られ、そんな人里離れた場所にどのようにして人々が住み着いたのか、祖谷の風習が生まれたのかなどについては様々な言い伝えがある。
そんな伝説のうちのひとつが「平家落人伝説」である。
1185年の壇ノ浦の戦いに敗れ、滅亡したと言われる平家。しかし、平国盛が幼い安徳天皇を擁して、平家の一行と共に祖谷に入ったという伝説がある。
秘境の隠れ里 平家の誇り 幼帝安徳天皇のエピソードや、日本最古の軍旗「平家の赤旗」が展示
資料館では、この祖谷にやって来たという平家の伝説が詳しく解説されている。
家系図や一般に伝えられている平家の歴史や肖像画からはじまり、祖谷へ落ち延びた後の平家の伝説や幼い安徳天皇のエピソードがイラスト付きのパネルで展示されている。
そのエピソードが、様々な祖谷の地域の名前にもなっているようだ。
そして、その伝説を証明するように、平家の赤旗のレプリカも展示されている。本陣用と戦陣用だ。
源平合戦から長い時間が経ち、草木染が退色してしまった赤旗には平家の紋章「むかい揚羽(あげは)」。祖谷を訪れると、あちこちでこの紋章を目にするだろう。
この旗は実際に戦場で使用されていたといい、矢の穴が数か所ある。
昭和の時代、敵方である源氏の白旗と並んで展示された時は、天が真っ黒に曇り、嵐になったなどの逸話もある旗である。
平家の足跡を追って 国内だけでなく外国人観光客も魅了する貴重な資料館
また、この資料館には、様々な平家伝説ゆかりの場所を示す大きな地図もある。平家の足跡を追って、多くの祖谷のスポットを訪れる足掛かりにもなる。
平家の伝説を求めてわざわざ祖谷へと、遠くから、時には海外から訪ねてくる熱心な歴史ファンもいるのだとか。
祖谷を訪れたときは、ぜひ資料館にも立ち寄って、秘境の昔の暮らしを感じ、平家の伝説にも思いをはせてみて欲しい。
秘境が少し近く感じられるはずだ。
東祖谷歴史民俗博物館
開館時間 10:00~16:00
4月~11月 毎日開館
12月~3月 定休日 年末年始 水・土・日・祝日
入場料 大人410円 子供100円
(取材・文・写真: ショーン ラムジー)