楽天、実績十分の先発陣に待ったをかける若手3人衆 石井監督が求める「荒々しさ」

練習試合に先発した楽天・高田孝一【写真:荒川祐史】

高田孝、鈴木翔、西口が相次ぎ先発3回無失点

楽天の先発ローテに世代交代は起こるのか。球界随一の実績を誇る先発投手陣にプロ2年目・23歳の高田孝一投手、4年目・25歳の鈴木翔天(そら)投手、6年目・25歳の西口直人投手が挑戦状を叩きつけている。3人は18日までに1度ずつ先発し、全員3イニング無失点の好投。一歩も引かない奮闘ぶりだ。

まず13日の日本ハムとの練習試合に先発した高田孝は、3回2安打2奪三振無四球無失点。1、2回はほぼストレート1本で攻め、石井一久監督から「テーマを持って投げていた。ブルペンでやってきたことを実戦でもやれたのではないか」と賛辞を送られた。

15日のロッテ戦では鈴木翔が3回無安打4奪三振1四球無失点の快投。17日のヤクルト戦では、西口が3回4安打を浴びながら2奪三振無四球無失点の粘投で続いた。

プロ入り後の経緯は三者三様。高田孝はドラフト2位で法大から入団し、ルーキーイヤーの昨年は1軍で3試合(先発は1試合)0勝0敗、防御率1.35。イースタン・リーグでは規定投球回数を超え、20試合6勝10敗、防御率3.21と経験を積んだ

鈴木翔は昨年5試合、通算で7試合に登板し、その全てがリリーフ(0勝0敗)だが、希少価値の高い左腕だけに飛躍の可能性を秘めている。西口は昨年33試合に登板し(先発は1試合)5勝2敗、防御率3.28。先発が早い回で崩れた場合のロングリリーフもこなし重宝された。

練習試合に先発した楽天・西口直人【写真:宮脇広久】

通算538勝の4本柱で昨季30勝32敗の誤算

3人は口をそろえるように「実績のある人たちが揃っているが、怪我やコンディション不良を待つのではなく、5~6枠目をもぎ取るつもりで」「そうそうたる顔ぶれに割って入れるように」と話す。実際、ハードルが高いのは間違いない。昨年の今ごろは、田中将、涌井、岸、則本の先発4本柱が“通算538勝ローテ”(昨季開幕前の時点での4人の日米通算勝利数合計)と注目されていた。

だが、ふたを開けてみれば、田中将は防御率3.01をマークしながら打線の援護に恵まれず、まさかの4勝9敗。開幕から無傷の4連勝と好発進した涌井も、後半は失速して6勝8敗、防御率5.04。則本は11勝5敗、防御率3.17の好成績を残したが、岸は9勝10敗と負け越した(防御率3.44)。4人で30勝32敗は誤算だった。その代わり、ドラフト1位ルーキーの早川が9勝7敗、防御率3.86。当初“第6の男”扱いだった滝中も、2桁の10勝(5敗、防御率3.21)を挙げた。

仕切り直しの今年、岸は38歳、キャンプ2軍スタートとなった涌井は36歳になる。6つの先発ローテ枠をゲットするのは果たして誰だろうか。

石井監督は“若手3人衆”に「結果を恐れて小さくなるのではなく、荒々しく自分の良さをアピールしてほしい」と求める。「プロである以上、もちろん結果が大事だけれど、次も見てみたいと思わせる前向きな気持ちが大事。そうすれば、もし開幕1軍を逃したとしても、1か月後、2か月後にチャンスがある。僕らも『あいつ何をしてるのかな』と思えるから」と期待する。GM兼任だけになおさら、来季以降も視野に入れ先発投手陣の底上げを待望している。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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