第30回「マーラーズ・パーラー余談①」〜療養中のPANTAが回顧する青春備忘録〜

黒川つねみという頭脳警察のスタッフがいた。彼に関しては書くことが山積みなので、いずれかつてのZK関係者などの証言とともにいろいろ記していきたい。 彼は種子島からフォーク・シンガーを目指して上京し、『火縄銃でボーン!!』というシングルを出すに至り、いまやカルトな連中のコレクターズ・アイテムとしてとんでもない人気を呼んでいるのだ。 その通称ツネと呼ばれている黒川が居候させてもらっていたユキという男、こいつはクラシックの作曲家の卵としてマーラーに心酔し、「ベートーヴェンなぞ足下にも及ばない、マーラーこそ真の音楽家だ」と普段から豪語するくらい、ある意味マーラー教と呼んでもいいようなカルト宗教信者と化している男なのだった。 そんなユキがある朝、トイレから戻るなり、まだ目覚めてもいないツネの肩をゆすり、ちょっと来てくれと起こし、「便器に出した自分の朝の排泄物が可愛すぎてとても流す勇気がない、ちょっと手間を取らせるが、流す前にちょっとでいいからその可愛さを見てやってほしい」と懇願されたらしい。まだ寝ぼけていながら付き合わされ、トイレに案内されたツネ。そんなユキの話を聞き、「なんて奴だ、今まで面白い奴というのには限りなく会ってきたが、これは最大級の変な奴に間違いない」と、自分が「マーラーズ・パーラー」を書くきっかけになったのは間違いないリアルな話なのだった。

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