「聞いたら死ぬ怪談」を映画に!?『牛首村』実在の最恐心霊スポットで突撃ロケ! 陰鬱Jホラーへの回帰

『牛首村』©2021 「牛首村」製作委員会

謎の怪談「牛の首」

もしかしたら本当かもしれない。そんな不安を呼び起こし、オカルトやホラーファンを惹き付けて止まない「恐怖の村シリーズ」第3弾。一体、日本にはどれだけ“呪われた村”があるのだろうか。

『犬鳴村』(2020年)、『樹海村』(2021年)に続いて、今回は『牛首村』である。『犬鳴村』では有名な都市伝説、『樹海村』では某巨大掲示板から広がった“コトリバコ”と、怪談話をベースに“血筋の因果”と“出口がない恐怖”を描いてきた「恐怖の村シリーズ」。今回のテーマは「牛の首」である。

『牛首村』Ⓒ 2022 「牛首村」製作委員会

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「牛の首」とは何か? それを聞いてはいけない。何故か? 牛の首の話を聞いた人は、恐怖のあまり3日以内に死んでしまうからである。では、どんな話なのか? 内容を知る人はいない。当然である。聞けば死ぬからだ。所謂“リドル・ストーリー”と言われる、中身がない“謎の怪談”。それが「牛の首」である。

では、そんな「牛の首」を基にした映画『牛首村』はどんな話なのかというと……。

女子高生の奏音(かのん)は、動画サイトに投稿された心霊動画を見て驚愕する。自分と瓜二つの高校生が牛首マスクをかぶせられ、廃墟内のエレベータに閉じ込められているではないか! 一体、彼女は何者なのか? 奏音は同級生の蓮とともに、動画の撮影地、坪野鉱泉へと向かう。そこで彼女は「牛首村」と呼ばれる恐ろしい村の秘密と風習を知り、不可解な事件に巻き込まれてしまう……。

『牛首村』©2021 「牛首村」製作委員会

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実在する心霊スポットで突撃ロケ

今回の最恐ポイントは、実在する心霊スポットで撮影に挑んだことだ。映画に登場する坪野鉱泉は富山県に実在する北陸屈指の最恐心霊スポット。90年代に二人の十代の少女が車で肝試しに行き、そのまま行方不明になってしまったという実話がある(なんと24年後の2020年、海に沈んだ車の中で2人の骨が発見された)。牛首という地名も実在するのだが、こちらは富山県ではなく石川県である。それはさておき、心霊スポットをテーマにした映画が、なぜ今まで心霊スポットロケに突撃しなかったのか。今回ようやく重い腰を上げたというわけだ。

『牛首村』©2021 「牛首村」製作委員会

やはり現物が醸す雰囲気は画面に力を与えてくれる。女子高生YouTuberがジンバルを装着したスマートフォンを使ってガチの動画撮影に挑む冒頭エピソードはインパクト大。暇さえあれば心霊動画を漁っている筆者には、笑み満点のオープニングだ。加えてリドル・ストーリーがテーマになっているせいか、脚本がぶっ壊れているとしか思えない場面転換や、唐突な残酷描写等、不条理さはシリーズ1番だ。故に『犬鳴村』や『樹海村』はある程度答えがある物語だが、『牛首村』は明確な答えを期待していると大変な目に遭うから要注意だ。

『牛首村』©2021 「牛首村」製作委員会

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陰鬱としたJホラーへの回帰

監督は前作同様、清水崇監督。彼は『呪怨』シリーズ(1999年ほか)ばかり撮っていたため「『呪怨』以外、引き出しのない映画監督」と思われていた時期もあった。しかし『呪怨』はジャンプスケアを笑いになるまでぶっこみ、Jホラーの定義を変えたマスターピースとなったのだ。

「恐怖の村」シリーズでは、「不条理な風習と因果律」について手を替え品を替え描き、再びJホラーを旧来の陰鬱としたものに回帰。この点では『呪怨』同様、一つのプロットを煮込み倒す作風は相変わらずだ。果たして今後、「恐怖の村」シリーズがどこまで煮込まれていくか楽しみである。

『牛首村』©2021 「牛首村」製作委員会

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なお映画初出演、初主演となるKōki,だが、映画デビューがこの映画で良かったのだろうか? それほど出番の多くない大家凜香や莉子、本作のダークサイドといえる役を演じる芋生悠は印象的だった。初主演かつ二役は荷が重かったかもしれないが、今後の成長に期待したい。

文:氏家譲寿(ナマニク)

『牛首村』は2022年2月18日(金)より全国公開

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