いながきの駄菓子屋探訪80:長生きと夫婦円満の秘訣!富山県「新田駄菓子屋」

全国約400軒の駄菓子屋を旅した「駄菓子屋いながき」店主・宮永篤史が、「昔ながらの駄菓子屋を未来に残したい」という思いで、これまで息子とともに訪れた駄菓子屋を紹介します。今回は、結婚67年目の夫妻が営む富山県下新川郡朝日町の「新田駄菓子屋」です。

新潟との県境の街にある店

富山県全域の駄菓子屋を下支えする富山市の卸問屋、トイ・スクエア橋本。以前「でんきやSUNはまもと」を訪ねた際にお世話になりましたが、今回も取引のある駄菓子屋を教えていただくことができたので、訪ねて来ました。

富山市の中心部から、国道8号線で50kmほど東へ。新潟との県境の街、新川郡朝日町にある昔ながらの住宅街の角地に、目的の「新田駄菓子屋」がありました。お店の西側は常光寺へ向かう道で、北側は直接の接続ではないものの、延長線上に脇子八幡宮がある通り。なにやら霊験あらたかな感じのする立地です。

昔の映像を見るような独特の雰囲気

時間の経過を感じる建物の佇まい。昔の映像を見ているような、素晴らしい趣があります。隅切り部分に入口があるのも特徴的で、誘い込まれるような雰囲気。赤いのれんのかかる戸を開け、その世界に入りました。

店内は土間状で、10畳ほどの広さ。駄菓子は入ってすぐの島型の棚と、背の高い棚の2カ所に分けて置かれています。10円、20円、30円という安価な価格帯の物が多く、クジものも豊富な印象。奥の住居部分から店主ご夫妻が出てきて、買い物をする際は袋詰めを奥さん、勘定は旦那さんがそろばんで計算してくれました。

店主夫妻は結婚67年目

新田駄菓子屋は、新田訓さん・まさ子さんご夫妻のお店。今年(2022年)で92歳と87歳になるお二人は、結婚67年目だそうです! 昭和31年(1956年)ごろ、この場所へ転居するとともに、食料品と雑貨を扱う商店として創業。長らくまさ子さん1人で運営し、訓さんは定年退職後に手伝うようになったとのこと。

島型の棚は、手先の器用な訓さんによるもの。新巻鮭の入っていた木箱を再利用していて、足元の部分にその名残りがありました。現在は流木を拾ってきて、加工して楽しんでいるのだとか。見習いたいバイタリティです。

駄菓子屋は長生きの秘訣!

「駄菓子は近所の人の勧めで置くようになりました。駄菓子専業になったのは、もういつのことだったか忘れちゃいましたね(笑)。元々人と話すのが好きだったので、この仕事は向いているなと思って続けてきました。誰かが来て、誰かと話して、駄菓子の計算をする。単純ですけど、幸せな日々ですよ」(まさ子さん)

「我々くらいの年齢になったら、何もしてなかったらあっという間にボケちゃう。いろんな人が向こうから来てくれるこの商売は、老後にはちょうどいいですよ。頭や体を適度に使って、お酒は早目の時間から嗜む程度に飲んで、夫婦仲良く暮らす。これが長生きの秘訣です(笑)」(訓さん)

お話を伺っている間、お茶とお菓子を延々と振る舞い続けてくださったお二人。「お菓子を売ってるお店なのに、こんなに貰っていいんだろうか……」と、やや気が引けましたが、これがきっと、ご夫妻で作ってきたお店の空気感。遠慮なくいただき続けた結果、完全に満腹になりました(笑)。

耐えない笑顔で、駄菓子についてだけでなく、長寿時代の人生の楽しみ方を教えてくれた新田駄菓子屋。場所も、建物も、人も、すべてが特別な駄菓子屋でした。

新田駄菓子屋

住所:富山県下新川郡朝日町泊198

営業時間:7:00~17:00

定休日:不定休

[All photos by Atsushi Miyanaga]

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